マガジンのカバー画像

古典文学に探る季語の源流(全12回の連載)

13
俳句結社「松の花」の結社誌に連載しているコラム『古典文学に探る季語の源流』をnoteにも転載しております。2020年は奇数月の号、2021年は偶数月の号に掲載した記事を合わせ、毎… もっと読む
運営しているクリエイター

#朧月

古典文学に見る季語の源流 第四回「朧月」「朧月夜」

古典文学に見る季語の源流 第四回「朧月」「朧月夜」

春爛漫の四月号(注:本コラムは結社誌四月号に掲載)である。今回は「朧月(おぼろづき)」を見てみよう。

現存最古の歌集、『万葉集』にはこの語は登場しない。春の月を詠んだ和歌も、

春霞たなびく今日の夕月夜
清く照るらむ高松の野に

(巻十、読人しらず)

と照り輝く月を詠んでいる。唯一、

うちなびく春を近みか
ぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ

(巻二十、甘南備伊香(かんなびのいかご))

とい

もっとみる