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「美善真」から他者への伝え方を考える (しおたん/04)

皆さん、こんにちは。しおたんです。

8月のnoteは本の紹介を兼ねた、自己内省の機会にしていこうと思います。

7月は部活に、インターンでのプログラム運営に、合宿の準備に、、、と様々なことに追われてまとまった時間が取れなかったのですが、今月は無事に積読をいくつか消化できたので、その中から一つ共有させてください。


『教育幻想-クールティーチャー宣言-』 菅野仁 

『教育幻想-クールティーチャー宣言-』は社会学者である著者が、教育に関する問題のより「マシな」解決の道筋を見つけようという視点から、自身の教育論を展開する新書です。著者である菅野仁さんは、学校の目的は「すばらしい人を作る」ことではなく、「社会に適応できる人」を育成すること、という考え方を持っています。

自分の中で培ってきた教育観と異なる点が多く、たくさんの刺激を受けていたのですが、その中で紹介されていた「美善真」という価値観に深く共感しました。教師を志している私には、未来の生徒たちへの指導の仕方という視点で、この本から多くの新しい知見を得ることができました。

今回は、この「美善真」という考え方について紹介し、自分の経験と照らし合わせながら、他者との関わりについて考察してみたいと思います。


美善真の説明 

本書で提唱される「美善真」という言葉は、古代ギリシャの哲学者プラトンが示した「真善美」という三つの徳目に由来します。「真善美(しんぜんび)」は“人間が生きる上での理想の状態を3つの言葉で具現化した表現”です。古代ギリシャの哲学者たちの間では、人間としての最高の状態が「真と善と美」の確立であると考えられていました。

「真」は物事本質としての正しさ、「善」とはよいこと、道徳的な正しさ意味を持つ。「美」とは、美しいといより、「美」は「心地よさ」や「快・不快」の感覚を指すと説明されています。

ここで、菅野さんは精神的な観点では、「美・善・真」の順で発達が進むと指摘します。人はいきなり「真」(その人の物事に対する良い/悪いという価値観)を持つわけではありません。幼少期においては、まず「美」(自分にとって何が好きか、嫌いか)を感じることが基本となり、その感覚を基に「善」の意識が育まれ、さらに成長するにつれて「真」の理解が深まっていくのです。


なぜ「勉強しなさい」と言っても聞かないのか

『教育幻想』の中で菅野さんは、子どものしつけにおいて「美・善・真」の順序を重視することの重要性を説いています。

例えば、親が「勉強しなさい」と命じるのはそれが正しいことだからやりなさい、という親の「真」を重視したしつけにあたります。
自分の中での「真」が確立されていない子どもにとってこのような伝え方では響きにくいのです。

菅野さんは、まずは子どもが心地よさを感じられるような経験を積むことが必要だと述べています。勉強そのものではなく、達成感や褒められる喜びを通じて、学びが「美」へとつながり、それが最終的に「善」や「真」へと昇華されると指摘しています。


自分の経験からの考察

子どもへのしつけというとなかなか機会はないのですが、この考え方は普段の他者とのコミュニケーションの際にも適応できると感じます。

この「美・善・真」の段階を自分の他者との関わりに照らし合わせると、いくつかのことに気づかされます。特に、誰かに何かをお願いしたり、自分の意見を伝える際に「真」(物事の正しさや現実)を強調するあまり、相手にとって「美」(心地よさ)を欠いた伝え方をしていないかと感じる経験がありました。

大学のグループプロジェクトでのことです。私たちのチームには、LINEの返信が遅かったり、MTGへの出席率が低いなどプロジェクトへの貢献度が低いメンバーがいました。私たちはその子に、できる限り仕事を振ったり、これだけでもやってほしいなどと、いくつかのタスクをお願いしていました。しかし、メンバーは最後までタスクを完了してくれることは結局ありませんでした。振り返ってみると、私たちは、その子に依頼した仕事がプレゼンの成功にとってどれほど重要か、その子が仕事をしないことが、どれほどチームの損失になるのか、チームにとっての「真」を強調したお願いの仕方をしていたなと思います。

あのとき必要だったのは、タスクをお願いする際にその子の状況や気持ちに配慮して、なぜいまプロジェクト熱意を持てていないのかを考えることだったのではないかと思います。その子にとって心地よい形で伝えたり、楽しくできる仕事をみつければ、チーム全員がそれぞれ強みを発揮できるよりよいプレゼンができたのかもしれないなと反省しています。


おわりに

経験を振り返ってみても、他者に対して何かを伝える際には、「真」を主張するだけでなく、相手の「美」意識に気を配ることが大切だと感じました。相手にとって心地よい形で物事を伝えることができれば、相手の行動にも変化が生まれ、結果として相手との関係もより良好になるのだと思います。

もちろん、真実や正しさを無視することはできませんが、それをどのように伝えるかに気を配ることが、より豊かな人間関係を築くための鍵だと考えています。

「美・善・真」のバランスを意識し、これからも他者とのコミュニケーションにおいて、自分自身をより深く理解し、成長していきたいと思います。


しおたん

<この記事を書いたひと>
しおたん。名前の由来は諸説ある。鳥愛好家。東京都生まれ東京育ち。趣味は洋画、洋ドラマ鑑賞。→大好きすぎてHULU、Netflix、アマプラなど一通りの動画サブスクに加入している。家では3羽のインコを飼育し、日々戯れている。最近は大学から始めたアーチェリーにいそしむ。

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