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もっと知りたいディープな熊野    ~学びたい人のための参考資料リスト~

東京から熊野へ移住して5年目の私。
熊野には、オトナたちにも子どもたちにも来てほしいと願っています。
大きな子どもでもいいし、小さなオトナでもいい。

子どもというのは、誰に教えられなくても、理屈でなく本能や感性で、熊野から“何か”を受けとってくれる人のこと。
オトナはオトナで、熊野から受け取ったよくわからない不思議な感覚を、後から頭脳で探求するという遊びができる人というイメージです。

そんな訳で。
熊野へ来たことがある、又は、熊野に興味があるオトナたちのための、参考資料を少しずつまとめていこうと思います。
まずは、私自身がこれまで熊野を案内した人たち向けの情報を意識しつつ。
ゆくゆくは、熊野のヒミツにご興味ある方どなたにでも、楽しんで参照してもらえるようなリストを目指していこうと思います。


テーマ1:まつろわぬ民

熊野は、まつろわぬ民の聖地。
20年ほど前、私が熊野旅を始めた頃から、それは変わらない感覚です。
「まつろう」とは「従う」こと。
つまり、まつろわぬ民とは従わない人々という意味です。
歴史上のそれぞれの時代の中で、主流ではない生き方をしていた人たちが訪れたり、その当時の世の中を支配していたやり方とは異なる仕組みの社会があったりしたのが、熊野という土地でした。
従わないと言っても逆らいたい訳でもなく、ただ、自分たちの生き方を曲げられなかっただけ。
あるいは、すでに権力側からコテンパンにやられてしまって、逆らう力も無くしてしまった人たちが逃げてきた場所、籠もり野としての熊野。
そういった人たちが絶滅せず、生き残ってきたことが、日本文化の多様性を担保してきたのだと思っています。
そんな「まつろわぬ民」の感覚や考え方を疑似体験できる本とアニメをご紹介します。

図南の翼 十二国記6 by小野不由美

道とは何か。王とは何か。民とは何か。
熊野で感じられるのと同じ要素がたくさん散りばめられた物語。
ガチで熊野古道歩きを始めたい人にもお勧めです。

もののけ姫 by 宮崎駿

時の権力と距離を置きながら生きる術を模索する人々。
エボシ御前と周囲の人々は、鉱物資源に恵まれた中世の熊野を思わせます。

日本国つ神情念史1 清姫は語る by津名道代

安珍清姫の伝承から紐解く、歴史書で見えない側の日本史。
情念史という新ジャンルを拓いた著者が、物語を交えながら、ご自身の探求の道筋を解説してくれます。

RDG by 荻原規子

熊野という領域の立ち位置を理解するためには、イチオシの小説。
主人公・泉水子の視点で物語を追ううちに、なぜ熊野は隠されてきたのか、あえてわかりにくくされてきた歴史などが自然とわかってしまう良書です。


テーマ2:補陀落渡海

熊野は、よみがえりの地。
というか、黄泉の国=あの世あつかいされることもあるほどの僻地です。
だからなのでしょうか。
死や、死後の世界を想わせる景観が多く、それらは何らかの形で聖地とされています。
魂の行きつく先だと考えられていた海。
魂が天へ昇っていく時に通ると考えられていた山。
遺体が流れ着く様から、魂もそこへひと時の安らぎを得るために還ると考えられていた川の中州。
現代よりも人間が弱く、生きることは難しく、死が身近だった頃、生身のままで仏さまの世界(補陀落=観音菩薩の降臨する霊場)を目指す旅に出る「渡海」という風習があったのです。

補陀落渡海記 by井上靖

仏の国への祈りの旅は、とどのつまり、単なる自殺なのか。
現代の価値観では理解しがたい渡海という風習を、人間らしい葛藤をもったお坊さんの視点で見つめる小説です。

平成狸合戦ぽんぽこ by 高畑勲

 企画コンセプトは、狸の平家物語。
 土地を追われた狸たちの渡海シーンが劇中で登場します。
 「哀れタヌキは死出の旅 ドンジャンドンジャン死出の旅・・・」

モノノ怪 第3~5話 海坊主

補陀落渡海をモチーフにしたホラーアニメです。
怪異の元となるのは常に、人間の情念。
こじれてしまった人の想いが、生者死者の境を越えて浄化される物語です。


熊野で触れた感覚と似てるなと思ったものを挙げてみました。
ひょっとしたら、「参考資料リスト」というタイトルから想像されるものと違っていたかもしれませんね(笑)
今後も気づいたら、追加・修正を加えていこうと思います。

2024年7月31日


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