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「そぞろさむ地すべり残る鞍馬寺」ほか自作俳句(『松の花』2021年1月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(10月末投稿分)

寺出でて新米ぬくきおにぎり屋
雲海の晴れゆき秋の琵琶湖見ゆ
納経の婦人の背すぢ菊日和
千躰の地蔵に揺るる尾花かな
そぞろさむ地すべり残る鞍馬寺

吟行というわけでもありませんが、10月下旬に関西を巡りました。そのときの句を投稿したのが今号です。全体の六席に選んでいただきました!(喜)

寺出でて新米ぬくきおにぎり屋→慈照寺銀閣を出たところにある「御米司ふみや」さんの思い出です。初句を「古寺出でて」としていたのが添削され、「寺出でて」となりました。

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雲海の晴れゆき秋の琵琶湖見ゆ→延暦寺会館に泊まった朝、見たものです。日の出を見ようとしたところ、ヘッダーの写真の通りの大雲海でした。時間が経つにつれ、晴れていきました。

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納経の婦人の背すぢ菊日和→琵琶湖内の竹生島(ちくぶじま)の宝厳寺にて。西国三十三所の納経帳を持ち、ただ参拝するだけでなく写経を納めていた彼女の凛とした背中を見て、どのような祈りがあるのか思いを馳せました。

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千躰の地蔵に揺るる尾花かな→京都の天橋立の近くの山のなかに、千躰地蔵という史跡があります。詳細な由来は分からないようですが、朽ちかけた無数の石仏・石塔・板碑は、古人の祈りをひしひしと感じさせます。

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そぞろさむ地すべり残る鞍馬寺→平成30年の台風21号などで、大きな被害を受けた鞍馬寺。地滑りなどの跡が生々しく残っています。この句は、優秀句に選んでいただけて、主宰が鑑賞文を書いてくださいました。

京都市北部にある鞍馬寺の山腹に鞍馬寺があり、牛若丸の修行の地として能「鞍馬天狗」で知られる。寺の奥は、天狗が住むを思わせる小暗さがあり、夏でも冷やりとする感じがある。十月に行けば、そぞろ寒さを感じる場所である。その場所に地すべりの跡があったのだ。京阪地域にも昨年は、地震、台風、豪雨があった。平安京の昔よりの北方鎮護と京人の福徳の信仰の地が、地球温暖化のためかもしれぬ地すべりを生ずる地になっている。そぞろ寒さだけでない背筋の寒さも感じさせる。

用紙に書いた中で、掲載から漏れた句が以下です。

叡山や知る人もなき秋の空
人少な身に沁みわたる横川かな
祈り来し先人の名や竹生島

気に入った句があれば、教えてくださったら嬉しいです。

「薫風集」掲載3句

こちらも一席に選んでいただきました。今月発表分は絶好調でしたね……!

秋黴雨(あきついり)チンドン屋から流行歌
闖入(ちんにゅう)の赤蜻蛉 灯(ひ)に停まりをり
友異動かりがね寒き夕の帰路

「秋黴雨チンドン屋から流行歌」は、浅草橋の駅前で、Official髭男dismのPretenderを奏でるチンドン屋さんに会った思い出の句です。「そんなのも弾くんだ!」っていう……
「闖入の赤とんぼ灯に停まりをり」は、塾の授業についての句です。網戸のない窓で換気しながら授業をするので、いろいろ入ってくるんですよ……(笑)
優秀句に選んでいただいたのは、「友異動かりがね寒き夕の帰路」でした。

掲載から漏れたのが以下の2句です。

夢二の絵模写する夜の邯鄲や
宵闇や今日も死なずに生きてゐた

こちらについても、もし気に入ってくださった句があれば、教えてくださいませ。

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