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美味しい角度

サンドイッチの尖った部分をかじる時に幸せを感じる。

単純な味覚の話なら中心部に近いほうが具材が詰まっていて美味しいに決まっている。理想的には角の先端まで卵フィリングが行き届いていてほしいが、スカスカで空気しかサンドされていない状態であってもあそこには幸福の気配がたしかにある。

角度でいえばやはり90度よりも45度のほうがいい。サンドイッチだとそれより小さい角度は想定しにくいのでピザについて考えてみよう。8等分で45度、12等分なら30度。チーズの重みで垂れ下がった30度の切先をすくい上げるように頬張るのは至福のひとときである。

30度より細くなると棒状に近づいていく。棒にはそれほど魅力を感じない。角度だけならチョココロネも30度くらいだが、あの螺旋の先に幸せは待っていない。むしろ確実にチョコクリームが行き届いておらず、不幸が上回ってしまう。

どうやら僕は歯切れの体験を求めているようだ。前歯と犬歯で平べったい食べ物をサクッと噛み切りたい欲求がある。厚さはそこそこで、幅は広い方がいい。30度という角度は切断面の幅を調節するのに最適な角度なのだと思う。

板チョコ芋の天ぷらなど平べったい食べ物はたくさんあるが、三角形であることは少ない。何かないかと探しているうちに見つけたのが北海道の地図だった。あれはどこからかじっても良い。幸せに満ち溢れている。