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友情と信頼

高校2年のときに知り合ったクラスメイトがいた。

たまたま席が近くて、ツッコミ気質だった僕とボケたがりの彼は馬が合って親しくなった。ある日、他愛もない話の流れで気になっている女子がいると聞き、それをうっかり別のクラスメイトに話してしまった。

完全に僕が悪い。失敗の原因は2つある。

ひとつは機密性を見誤ったこと。周りに人がいない状況で神妙な顔をして「実は好きな子がいるんだ」みたいに話してくれたら僕も口外しなかったと思う。

もうひとつは秘密を漏らした相手と彼が親友だと思っていたこと。二人は前年からよく一緒に行動していて、僕が聞かされるような話なら当然二人の間でも共有されているはずだと勝手に決めつけていた。

彼らが親友だったのか、親友は秘密を共有するものなのかは定かではない。友情がわからないのに親友のなんたるかがわかるはずもない。確かなのは僕が秘密だけでなく、信頼をも彼と共有できていなかったことだ。

僕にだけ向けられていた信頼をそうとは知らずに裏切った。信頼関係とは自分が相手を信頼していることを相手が承知していて、相手からも自分が信頼されていることを認識したときに成立する。信頼し合うだけでは十分でなく、それを共有する必要があるのだ。

信じたり裏切られたりしてお互いの信頼の度合いを確かめ合う中で、友情ってやつは育まれるのかもしれない。

しかし、それから彼が話しかけてくることはなかった。ボケがなければツッコミも入れようがない。その後、なぜか元サヤ(?)に戻った二人を見て「友情わからん!」と思ったのだった。

つづく