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ブータンの幸福度が下がっているのは本当か?~インターネットの普及~


こんにちは⚑⁎∗

今日は大学生のときに書いた卒論を転載します✍️

ただ長いので、言いたいことがまとまっている結論部分のみとします

タイトル

21世紀のブータンにおける情報化の影響と人々の意識
-インターネットの普及と外国文化の流入をめぐって-

それではどうぞ📖´-


【結論】

本論文の目的は、情報化という現象によってブータンの社会やそこに住む人々にどのような変化が生じているのか、という問いに対する答えを出すことであった。

長らく鎖国に近い体制を保っていた歴史を持つブータンは、1999年のテレビ・インターネットの解禁を契機として世界で最も遅く、そして20年という短期間で情報化の道を歩んできた。

その過程は諸外国とは異なるものであった。

郵便ネットワークや自動車道路網の整備、固定電話の普及に先行して、スマートフォンの普及が進みインターネットへのアクセスが自由になった。

北部の僻地では、固定電話を待たずに携帯電話、自動車道の開通を待たずに空からのヘリによる輸送が行われている。まさにリープフロッグ型発展と呼べる逆転現象が起こっていた。

このブータン社会の事例は、情報社会の前段階として工業社会が成り立つという流れは絶対的なものではないことを示した。

さらに多くの地域が文字を持たない文化圏であったということも重要な留意点である。


情報化によってもたらされた代表的な変化としては、若い世代を中心に海外のポップカルチャーが浸透したこと、街で仲間と夜遊びをするという習慣が定着したことが挙げられる。

世界中の都市でみられる光景が今やブータンでも同様にみられるようになったということである。

インターネットは海外のポップカルチャーを吸収する窓口であり、若者を都市へと惹きつける装置でもあると言えるだろう。

そして、若い世代を中心に海外志向が高まっていることも、海外の情報が入ってくるようになり、より多くのことを知ることができるようになった結果である。

さらに恋愛のツールとしてFacebookなどのソーシャルメディアが大きな役割を果たすようになってきているということも情報化による大きな変化と言える。

 人々が外来の情報に触れることによって、宗教的に男根崇拝の文化が根付いていたブータンにおいて男根像に対し羞恥心を感じ始めるようになったということも注目すべき変化である。

   従来のブータンにおける価値観ではネガティブなイメージは想起されなかったということから、海外と照らし合わせたときに自国の特異性を否定的な観点から捉えることが多くなったと考えられる。

 一方で、アンケート調査では伝統文化や国家、宗教や信仰などの項目に対してほとんどの人が重要であると答え、肯定的な結果が得られた。

男根像の事例にように一部の側面では、自国の独自性に対してネガティブになっていることもあるが、基本的にはいくら情報化が進もうと伝統的な価値観への信頼は揺るがないということがこのアンケート調査によって判った。

 また、科学技術やインターネット環境、インターネットの情報、テレビやラジオ、スマホやコンピュータに対してもほとんどの人が重要であると答え、肯定的な結果が出た。

   テクノロジーによって、多くの恩恵、ポジティブな影響がもたらされているということの結果であると考えられる。

   当初は、ネガティブな影響に注目が集まると予測していたが、それとは反対の結果となった。

   これは、ブータンの人々が情報技術を糾弾するのではなく、正しく使い、より良い社会の構築に役立てようという積極的な姿勢、態度をもっていることの証と言えるだろう。

 また、興味深かったのが西洋文化に対して、「重要ではない」・「あまり重要ではない」と答えた人の割合が68.8%、海外のポップカルチャーに対して「重要ではない」・「あまり重要ではない」と答えた人の割合が73.3%にまで上ったことである。

    これは、文献や映画から得られたイメージと大きく異なっていた。

   アンケート調査の回答者の出身地の傾向によっても若干の偏りはあるかもしれないが、これは意外な結果であった。

   テクノロジーは重要であるが、西洋の文化または海外のポップカルチャーにあまり重点を置いていないということが言えるだろう。

   加えて先ほどの伝統的な価値観への信頼は固いという結果も踏まえると、ブータンはテクノロジーを取り入れつつ、ナショナルな価値観は守っていくという姿勢が見えてきた。

   5段階の幸福度の調査では「幸せ」・「とても幸せ」と答えた人の割合が77.8%に上った。

   対して「あまり幸せではない」と答えた人は、2.2%であり、「幸せではない」と答えた人は皆無であった。

    情報化によって幸福度が急落したと語る言説が昨今出回っているが、本研究を通して実態としては必ずしもそうは言えないということが判った。

   ブータンに激しい変化が起きていることは事実であるが、人々はテクノロジーとうまく折り合いをつけながら、その恩恵を享受している。
   
    国内外でなにが起こっているのかをリアルタイムで知ることができるようになったり、クリティカルな思考を持ち合わせるようになったりと、いくつものメリットも受け取っている。

    ブータンの人々は、情報化によってもたらされたテクノロジーや外来の価値観、考え方との向き合い方を模索しながらも、変化の激しい現代を逞しく生きているということが本研究を通して明らかになった。


   今後ブータンの社会は、ますます情報テクノロジーによって世界との繋がりを強め、その距離はさらに縮まってくると考えられる。

   ただ、テクノロジーによって支配されるのではなく、テクノロジーを上手く使いこなしていくのではないかと予測する。
  
   また、海外の文化に受動的に染まっていくということもないだろう。

    あくまでも主体的に取り入れるべきものを選択し、同時に伝統的な価値観を大切に守りながら、情報化社会の荒波をかいくぐっていくのではないだろうか。

    本研究を通して得られた情報化の推移を日本に落とし込んで考えたとき、我々自身も主体的な姿勢というものが、この情報化時代に求められるのでないかと考えた。

   今や、情報化社会の真只中にいるという点では、日本もブータンも同じなのである。

    現在に至るまでの発展過程に大きな相違点はあるとしても、互いに自由な通信ができるというのが事実である。現に本論文のアンケート調査もFacebookを用いて、ブータン人の生の声を集めた。

    まさに、この論文自体が情報化という現象のうえに成り立っているというわけである。

   テクノロジーの恩恵を受けつつ、そのメリットを最大限活用し、これからの世界の情報化という現象を考える手立てとしていきたい。


さて いかがだったでしょうか

この卒論の裏テーマとして、
"ブータンは情報化によって幸福度が下がった"
という言説は本当かどうか確かめるということを設定していました。

実際には、少なからず文化や幸福度に負の影響もあるとおもいますが、マイナスだけではない、というのが結論です。

情報化によっていくつものプラスが生じていることも事実です。

メディアリテラシーの向上、情報の貧困の改善、クリティカルな思考の醸成、文化の発信・拡散・振興の増進などなど、、

大きな恩恵を享受していることがわかります。

本文にも書いた通り、変化はあれど幸福だと答えた人は大きな割合を占めていました。

(このFacebookを用いたアンケート調査は2021年に実施したものです)

裏テーマとして設定した言説に対するささやかな
反論を込めた卒論でしたが、

結果的には ブータンという国の逞しさ、したたかさを強く感じることができました。

長くなりましたが、読んでくださりありがとうございました🙇‍♂️

それでは また次回👋

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