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#82年生まれキムジヨン

韓国映画は、今年「パラサイト」「はちどり」に続き3本目。
全部話題作だから、観といた方が良いと思って。

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30代夫婦、一女を授かり、側から見ると幸せな家族で起こった話を描いている今作。評判が良かったけど、予告を何回も見ていたからちょっと構えてた。

病気は置いといても、妻側の立ち位置で見る社会は閉塞感に支配され、行き場のない状況。そこに他人に憑依する病気?になる話が加わるんだから、まぁヘヴィー。
そして、2時間1テーマ。主人公ジヨンが自分の病気を認識していく過程を見せるわけだけど、見せ方によっては飽きちゃう可能性もある。間延びしちゃったりとか。

しかし、そんな不安は、序盤の内に杞憂だったと感じて、話に集中できた。
その大きな理由は、なんといっても、ジヨン(チョン・ユミ)。
それほど表情は変わらないのに、肌の質感で彼女の現状が分かる。
画面から視線をそらすことができなかった。

メイクなんかもあるけど、顔の微妙なニュアンスなんかは、演じる役者の力量。
美しい役者なのに、そう感じない場面が多かった。役になりきるなんて陳腐な言い方になっちゃうけど、まさにそんな感じ。

先日観た「ミッドナイト・スワン」でも感じたけど、こういうのは観る方が試される。しっかり観ておかないと、重要な場面、表情を見逃す。目が離せない。


他には、夫婦の実家が蔚山(夫)とソウル(妻)というのもポイントなのかな。
首都と地方都市における家族の考え方の違いは、数々のシーンでよく見られた。
「妻は家で」とか「夫の家に嫁ぐ」とか、日本でも以前にはあったような旧態依然とした考え方が、2016年くらいになっても変わっていないことを描いている。

ただ、ジヨンの夫デヒョンの存在は、旧態依然とした社会の雰囲気とは違って、変化の兆しを見せていることも示している(会社の同僚の言動を見る限り、まだまだという感じはする)。


さて、作品の途中から、ジヨンの母親ミスクの存在が大きくなっていく。

ミスクは男兄弟のために進学せず、働きに出て家計を支えた人。そして、専業主婦から自分の店を持つに至っている(長男に店のカギ締めを頼んでるし、そう推測)。
映画の最後、ジヨンの父親、夫ヨンスは公務員だったとあったので、90年代中盤の金融危機で大損した辺りから働くようになったのだろうか?

ミスクは度々、夫ヨンスにかましている。
大学卒業目前のジヨンの就職先が決まらない時、ヨンスが放った言葉に対して。
そして、ジヨンの病気が分かって家でふさぎ込んでいた時、ヨンスがとっていた行動に対して。

回顧シーンで、ミスクの母親(ジヨンの祖母)の発言に対して嫌悪感を示す場面もある。
そう言えば、ジヨンからなぜ仕事をしないのか、私のせいか?みたいなことを言われたシーンがあったな、、あれもきっかけ??

映画を観ながらこんなことをつなぎ合わせていった自分には、後半におけるミスクの存在感は見逃せないし、何度も目が潤むシーンがあった。
娘2人が大学を出て働いている(いた)。そんな娘たちの後押しをしていたのは彼女。
家族がありながらも、たくましく、自分の世界を持っているミスク。考え方の違いが年齢に起因しないことを示している彼女は、あらゆる世代の救いという気がした。
ただ、これはソウルというのがキーワードなのかもしれない。

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そうそう、途中から「はちどり」と共通点が多いことに気づいた。

主人公がどちらも90年代中盤あたりに中学生ということ。
母親は、頭が良かったのに進学しなかったということ(利き手は見てなかった、、)。働いてもいるな。

学歴の扱い方も共通している。
男性は、出世のために学歴が必要。
女性は、学歴があっても、なかなか居場所を見つけられない、居続けられない。

あと、家父長制。男尊女卑の思想が根強い親世代、そこに疑問を持ち、反発する娘たち。
そして、男というだけで期待され、持ち上げられる息子たち。そんなところも垣間見ることができる。
あと、外では強気の男性も、家ではちょっとしたことで動揺し、優しくなることも共通している(どちらの作品も、一方的に男性を貶めていない)。

鑑賞後、HPで女性監督であることも知った。
40代の女性監督が同じエッセンスを入れているということは、90年代中盤の韓国の社会情勢が与えた影響が大きいことが窺える。
韓国の民主化が実現した後、韓国の分岐点だろう90年代中盤の空気を知っている、という共通点は興味深いし、今後の韓国映画を観るポイントでもありそうだから、少し勉強しておこっと。

あと、「パラサイト」を含め、スクリーンの色が独特の青っていう印象も残った。縁(ふち)が特に(気のせい?)。青については、ミッドナイトスワンでも触れたけど、その青とも違う。
この3作しか観てないけど、韓国映画の色合いにも注目しなきゃな。

あ、そう言えば、今作と「パラサイト」の共通点に、子供の遊び道具にティピー(インディアンテントとも言われる円錐型のテント)がある。これは裕福な家庭の象徴なのかな?

色々細かいところも気になってしまった。
1回しか観てないから見逃したり、間違ってることもあるかも。
でも、1回観ただけでこれだけ食らってるんだから、観て良かった!

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