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古典文学に探る季語の源流(全12回の連載)

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俳句結社「松の花」の結社誌に連載しているコラム『古典文学に探る季語の源流』をnoteにも転載しております。2020年は奇数月の号、2021年は偶数月の号に掲載した記事を合わせ、毎… もっと読む
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2021年3月の記事一覧

古典文学に見る季語の源流 第三回「帰る雁」「山笑ふ」

古典文学に見る季語の源流 第三回「帰る雁」「山笑ふ」

春の季語「帰る雁」は、俳諧の式目・作法を初めて印刷・公刊した『はなひ草』(一六三六年)にもすでに取り上げられている。和歌の世界では古くから馴染み深いテーマであった。

雁は、『万葉集』では主に「雁が音」という形で登場する。昔の人々は、動物の鳴き声を妻恋いと解釈し、切ないものだと受け止めていた。万葉集に詠まれるのは、ほとんどが秋の雁の哀しげな鳴き声だ。

春の雁として注目されるのは、巻十九、『万葉集

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