見出し画像

支点を明確にする 〜デザインの秘伝03〜

_小学校の頃、コンパスで円を描き模様を仕上げてくるといった宿題があったんですね。
その日、さっそく自宅で作業にとりかかろうとした僕は、「あぁ、やってしまった」と出鼻を挫かれることになります。

コンパス自体を学校に忘れてきてしまった...

仕方がないので紙にコップを逆さにして置き、淵の外周を鉛筆でなぞることで、それを完成させることにしました。

翌日、我ながら上策だと思いながら提出。

ところが姑息な手段は即座に見抜かれてしまいました...
先生の大逆鱗に触れることになり、おかげでその日の授業は良く記憶に残っています。

なぜ、気づかれてしまったのか。

コンパスで描いた円には中心にポツリと穴が空きますよね、こいつは力学的に言うと "支点" と呼ばれる場所です。

この "支点" が存在するからこそ、軸と筆先を跨ぐ "力点" に力を加えることで筆先の "作用点" に伝達されるため、美しい正円を描くことができるわけですね。

僕の描いた円には "支点" がなかったんです。なので規則性もなく応用もできない円の模様が出来てしまっていた。

✳︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎︎

社会人になってデザイナーとして仕事をするようになりました。
1年目にぶち当たった最初の壁は、 "自分のデザインが良いのかどうかが判断できない" ということです。

丸一日かけてつくっても、次の日に見たら全く良くない。

それに見かねた先輩デザイナーが、僕にとある訓練方法を教えてくれました。それは、"雑誌内の気になるページに付箋を貼り続ける" ただそれだけです。僕は半信半疑で作業を始めることにしました。
少しでもページ内のレイアウトが好き、アートワークが好き、と感じた箇所があれば取り敢えず付箋を貼っておく。なぜ良いと思ったのかなどは深く考えずに、とにかく貼り続ける。
正直、はじめは意味があるのかわかりませんでした。とにかく新しい雑誌を買ってはそれを続けていました。
ざっと単純計算しただけでも200箇所くらいは貼り続けただろうと思った頃。確認ついでに付箋の箇所を振り返ることにしました。

「・・・・・・。」

全てに目を通して気づいたことは、それぞれのページのデザインには、いくつか共通する法則やパターンが存在するということです。

行間や文字間、ホワイトスペース、配色センス、写真の補正具合など、それぞれが絶妙に組み合わさっている。また、ある時は意外なものと一緒に構成されている。

頭の中にぼんやりとした "支点" の穴が浮かびあがります。

そこからは、とにかく自分の心をゆさぶるデザインの法則を研究することにしました。
そして、その大凡が解明されたころには "支点" の解像度もだいぶ上がり、デザインに対する迷いがきえていました。

また、支点が明確になったことで、力点から作用点と角度を変えながら、応用にも対応できるようにもなりました。

✳︎

普段なにげなく選択している「物」や「事」の法則を知ることで、自分の型や価値観を描き出す中心点が見えてくる。これがわかるとアレンジや応用がきくようになるということですね。
支点を見つけ出すことは、デザインに限ったことではなく多くの物事に転用が利くと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?