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体育の思い出

「いい汗をかいた」なんて言う人とは身体の構造が違うのだと思う。汗に良い思い出は一つもない。体育の成績はいつも5段階中の2。背が低いと何もかも不利な気がして、手を抜いたつもりはないが前向きではなかった。

体操服に着替えるのが面倒だし、汚れるし、疲れるし、ボールが当たると痛いしで憂鬱だった。全教科で最もチームワークを求められる科目でもあり、仲間の足を引っ張ることの罪深さを嫌というほど思い知らされる。

体育祭が近づくと授業内容が組体操の練習に変わった。当然、小柄な僕は4段タワーのてっぺんになる。地表では「いてえよ」「そっち下げろよ」などの怒号が飛び交う中、身長の三倍以上の高さから世界を見下ろす。昭和ヤバい。

テニスは好きだった。ラケットが大きいので空振りしにくい。力がなくても何とかなるので他の球技よりは試合になる。あるとき、デュースの状況で僕がポイントを取ると、傍で見ていた友人が突然こう言った。

アドバンテージ、岡!


岡とはエースをねらえ!の主人公のことだ。

当時よりさらに昔のアニメで、僕は観ていたことすら忘れていたが、友人の声で思いがけず記憶の扉が開いた。ラリー中の熱いBGMが脳内再生されてテンション爆上がりだった。数日間、テニスのプレイ中は楽しすぎて笑いが止まらない身体になっていた。

それでも「いい汗かいた」とは思わないかな。