駆け出し百人一首(1)いとせめて恋しきときはむばたまの夜の衣を返してぞ着る(小野小町)
いとせめて 恋(こひ)しきときは むばたまの 夜(よる)の衣(ころも)を 返(かへ)してぞ着(き)る
古今和歌集 恋二 554
訳:とっても切実にあなたを恋しく思う夜は、“好きな人が夢に出てくる”と噂のおまじないに頼って、夜着を裏返して寝るんだ。
I feel so lonely that I'm wearing nignt clothes inside out to see you in my dream.
かわいらしくてたまらない恋の歌。古今和歌集には、次の二首と並んで掲載され、さながら小野小町 夢三部作という感じ。
・思ひつつ寝ればや人の見えつらん夢と知りせば覚めざらましを(552)
・うたたねに恋しき人を見てしより夢てふ物は頼み初めてき(553)
和歌の修辞法
むばたまの:枕詞で「夜」「黒」「髪」「夢」などにかかる。うばたまの、ぬばたまの、とも。
文法事項
返してぞ着る:係り結び。「ぞ」(強意)により「着る」(カ行上一段)が連体形に。
古文単語
せめて:切実に、痛切に。「強引に」「はなはだしく」「〜だけでも」という意味になることもある。副詞。
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