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【インタビュー記事】HSP・内向型の強みを生かして自分らしい働き方を見つける 第1回 数学家庭教師・ホモルーデンスさん・後編

現在、フリーの家庭教師として活躍されている、数学のエンターテインメント教師ホモルーデンスさん。なぜ、「数学」を選んだのか、「やりたいこと」の熱意に蓋をしていた自分に気づき、新しい挑戦へと進んでいく軌跡について伺いました。

※注:タイトルにある内向型とは、「内気」という意味ではなく、関心が外よりも自分自身に向かっている人や、深い洞察力を持つ人たちのことを指します。

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ホモルーデンスさん写真

ホモルーデンス
2019年から、オンラインで数学の家庭教師(中学・高校数学)をはじめ、大学受験指導、学校の補習、定期テスト対策など個別指導を行う。基本に忠実な指導法、親しみやすい人柄に定評がある。
アメブロ: https://ameblo.jp/homo-ludens3839/
note:https://note.com/homoludens3839/

なぜ「数学」を選んだか―「熱量」の違い

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▲使用している数学の教科書

―そもそも、なぜ、数学を主軸にしていくことを決めたのでしょうか。

数学をライフワークにしようと思ったのは、2018年にライフワークコンサルを受けて「一番やりたいことは数学だ」と気づいたことがきっかけでした。2012年くらいから、塾講師として数学を教えていましたが、中心には据えてなかったんですよ。アメブロは2016年4月くらいから書いていますが、最初は数学じゃなくてブレインジムをテーマにしていたんです。塾では数学だけでなく英語の指導もしていました。

―当時数学と英語は同じような割合で教えていたんですか。

そうですね。今は数学一本にしていますが、以前は英語も教えていました。でも、ある時数学を看板にしようと決めたわけです。

―数学が一番やりたいことだと自覚されたのは、ライフワークコンサルの方とお話したときだとおっしゃられていましたが、その時に、何を基準にして数学を選んだんでしょうか。いろいろ他にも選択肢があったと思うのですが、ブレインジムとか、英語とか、韓国語とか。

・・・熱量ですね。やっぱりそぎ落とす必要があるんですよ。コンサルの方が私に選択を迫ったわけです。

―そぎ落とすとは具体的にはどういうことでしょうか?

具体的な言葉は覚えていないんですが、「最後はどっち?」みたいな質問でしたね。ブレインジムと数学が最後まで残って、「どっちをとる?」ときかれたような。一番大切なのがどっちなのかを決めることになりました。熱量で決めましたね。その時に数学の方が恐ろしかったんです。

―恐ろしいとは?

それを言っちゃって、失敗したら後ろがないんです。一番やりたいことって。

―それを失ったら、自分が頼りにするものがなくなる、みたいなものですか。

そうです。人って2番目に好きなものをやっている方が保険をかけられるんですよ。その保険を外すってことです。しかも「私なんぞが数学していいのか」、「私なんかが」とずっと自分を抑えていたから、蓋を外すのがすごく大変だった。そして、蓋を外したら爆発した(笑)。

―蓋を外すのはどうやって?

それは自分でやるしかないんです。自分のなかでふつふつとたぎっているものにしている蓋を、自分で外すしかないんです。他人にはできません。

―それは、自分の実力を度外視しても、自分の中では「数学が一番好きだな」っていう気持ちがあるということに気づいていたと。でもそれに蓋していたと。

そうです。それを言葉にすることが、大変だった。認めることが大変だった。やはりちゃんと言葉にしないといけないんですよ。宣言しないといけない。「数学をする」と。言葉遣いに決まりはないんだけど、とにかく言葉に出して、相手がいるところではっきりと言う。ライフワークコンサルで宣言したんですけど、命がけです、本当に。

