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「消毒の机に冬の小さき蠅」ほか自作俳句(『松の花』2021年3月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(12月末投稿分)

寒風や一席空けの落語会
再検査せよとの通知もがり笛
消毒の机に冬の小さき蝿
よちよちと着ぶくれの子は鳩を追ひ
王朝の恋を紐解く聖夜かな

寒風や一席空けの落語会→12/5、日比谷図書文化館で開かれた桂春蝶さんの落語会を訪ねました。感染対策のため、一席空けで、常時換気。実際に吹きすさぶ寒風以上に、心は寒々しさを感じてしまいます。噺家さんもこの空気の客席を笑わせるのは、さぞ困難だったでしょう。

再検査せよとの通知もがり笛→健康診断で、再検査の項目がありました。「癌かもしれない」と考えたときの心境を虎落笛の音に託します。

王朝の恋を紐解く聖夜かな→職業柄、クリスマスイブも冬期講習でございます(苦笑) 高1・2の講座は『源氏物語』を読みます。その相性がおもしろくて一句。

なお、今月は第6席に選んでいただきました!(嬉しい) 「松の花集」で上位の場合、主宰が文章を書いてくださいます。

消毒の机に冬の小(ち)さき蝿:入念に机上を消毒する景は、やはり新型コロナウイルス対策のためのであろう。その消毒したばかりの机上に、そんなに素早い動きでもない冬の蝿が来て止まった。消毒薬は蝿には効かないのかと、やや心もとない感じにもなる。小さい一点の蝿の大きな存在感の句である。実はわが家でも、一匹の冬の蝿が元気に飛び回っていたのだが、大寒になると消えてしまった。凍死したのかもしれない。この句の蝿も、冬を超すことはできなかったかもしれないが、コロナウイルスは、ますます猛威をふるう。

同人作品「薫風集」掲載3句

歳暮の酒四百年の蔵を嘗む
会はざるを託ち託ちの賀状書き
去年今年芭蕉を読みて越えてけり

コロナ禍の情景として、〈会はざるを託ち託ちの賀状書き〉を作りました。〈去年今年芭蕉を読みて越えてけり〉の季語、「去年今年(こぞことし)」は、年が去り、年が来る、その時の流れに対する感慨を表す季語です。『奥の細道』の冒頭、「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」と記した芭蕉と響き合う言葉だと思いました。

投句するも未掲載の句

鈍色の空の重きに石蕗の花
テラス席コートのままの老夫婦
散り積もる山茶花ひとの靴のあと
おとしだま姪へのプリキュア袋かな
よい年になりますやうに冬日和

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その他

この号では、嬉しいことが2つありました。1つは、鑑賞欄で私の句〈友異動かりがね寒き夕の帰路〉に触れてくださった方がいたこと。

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また、主宰が毎月、優秀句を数十選出してくださるのですが、その2020年分から、会員が気に入った句を投票する企画(松露賞)がありました。

その22位に、私の〈雪吊りやほらまた一つ縄の降る〉という句が選ばれたのも嬉しいことでした。


気になった句、気に入った句などあれば、ぜひコメントでお聞かせください^^

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