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ゲットバック・マイ・ライフ 3

承前

目の前に現れた鉄塊は巨大ロボのごつい脚。お台場ガンダムぐらいあるが、もっとゴツゴツした悪そうなやつだ。そいつが空から降ってきて、カレンを押し潰したのだ。支えを失ったカレンの腕が重みで地面に落ちるより先に俺は後方に吹き飛ばされた。

尻餅をつき、後頭部をぶつけ、カレンの腕の付け根が顔面を殴打した。ぐにゃりとした肉の感触。肌を突く砕けた骨片。凄まじく鉄臭い血の匂い。パニックにならない方がどうかしてる。俺は人生でも指折りのでかい悲鳴を上げ、つんのめりながら来た道へ逃げた。この期に及んでまだ俺はカレンの手を握っていたので、また悲鳴を上げて投げ捨てた。改札を通り過ぎた頃、降ってきた巨大ロボの方から砲撃のような音が聴こえてきたが、構ってる余裕はなかった。

…人が、人が死んだ!というか、俺も死ぬところだった!冗談じゃない!こんなところに居られるか!帰る!帰る!帰る!

とにかくホームだ!俺は電車で来たんだから、また電車に乗れば帰れる!そうだろ!なぁ!俺は転がるようにホームまで到達した。そして線路の伸びる先を見て、絶望した。

線路が、途切れている。

…バカな。じゃあ俺が…ここまで…乗って来た電車は…どうやって来たっていうんだよ!…おかしいだろ!

汗だくでわめく俺の眼前、駅前広場の上を翼の生えた竜が通り過ぎて行った。えっ?竜?

竜はその後ろに仲間と思われる竜を連れ、大きく旋回するとさっきのロボットへ突撃をかけていった。よく見ると竜の背中には人が乗っている。竜の接近に気付いたロボットは手にした銃をぶっ放す。弾幕を避けながら竜はロボットと交錯し、耳障りな音を響かせた。俺は柱の陰に隠れて遠目に映る戦いを見つめていた。流れ弾がいつ飛んでくるとも知れなかったからだ。

そうだ。ここは電車に乗ってれば着くようなところじゃあなかったんだ。カレンが最初に言ったじゃあないか。俺は何かの条件を満たして呼ばれたんだ。電車はどこを走って来たのか?そんなもんまともな線路じゃあないだろ。バカか俺は。

…少し冷静になって来た。ロボットと竜の戦いは続いていたが、俺はどうやら安全圏にいるらしい。ほとぼりが冷めるまでここに身を潜めるとしよう。そもそも俺に帰る場所なんて…。

それにしてもどこへ行けばいいのだろう。これが海外とかなら大使館に駆け込めばいいのだが、ここにそんなものがあるとは思えない。カレンはなんて言っていた…?本部とかなんとか言ってたな…。あいつ、俺をどこかに連れて行こうとしていたぞ。もう少し休んだら、そこを探してみるか…。全然手掛かりなんかないけど…。

あぁそれにしても喉が渇いたな。どこかに自販機でも無いか…。

そうやってあたりを見渡した俺の視界に不穏な影が映った。

犬だ。犬がいる。いつからそこにいた?あと、なんかこいつ目が光ってないか?

GRRRRRR.....!

やばい。こいつアレだ。電車内で俺に襲いかかって来たやつだ。カレンが全部殺したんじゃなかったのか?

GRRRRRR.....!

…そうだ!俺はさっきカレンの血を浴びて…!

GRRRRRR!!!!

嗅ぎつけられて、連れて来ちまった?!

結論が出た時、既に犬の悪魔は俺に向かって猛烈な勢いで突撃して来ていた。

【続く】


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