「やりたいこと」に蓋をしていた自分

―そこで自覚した後というのは、自覚する前と比べて変わりましたか。

生活はすぐには変わりませんでした。相変わらず塾で講師をしていましたし。でもブログの書き方をあっという間に変えました。数学を前面に出すようにして。ビビりまくって、お腹が痛くなったこともあります(笑)。「私でいいのか?」「もっとすごい人がいる」「やばい、怒られる、炎上したらどうしよう」と思いながら…。頼まれてもいないのに、すごい人のブログを渡り歩いて、「だめだ、この人にも劣る」「この人もっとすごい」と劣等感を強めたり。

―自覚したけど、「自分でいいのか」という気持ちは常にあったと。

こんな私が数学を語っていいのか、という気持ちが強かったですね。

―でも最終的に、現在ではブレインジムと数学が、割とミックスというか、ホモルーデンスさんの授業の中で、その両方の掛け合わせというのが軸になっているようなところもありますよね。もしかしたら、そのスパルタ方式で数学を選択しなくても、ブログを書くうちに自覚されていったのではないでしょうか?

いや、数学を1番に決めるというのは、だらだら続けているだけではできなかったと思います。

―そうですか、無理やりにでも決めるというのが必要でしたか。

どこかで決断を一回しないといけない。自然には無理だった。やっぱり目を背けているから。気になってるけど、趣味程度にとどめていたり、絶対に表には出さないようにしていた。その延長に今の私はありません。決めることが必要でしたね。

―やはり決めないとどちらかには進めない、というのはありますよね。

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▲図形を塗って遊んでみた

オンライン授業への挑戦

―その後、オンラインでの個別指導にチャレンジされたのも転機となりましたね。

オンライン数学のきっかけは面白かった。オンラインの初めてのご依頼があった日を覚えています。2019年3月10日でした。ちょうど同じ日に、ライフワークコンサルの先生が関西から東京に来るというので、縁のある人とお茶をしたんですね。ライフワークやお金の悩みについて語れる人って、身近にはいないじゃないですか。その時、「オンラインで教えるという方法もありますよ~」という話が出ました。家に帰ってパソコンを開いたら、アメブロ経由でオンライン指導の依頼が来ていて。

―その生徒さんはアメブロつながりですか?

生徒さんのお母様と私は繋がってないのですが、共通の知人である塾の先生Aさんを通じて、お母様が私を知った感じです。数学がよくできるお嬢様の先取り学習をするための、先生を探されていました。メッセージには「ブログも読ませていただいています」と書かれていて、冷や汗が3リットル出ました(笑)。「えっ!オンラインって今日お茶したときに話題に出たやん!」。嬉しいというより硬直しました。

―引き寄せですね(笑)。

普通の神経の持ち主なら喜ぶのかもしれないけど、私は怖くなったんです。ピシッと固まってしまって。そして、お茶したメンバーのfacebookグループに、「今日まさにこんな依頼がありました」と投稿して、「zoomは使ったことがないし、不安で仕方がない」と相談したんですね。そうしたら、成功した起業家の方から「zoomができないからって甘えちゃいけない」とか厳しいことを言われて、一気に緊張が増しました。できる人の厳しいアドバイスには要注意です。

―未知のことは不安がつきものですよね。

たまたまその数日後、タッチフォーヘルスの個人セッションの予約を入れていたので、「厳しいことを言われて硬直した。私は本当に生徒を教えられるのか、苦しい、死にそうだ」と相談しました。実際死にそうだったんですよ。自信なんて全然なくて。zoomの練習もしなきゃいけないとなって、いっぱいいっぱいになったんですね。でもその時のセラピストは、「実力をつけるために厳しすぎる人から離れる」という身体からのメッセージを引き出してくれました。そこで、厳しい起業家さんに相談するのをやめて、優しいお友達を頼ることにしました。

―「厳しすぎる人から離れる」というのは身体からのメッセージだったわけですね。

よくあるじゃないですか、「厳しい人についていって実力を磨く」みたいな世間のイメージが。それとは逆でホッとしたから、よく覚えているんですが。もちろん、叱咤激励されて鍛えられる人も世の中にはいるんでしょうけど、私は違う。それが言語化されたような気持ちになりました。最初にFacebookで厳しいことを言われたときに、凍り付いて悪夢も見たんです。

