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今年読んだ10冊を振り返る

今年はフリーランスとして開業したり、複数のライター講座を受けたり、ガラリと環境が変わった一年でした。記事を書いているときは、悩んで唸ってのたうち回ってを繰り返していましたが、それもいい経験になったと思います。おかげさまで楽しい一年を過ごせました。

そんなこんなで慌ただしい年になるのはわかっていましたから、2021年は「計画的に読書をしよう」と目標を立てていました。何とかして読書の時間を確保しておかないと、本当に全く読まなくなるので。

で、朝仕事を始める前、昼の休憩時間、夕食後、就寝前など、いわゆるスキマ時間に少しずつでも読むようにしました。すると、塵も積もればなんとやらで、結果的に自分比で最もたくさん本を読んだ一年となりました。習慣づけって大事ですね。

「ブクログ」アプリを参照すると、今年読んだ本は60冊を超えていました(マンガ・雑誌は除く)。もちろん、たくさん読んだから偉いとかいう話ではありませんし、読書家の方が読む量の足元にも及ばないですが。

今回はその中でも印象に残った10冊を記録しておこうと思い、noteを書きました。まだ読んでいない本に興味を持ったり、「そうそう、この本いいよね!」って共感したりしてもらえたら感激の極みです。

注:2021年に発売した本もあれば、そうでないのもあります。

【12/30 修正と追記】
10冊と言っておきながら、9冊しかあげておりませんでした。決して5人いる四天王みたいな仕掛けがあったわけではありません。修正済みです。

■繰り返し読んだ3冊

『ジャックポット』筒井康隆
この単行本に収録されている『川のほとり』という短編に心を揺さぶられました。2020年、筒井康隆氏は息子の伸輔氏に先立たれています。『川のほとり』は夢の中で伸輔氏と邂逅する話です。
僕は独身で、父も健在ですが、今年始めに父が体験した死にまつわる話をエッセイにしました。その影響もあって強く感情移入したのだと思います。


『黒牢城』米澤穂信
歴史好きもミステリー好きもきっと楽しめる本作。戦国時代の史実を題材に、籠城中に起こった奇怪な事件を解決する物語です。直木賞候補にも選ばれましたね。
本作を読み終えた後、不思議な熱量が生まれました。具体的には自転車で10kmかっとばして物語の舞台に巡礼してまいりました。そのときの感想は別途noteにまとめてあります。


『卍』谷崎潤一郎
この小説を読んでいる最中はつくづく「大阪弁ネイティブで良かった…」と思いました。でなければ、癖のある方言で語られる本作に没頭できなかったかもしれません。
ところで、この『卍』を読んで改めて思いましたが、過去を告白する体で進んでいく小説がとても自分好みのようです。果たして同じ嗜好の方っていらっしゃるんでしょうかね。


■ライター業を支えてくれた2冊

『ライティングの哲学』千葉雅也/山内朋樹/読書猿/瀬下翔太
孤独な作業を長時間やっていると、「自分は果たしてちゃんと書けているのか?」と不安になります。そうやって行き詰まった時は、本書の内容を思い出したり、なるほどなと思った箇所を読み返したりしています。この先もお世話になる機会はしょっちゅう訪れるでしょう。


『独学大全』読書猿
こちらも普段の仕事に大変役立っています。例えば、一部で流行っている『ポモドーロ・テクニック(※)』も、こちらを参照して仕事に取り入れました。
本書を通じて学びに対する意識が変わり、しぶとく学び続けていれば何歳になっても成長できると確信できました。非常に勇気づけられた一冊です。

※25分の作業と5分程度の休憩を1セットとして繰り返し、集中力を維持しながら作業を行う時間管理術。

■暮らしを支えてくれた2冊

『誰にもわかるハイデガー: 文学部唯野教授・最終講義』筒井康隆
大学時代に勉強した分野の一つに哲学があります(専攻ではなかったですが)。先の『独学大全』に感化されて、当時さっぱり理解できなかったハイデガーの『存在と時間』を読み返そうと試みたのですが、30歳も半ばを過ぎた今でも手強かったです。そんなある時、筒井康隆が入門書を出していると知りました。早速読んでみたところ、すさまじくわかりやすかったです。本書を足掛かりに、来年こそ『存在と時間』を攻略したいですし、そういう独学を暮らしの中に定着させたいです。


『お味噌知る』土井善晴・土井光
テレ朝「おかずのクッキング」やNHK「きょうの料理」などでおなじみの土井先生の著書です。本作の他に、2016年に発表した『一汁一菜でよいという提案』も有名ですね。
本作は親子による共著で、「お味噌汁」に特化しています。『一汁一菜(略)』とこの本を読んだおかげで料理への考え方がずいぶん変わりました。ごはんとお味噌汁とお漬物だけのシンプルな食卓に幸福感を感じられるようになるなんて、数年前の自分に言っても信じないと思います。


■ふと思い出す3冊

『芋虫』江戸川乱歩
『押絵と旅する男』江戸川乱歩

今年、遅ればせながらAmazonのkindle unlimitedに加入しました。マンガや雑誌に加えて、文豪の全集を読み漁れるのがうれしいですね。
江戸川乱歩の全集が特に印象的でしたのでその中から2作品を。『怪人二十面相』にしようか悩みましたが、読み終えた後の重苦しい感覚をいまだに思い出すので、やっぱりこの2つにしました。バンドの方の人間椅子が演奏する『芋虫』もドチャクソかっこいいですよね。


『マンガ好きのためのマンガ家インタビュー集』
これまでマンガ家のインタビューを積極的に読むことはなかったと思います。しかし、気が付けば本書を手にとっていました。石黒正数先生の表紙イラストに目を引かれたこと、顔ぶれがあまりにどストライクだったことが要因でしょう。マンガ家へのインタビューって普段自分が仕事で行う取材とは全然違っていて、その点でも勉強になりました。


■以下、余談

今年はいろいろな本に出会うことができました。無理にでも読書を習慣に組み込んで本当に良かったです。ちなみにそう思い立ったのは、丸谷才一が語っていた言葉になるほどなと思わされたからです。

まとまった時間があったら本を読むなということです。本は原則として忙しいときに読むべきものです。まとまった時間があったらものを考えよう。

『思考のレッスン』丸谷才一

この言葉を自分向けに解釈して、本はスキマ時間に読んで、時間があるときは外を散歩して考えをまとめる生活を送ってみました。これがずいぶん自分には合っていたようです。もちろん、仕事が忙しいからと積読することもあれば、本が面白くてつい長時間没頭することもあるので、まだまだ徹底できていませんけどね。なんでも三日坊主になりがちな僕ですが、今年は読書を続けることができました。小さな一歩ですが自信にしたいものです。

最後にもう少しだけ。私事ながら昨年の冬に引っ越しました。その新居から歩いて3分ほどの場所に市立図書館があり、今年はずいぶんお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。空き時間にぶらりと図書館へ行って、読みたい本を漁れる生活は幸福感に満ちていました。来年も新たな出会いを楽しみにしています。

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