映画『宇宙人の画家』

映画『宇宙人の画家』(保谷聖耀監督、2022年)は、何とも言えない不思議で妖しい雰囲気がたまらない映画だった。

物語は、<虚無ダルマ>なる者を首領とする国際犯罪組織に洗脳・支配されている架空の都市、裏日本K市から始まる。
国際犯罪組織は地球全体を支配するために、「ダルマ光」と呼ばれる、この世の全ての悪人を滅ぼす心理の光を放つ発光装置を探していた。
ある日K市に、この<虚無ダルマ>の暗殺と「ダルマ光」の入手という任務を負った、米国のスパイ、ジョージ・ワタナベが現れる。
……というスパイ活劇漫画「虚無ダルマ」を描いていたのが、中学生のホウスケ。
ホウスケの通う中学校も漫画同様、生徒会長ケイに洗脳・支配されており、それに従わないホウスケは、学校中の生徒からイジメられていた。
物語は、ホウスケが漫画に登場させた「マルヤマ」という人物がホウスケの前に現れたことで、虚構と現実の物語が交錯し、交じり合っていく。

……といったストーリーなのだが、普段、こういったジャンルの映画(たぶん「カルト映画」と言うのだろう)を観ないので、詳しいことはわからないのだが、だから却って余計な事を考えずに、物語や映像に没頭できた。
とにかく、目の前で繰り広げられるシーンの一々に、ワクワク・ドキドキ興奮し、ホウスケが虐げられるシーンに憤り、<虚無ダルマ>や生徒会長ケイに怒って……と、没頭し、楽しんで観ていた。

それにしても、このコロナ禍(街中の人々は皆マスクをしている)で、よくこれだけの映画が撮れたと思う。
国際犯罪組織との戦闘シーンもそうだが、<虚無ダルマ>による説法(ライブ)シーンには多くの市民(というか信者、というか観客)が集まって、しかも、皆マスクをしているので、そこが却ってカルト宗教っぽくて良かった。
さらに、<虚無ダルマ>役がラッパーの呂布りょふカルマで、その説法シーンのラップのビートとライムが物凄くクールで、しかも、それが映画館全体のスピーカーから鳴るというド迫力。これぞ、映画館で観る楽しさだ。
しかも、その説法(ライブ)が、巨大な観音像の台座で行われているというのも、映画の内容に合っていた。
この巨大観音像、CGやセットではなく、石川県加賀市の加賀温泉駅近くにある大観音加賀寺に実在する加賀大観音だという。
巨大な観音像に見守られた都市というのが、この映画にピッタリだった。

前述のとおり、こういった映画に詳しくないのでストーリー展開や映像などの面から、詳しい人の評価はどうなのかわからないが、私はとにかくのめり込んで観ることができた(で、久しぶりに、「よかった」「楽しかった」としか書いていない感想文が書けた!)。

とはいえ、じゃあ今後、こういった映画にハマるかといえば、それはちょっとわからない。
私自身は、こういった映画は時々観るから楽しめるような気がする。

(2022年7月21日。@新宿・K's cinema)


この記事が参加している募集

#映画感想文

69,031件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?