―相当ストレスなんですね。

ただでさえ、未知のことをするのは大変なのに、「できないことに甘えちゃいけない」なんて言われたら、逃げ場がありませんね。そのやり方は、私に相応しくない。

―そのやり方で頑張っていても限界がありますよね。

すべてのHSPに当てはまるかどうかわかりませんが、厳しい人に頑張ってついていってうまくいくHSPはあんまりいない気がします。

―そうですね。基本的に自分の実力がちゃんと発揮できる状況って、やはりリラックスできる状況だと思います。厳しいというか、合わないと思う時点で、何かが違うんだと思うんですね。ただ厳しいっていうだけじゃなくて、例えば言い方がキツかったり、根本的な価値観が違ったり・・・。

その人は、ガツガツ系で頑張れる人だったと。でもそのやり方は私には合わないので。

―その人はそのやり方で成功できたかもしれない。だけど、その方法論が他の人にも使えるかどうかはわからないし。逆にそれを内面化して「私はこうしなきゃいけない」みたいに思ってしまうのは危険ですね。

危険だし、しばしば起こることですね。HSPは育ち方の関係で、「もっと頑張らなきゃ」と思いやすいので、その手の話を真に受けやすい。「まだ駄目なんだ」とずっと思いこんでしまいます。毎日繰り返して思うと、すごく心の奥まで浸透しやすい。私は新しい方法、zoomを使ったことがなかったので自信がなくて。そういうときに染まりやすいんですね。たまたまタッチフォーヘルスを受けられて、厳しい人と距離をおいて優しい人に頼ったのは、我ながら賢かったと思います。

―zoomの練習はその優しい人たちとおこなったんですか?

そうです。知り合いの塾の先生Aさんと、私のブログを愛読している親子さんと、さらに別のお友達にも頼んで、合計5回練習しました。

―当時はそれほどメジャーなツールではなかったですよね。

当時は一人暮らしをしていて、通信環境があまりよくなかったんです。固定費を削りたかったからwi-fiを引かずに、スマホの少ないギガでやってたんですよ。zoomなら軽いから何とかなると聞き、トラブル時の緊急連絡用にラインでもやり取りができるようにして。「zoomとラインの2本立てでいくといいですよ」と教えてくれたのは、先にオンライン授業を取り入れていたAさんです。そういう入れ知恵をしてくれた人もいた。弱音を吐くとお友達が「先生かわいいから大丈夫だよ」と慰められながら練習しました。ありがたいやらほっとするやら。

―自分を甘やかしてくれるような。

そんなこんなで、塾講師をしながら、その生徒さん一人をオンラインで試行錯誤しながら教えていきました。

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▲食事中も教科書と参考書で自主学習。

大手塾の看板の下で働く講師から個人名でのお仕事へ

―塾講師をするのと、個人で契約して指導を行うのは勝手が異なりましたか。

2019年の段階では、オンライン授業は全然メジャーじゃなかったのです。オンライン指導の経験がないことを先方に正直に告白しました。下手に期待されると怖いから(笑)。料金を提示するのも、命を削られるほど嫌でした。今なら普通に提示できるのですが、当時は、「どうしよう、ぼったくりだと思われたらどうしよう。怒られたらどうしよう」とすごく怖かった。「やっぱり○○円(値下げ)でいいです、いっそタダでもいいです!」と追伸のメールを送ろうとする自分を抑えて。自分の中での葛藤がすごくありましたね。料金を提示してから、先方の返信がくるまで時間がかかったんです。たぶんその間に相場を調べられたんだと思います。「もしかして、怒ってる?」とすごく怖かった。でも、怒っていなかった(笑)。

―2019年は、塾講師を継続しながら、サブでオンライン指導をやっていたわけですね。

大体週1で教えていました。ご依頼の親子さんは、私の雰囲気を気に入ってくれたらしく、最初のうち不慣れで見苦しいところや、バッテリー切れで画面が真っ黒になったりしても許容してくださいました。とはいえ、一回ごとに改善することは忘れなかった。

