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物語もTIME SLIP~舞台『クアンタム-TIMESLIP 黄金丸-』~

新型コロナウイルスのため1日遅れの初日となった少年社中の舞台『クアンタム-TIMESLIP 黄金丸-』(毛利亘宏脚本・演出、中島かずき原案。以下、本作)の開演20分前、「ロビーの混雑解消待ち」で劇場の入り口は閉じられていた。
透明のガラス扉越しに中を覗くと、確かにロビーに人が多い。しかも、ほとんどが女性だ。私とともに入場を待つ人たちも皆女性客で、50代オヤジの私一人何だか浮いている。
ようやく入場し、ロビー混雑の原因であるグッズ購入の長蛇の列に並ぶ。
思い出してみれば性別は逆だが、29年前の青山円形劇場だって「ribbon」ファンの野郎ども(敢えてそう呼ばせてもらう)だらけだったではないか。

「ribbon」とは、1993年当時大人気だった3人組アイドルで、メンバーである永作博美、松野有里巳、佐藤愛子をフィーチャーし、当時関西から東京へ進出してきた気鋭の「劇団☆新感線」が上演した芝居が『TIME SLIP 黄金丸』(中島かずき作、いのうえひでのり演出。以下、ribbon版)である。

本作は「中島かずき原案」とあるように、ribbon版をモチーフにした全く別の物語である。

ribbon版は、如月ヒロ(永作博美)が先に過去(戦国時代)へ飛ばされ、黄金丸を持った睦月アイ(佐藤愛子)と弥生アミ(松野有里巳)がそれを追って飛ばされる。
本作は、黄金丸を持っていた睦月ユウ(染谷俊之)と弥生ケン(鳥越裕貴)が先に100年後の未来へ飛ばされ、如月ヒロ(竹内尚文)が後に飛ばされる。

ribbon版は黄金丸に隠された秘密を巡る物語だが、本作は主役3人の関係性と未来に飛ばされた謎を巡る物語となっている。
だから、あらすじ自体がネタバレになるので、ここには書かない(本日初日を迎えたばかりだし)。

とにかく、まさか、29年前に観た芝居が新しい物語となって私の前に現れるなんて予想もしていなかったことである。
そして、それが現実となったこと自体が驚きと喜びであり、芝居もTIME SLIPするんだなぁと感慨に耽ってしまった。

ribbon版で覚えているのは、「これは、これは」という言葉を逆さまにした「われこ、われこ」という台詞がしつこいくらい繰り返されたことと、現在は演出(と劇作)に専念しているいのうえひでのり氏が猪上秀徳として舞台に立っていたことと、Queenの「Sailin' Seas of Time」を日本語(訳詞=いのうえひでのり)で歌うribbonの3人がカッコよかったことだ(もちろん、3人のカワイさもだ)。

そんなわけで、29年前にTIME SLIPして、パンフレットの一部を覗き見してみよう。

なかなかのTIME SLIP感

ちなみに本稿の表紙写真は、本作とribbon版パンフレットを並べたものである。

メモ

少年社中 第39回公演『クアンタム ーTIMESLIP 黄金丸-』
2022年8月5日。@紀伊國屋ホール


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