舞台『スジナシシアター・私の彼はすずが好き』(ただの感想)

とある海沿いの町。
対岸の島へ渡るためのフェリー乗場でフェリーを待つ余所者二人。
ウルトラマンのようなサングラスを頭に乗せたギャル風の女性は、自分を偽って付き合っていた「広瀬すずのような清楚系女性」が好みの男性に本性がバレてフラれた傷心旅行のため。
一方、派手な装いの関西弁老年男性は生来の浮気性によりバツ3になったばかり。老後の心配から再婚をもくろみ、マッチングアプリで知り合った島の女性に会いに行くため。
それぞれの目的でフェリーを待つ二人は、いつしか会話を交わすようになり、ひょんなことから老年男性がギャル風女性がフラれた彼氏の父親の友人であることを知る。
果たして、この数奇な縁は、女性を大好きな彼氏との復縁に導くか?

2024年6月30日に「なかのZERO 大ホール」で上演された『私の彼はすずが好き』という二人芝居。
出演は、笑福亭鶴瓶と広瀬アリスで、二人は作・演出も兼ねる……というか実はこれ、「台本なし、打ち合わせなし」の「完全即興ドラマ」である。

物語は「師匠にペースを握られるのが怖かった」という広瀬が終始攻めていき、押された師匠が受けに回る展開となる。
広瀬は、ガラケーを手に「マッチングアプリ」と口走ってしまった師匠に容赦なくツッコミ倒し、フラれた彼氏が好きな「清楚系芸能人」としてヌケヌケと実妹の名を挙げてみせ、おまけに「今までやったことがない」という実妹のモノマネまで披露する(最後に観客提案によって決まったタイトルに、そのインパクトが表れている)。
極めつけは、効果音として用意されていた「着信音」がガラケーのものだと始まる前に試聴した際に気づいた彼女は、自身は小道具としてスマホを使いながらも、バッグにガラケーも忍ばせていたという「頭の良さ」で、最終的にこれが物語をハッピーエンドで完結させることになる(これも彼女の機転による)。

とにかく彼女のコメディエンヌとしての才能と、頭の良さが際立つ展開となった。
また、プレビュートーク時にアップで映された師匠の顔を「赤ちゃんみたい」と無邪気に喜んだり、終始楽しそうにしていたのが印象的だった。

メモ

舞台『スジナシシアターVol.17 in なかのZERO 大ホール』
2024年6月30日。@なかのZERO 大ホール
ゲスト:広瀬アリス
設定:離島(と初期設定されていたが、「離島行きフェリー乗り場」として物語が展開)

1998年に名古屋のテレビ局でスタートした「(鶴瓶の)スジナシ」は、笑福亭鶴瓶師匠とゲストが「台本なし、打ち合わせなし」の「完全即興ドラマ」を演じ、その後、それを見ながらその時の心理状態や互いの物語の理解の相違などを話す「プレビュートーク」を行う人気番組。
番組は2014年に終了したが、翌年から(系列キー局である)TBS主催の「スジナシシアター」が不定期に上演され、今回で17シリーズ目(CBC版「劇場スジナシ」はカウントされていない)となった。
毎シリーズ3日程度、日替わりゲスト・設定で行われ、ゲストの豪華さ・意外性も相まって、毎公演がプラチナチケットになっている(以前は上演日の深夜にTBSで放送されていたが、現在は有料配信のみ)。


この記事が参加している募集

#舞台感想

5,944件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?