―そういうお人柄を求めてる人が寄ってくるんでしょうね。運というか、実力の一つと思いますけど。そういう魅力があるんでしょうね、ホモルーデンスさんの中に。助けてくれた塾の先生にしても、素直に助けを求めるから、何とかしてあげたいという気持ちにつながっているんでしょうね。お金や名声のためとか、よこしまな気持ちでやってるわけではなくて、依頼者の方にどうやって良い授業ができるかということを純粋に考えているのが伝わったのではないかと思います。

そうかもしれませんね。

これからの未来像、自分軸で考える働き方

―2020年に新型コロナが流行して、図らずも、オンライン教育というものが世間一般に普及していくことになったわけですけれど、時代を先取りしていましたね。

たまたまですね。だからと言って手広く教えているわけではないんですが。数名の生徒を受け持っています。

―ご新規の生徒さんは、やはりブログや口コミを介して?

そうですね。ブログとFB経由です。ご同業の先生(英語)からの紹介もあります。私の教え方は教科書に忠実で基礎を大切にする、良く言えばオーソドックス、悪く言えば意外性がないのですが、それが良いということで。あとは、私と教育の背景が似ている方が来ました。公立中高から国立志望という。

―今は、大募集という感じで生徒数を増やしたい、という感じではなく、ホモルーデンスさんのスタイルを好んでくれる、少数の相性の良い人と契約している感じなんですね。

生徒さんを増やしたいという気持ちはあるんですよ。一人暮らしもしたいし。とは思うけど、予習や色々な準備のサイクルを回していくには、いきなり大募集じゃなくて、ちょっとずつ増やしていく必要があります。

―最初はzoomを始めるのだって、練習や準備が必要ですもんね。1人から2人、2人から3人という形でちょっとずつ増やしていく。いきなり1人から10人へ増やすのは難しいし、それだとクオリティも下がってしまって、自分が大変になってしまいますよね。

がむしゃらに数をこなせないので。40代も後半だし、20代のように勢いだけで働くようなことはできません。そして、何といっても消耗しやすい気質なので。そう考えると、どこまで広げていいのかは悩みます。多分、自分で言うのも何ですが、大募集したらそれなりにご依頼が来るような気はします。でも、クオリティを保ちつつ生徒さん増やすのは、工夫がいりますね。

―一度受け入れると、断ったりするのも難しいですしね。

それはそうですね。私の仕事の場合、教えるとなると少なくとも半年、年単位の契約になりますから。1~2年が当たり前ですね。それを考えたら、有名塾で働いているときの方が、悩みは少なかった。自分の責任じゃないから。会社の取り分がすごく多かったけど、文句を言う気にもならないくらい楽だった。保護者とのやり取りも上司がしてくれるし、最終責任もシビアに問われないし。今は、いつも自分を前面に出して生徒や保護者に対峙するのが負担に感じるときもありますね。

―現状では、そういった負担も考えて、今の人数が適切だと考えているということですね。

それも、私が保護者や生徒さんに対して過剰に背負いこんでいる部分を降ろせば、変わるのかもしれません。あと、仕事をもっとシステム化、自動化したいと思います。プリントやスライドをいつも一から作るのではなく、うまく使いまわすとか。

―例えばオンライン講師の会社などに登録するというのは考えられますか?その場合だと生徒を選べないということもありますね。

ただ、私の場合、生徒さんにそんなに注文があるわけじゃないんですよ。相性が合わない生徒さんを教えるということは、塾でもあまりなかった。

―今後そういった特定の教科専門のオンラインの講師は増えていきそうですね。

増えていくと思います。対面授業の制約が増えました。そして、身近に合う先生がいない、求める教育を受けられない場合に、遠方の良い先生に教わりたいというニーズがあります。

―私も勉強になり、刺激になりました。どうもありがとうございました。

聞き手・文:nagisa

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