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緊張から自由になるには

2023年3月、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が6年ぶりに開催され盛り上がっています。
WBCといえば思い出す光景があります。それは、2013年大会の準決勝の日本対プエルトリコ戦です。私はその試合を現地で観戦していました。

「近く(サンフランシスコAT&Tパーク)でWBCあるから行ってみよう!」という軽いノリで、私たち(田中&白石)はカルトレインに乗って遠足気分で会場へ行きました。

ピッチャーが正面に見える私たちの座席からは、選手達の体の感じや表情がよく見えました。試合が始まるとすぐに、私たちのミラーニューロンは守備に入った日本人選手のガッチガッチの体の状態をとらえ、お祭り気分が一気に吹き飛んだのです。
すると、日本チームはプロとは思えないようなミスが出て、ますますガチガチになっていきました。

一方、プエルトリコチームは、ベンチも選手もノリノリ、うまくいってもいかなくても歌って踊ってのお祭り騒ぎで、見ている方も楽しくなっていきました。
国民性とはいえ、両チームの雰囲気の違いが印象的でした。

日本チームが気の毒になってしまい「リラックス、リラックス、落ち着いて、落ち着いて」と言いながら手を上から下におろすジェスチャーでエネルギーを送りましたが、なんちゃって魔女の力及ばず、侍ジャパンはまさかの準決勝敗退となりました。
隣席の日本からわざわざ応援に来ていた若者が「決勝戦のチケットもとってあるので見て帰ります」と肩を落としていて、切なかったです。

もし日本チームが、プエルトリコのようなノリだったら・・(もはや”侍”とは呼べないでしょうが)
勝てば、「楽しんでいたから勝てた」と言われるでしょう、
負ければ、「真剣さが足りない、気が緩んでいたからだ」などと批判されるでしょう。結果論でいろいろ言われるのも気の毒ですね。


”感情を制するものは試合を制する”

過剰な緊張にどう対処したらよいか?

スポーツに限らず、誰でも緊張する場面はあります。
緊張が集中力を高めることもありますが、過剰な緊張は冷静さを奪い、実力を発揮できなくなったり、体を固くしてケガをしやすくします。
「緊張する」原因は人それぞれですが、よくあるパターンについてその対策とともに紹介します。いろいろ試して体の余計な力が抜けて重心が定まる感じをつかんでください。

<緊張から自由になるコツその1>
 自分の感覚に意識を向け、緊張に気づいてゆるめる

緊張している人は、他人や周りのことを気にしすぎる傾向があります。
他人のことはよくわかりません。まして、他人の評価や感情はコントロールできません。
大事なのは、自分の状態
「緊張しないように」と思うと体は無意識に緊張状態を再現してしまいます。
緊張は自然発生的に体で起こるものなので、自分の感覚に意識を向けて、緊張している箇所に気づいてゆるめる、を繰り返します。
「緊張している体の部位に気づいてゆるめる」がコツです。

<緊張から自由になるコツその2>
 何かを背負っていたら、それに気づく

緊張で固くなるのは、自分ではどうしようもない大きすぎることを背負っているときです。

2013年と言えば東日本大震災から2年、当時の侍ジャパンは「優勝して震災で傷ついた日本に勇気と希望を」という気負いはあったのではないかと思います。

自分が何か大きなものを背負っているとしたら、何を背負っているのか、何の責任を感じているのか、具体的に調べてみます。そして、それが現実的か、自分が背負うべきことか、などと客観視してみましょう。
背負いきれないものや、自分の影響力の範囲を超えたものを背負っていることに気づいても、それをやめることはできないかもしれません。その場合は、「それをやめたらどうなってしまう気がするだろう?」とその不安や恐怖に向き合いましょう。

<緊張から自由になるコツその3>
 自分以外の何者かになろうとしない、今の自分のベストを知っておく


こうでなければ、こうしなければ、こうあらねば、に縛られている時に、人は固くなり緊張します。
それができなかったとき、そうなれなかったときの不安や恐怖が背景にあるからです

先日あるテレビ番組で「スポーツ選手でも震えるほど緊張するのか?」というテーマをとりあげていました。どの選手も緊張した体験を語る中、サッカーの遠藤保仁さんだけが「どんな大きな試合でも緊張しない」と言うので、緊張しない方法について聞かれると「背伸びしないこと。自分の許容範囲を知った上で行動する」と答えていました。

多くの人は、背伸びをしている自覚すらありません。
潜在的には自分はできると思っているかもしれません。
私たちは、未来の可能性(のびしろ)を込みで自分の能力を見積もりがちです。
未来はもっと成長しているだろうけれど、「今はこれが精いっぱい」という今の等身大のベストを知っておくことが大事です。


<緊張から自由になるコツその4>
 やれることをやって、結果への執着を手放す

結果は未来のこと。未来や空想に意識を向けると、今の体を感じることができなくなり、気が上がり(アガルという現象)、浮足立ちます。
結果に対しては自分ではコントロールできないこともたくさん影響してます。

とはいえ「結果を意識しないようにしよう」と思えば思うほど気になるもの。
「結果や評価が気になっている」ことに気づくことが大事。
さらにありのままの自分の気持ち(勝ちたい、成功したい、認められたい、完璧にやりたい、ちゃんとやりたい、・・)を受け入れると少し楽になります。

2013年のWBCの大会では誰もが侍ジャパンの3連覇を期待していました。
「優勝しかあり得ない」という心理状態で、監督も選手もスタッフもみんなの緊張が高まっていったのではないかと思います。

ちなみに、前述の遠藤保仁さんが「人生で唯一、緊張した瞬間は、運転免許の合格のとき」と語っていました。
この時ばかりは、不慣れな試験で結果を意識したのでしょう


「今の自分にできることはできる、できないことはできない」と開き直って、できることを続けていると、いつしか過去にできなかったことができている自分に気づくでしょう。


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