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落下羊日和 1

inner space lab、横須賀の小さなレーベル(レコード会社)に所属しているFallsheeps(フォールシープス)というバンドがいる。メンバーは全員横須賀出身、結成当初から「横須賀を芸術で盛り上げる」をコンセプトに活動している、なんとも地元愛に溢れたバンドだ。

地方の音楽とバンド、そのなかでのFallsheepsの存在について、お話をしたい。

東京や大阪などの主要都市は、音楽人口とライブハウス・文化施設が多い分、自然と人が集まるので、新しい音楽が生まれるなど、文化が育まれるが、横須賀のような地方はそうはいかない。音楽人口も会場も少なければ、人も集まりにくい。ライブハウスやバンドの世界において、地方の音楽文化は衰退の一途を辿るようなことも少なくない。実際、都内のライブハウスは新しくオープンする店が多い一方で、地方は閉店を余儀なくされる店も多い。

しかし、地方にも活路はある。全国レベルで名前が轟く、その土地の「ボス」のような存在感があるバンド・アーティストがいれば、人も集まり、活動拠点である地域の音楽文化に、刺激を与えることができる。例えば、札幌にはSLANG、静岡にはAnd Protector、奈良にはLOSTAGE、姫路にはbachoがいるように、その土地を代表するバンドが精力的に活動することで、外から見たら「お、あそこの土地の音楽シーンは元気だな」という印象を与えることができる。そして新しい音楽も生まれる。

今、横須賀にはこの「ボス」が必要だとずっと考えていた。もちろん、横須賀出身でかっこ良いバンドはいるのだが、地元の若い子に「このバンド知ってる?」と聴くとなかなか認知度は低い。

そんな中で、2018年の3月ぐらいだっただろうか、地元の後輩だった川口淳太から「Fallsheepsっていうバンド始めました。」という連絡と一緒に送られてきたデモ音源を聴いた時、横須賀の音楽が変わるかもしれないという予感がした。(その時に送られた曲は「Uncertain」という1st ミニアルバム「Aid」に収録されている曲のデモ版だったのを覚えている)

今まで横須賀にいたバンドたちとは違う音楽だった。シンプルでストレートなロックやパンクバンドが多い横須賀の音楽の中で、ギターのフレーズを複雑に絡ませた切れ味鋭いアレンジや、海外のインディーシーンにも通ずる曲は新鮮だった。地元にこんなバンドが出てきたとは!という思いと期待が高まった。

その頃は、本格的にレーベルを始める前というのもあって、inner space labでリリースするということが頭になかったのだが「こんな良いバンドが都内や横浜に活動拠点が移ったら嫌だな... こやつらをしっかり捕まえておかねば」という地元の先輩として、なんとも器の小さい考えで当時付き合っていて、今思い返すと少し恥ずかしい。

レーベルも始動しはじめて少し経ったころ、2019年の初夏。淳太から「inner space labでFallsheepsの音源を出したいです」という連絡をもらった時、ひとつの考えが浮かんだ。Fallsheepsを横須賀のボスにしよう。Fallsheepsが筆頭になって、若いバンド・リスナーが増えたら、横須賀という地方の音楽文化は盛り上がる予感がする。しっかりタッグを組んで音楽を作っていこうと肚に決めた。

そして、配信版は2019年10月、CDは2020年3月に1stミニアルバム「Aid」をinner space labからリリースした。徐々にではあるが、着実に地元の若いリスナーに浸透してきている。

そして、Fallsheepsは地元の音楽を盛り上げるため、結成当初から毎年、Culture Club Yokosukaというイベントを開催している。会場は横須賀中央にある、オルタナティブ古民家 飯島商店というところなのだが、もともとライブをやるスペースではなく、普段はアート展示・ギャラリーとして運営されている。

飯島商店 HP(https://www.iijimashouten.com

この飯島商店に、スピーカーやバンドの機材を持ち込んで、自分たちでライブハウスのような空間に変えてしまう。極めてDIY。そして、刺激的な音楽を鳴らすバンド・アーティストを呼んで、1日じっくりと音楽を楽しむイベントを毎年作っている。

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(2019 Culture Club Yokosuka / photo Kaori)

ここで、Fallsheepsのメンバーについて紹介したい。

川口淳太(ギターボーカル)
バンドのリーダー。国内外問わずインディー音楽全般に精通していて、なかでもギターロックに造詣が深い。デザイナーとしても活動しており、1stミニアルバム「Aid」のアートワークは彼の作品。町田を拠点にするバンド、Made in Me.のギタリストでもあり、現在はメンバーとともに町田で暮らしている。「5年以内に横須賀の海沿いに引っ越して、音楽を作りながら、奥さん(未定)と犬(未定)と暮らす」という野望を持つ。「〜のマインドでー」というのが口癖で、一緒にいるうちにその口癖が移ってしまった。趣味はゲームとサウナ。

よしか(ベース)
大人しそうな見た目に反して、ゴリっとした凶悪サウンドを鳴らすベース女子。Fallsheepsの前には花魁少年というバンドでベースを弾いていた。笑いのツボが浅いため、こちらが笑いを狙ってない話をしても、よく笑うので面白い。美容や化粧品の関心が高めで、飯島商店に住む写真家コムラマイさんとよく化粧品の話をしている。跳躍力が乏しくヤクルト一本分の高さのジャンプが限界。通称「ヤクルトジャンパー」。

Itsuki Kun(ドラム)
淳太の弟。バンドのマネジメント担当。兄曰く「一番音楽の趣味が合うのが、いつきだったからバンドに誘った」とのことだが、スタジオで毎回淳太に怒られている(兄弟愛ゆえ)。スマブラがライフワークとなっており、横須賀で一番スマブラが強いのは自分だと豪語する。Itsuki Kun名義でソロ活動もしている。趣味はゲームとサウナ。

という控えに言って、個性が強め3人。ライブではメンバー3人に加えて、サポートでギターが入る。そのギタリストがレーベルの代表である私。ほぼ半分メンバーみたいになってきている。

現在は新しい音源の制作に向けて動いている。このブログでFallsheepsの活動や制作の裏側、横須賀の「ボス」になるまでの過程を綴っていきたいと思う。(続く)


■ Fallsheeps / 秒針 MV


■ Fallsheeps / Aid 配信中


■ Fallsheeps / Aid(CD)


■ Fallsheeps / 落下羊 Tee(BASE)


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