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■補足:ウェイド&ウィアリンゴ期の後の『ファンタスティック・フォー』の流れ

 「マーベル グラフィックノベル・コレクション」で刊行された、マーク・ウェイド&マイク・ウィアリンゴ期の『ファンタスティック・フォー』の後の、J・マイケル・ストラジンスキー期の『ファンタスティック・フォー』誌の流れについて、補足するエントリ(補足しといてなんだが、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、ストラジンスキー期の『ファンタスティック・フォー』の刊行予定はない)。

 さて、J・マイケル・ストラジンスキーは、『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#524(5/2005)で連載を終えたウェイド&ウィアリンゴに代わり、『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#527(6/2005)から#541(2/2007))まで、1年半ほどの期間、ライターを務めた。

 ちなみにウェイドからストラジンスキーに移る間の、『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#525-526の2号分は、カール・ケセル&トム・グルメットという実力派コンビがゲストで参加し、小気味よい短編を描いている。

 が、こちらは全2話ということで、なかなか単行本に収録されず、発表から3年経った後に、ストラジンスキーの後任のドウェイン・マクダフィー期の『ファンタスティック・フォー』誌の単行本、『ファンタスティック・フォー:ビギニング・オブ・ジエンド』にオマケで収録された(マクダフィー期の『ファンタスティック・フォー』は、諸事情により単行本2冊にまとめるには微妙に話数が足りなかったので、未収録話を足すにはちょうどよかったのだろう)。

 こちらがその単行本。収録作品は『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#551-553(1-3/2008)の3話と、前述の#525-526。なお、マクダフィーは、本書に収録されたストーリーをもって『ファンタスティック・フォー』誌のライターを降り、続く#554からは、マーク・ミラーが新ライターとなった(中々に壮観な面子ではある)。


 話を戻す。

 で、J・マイケル・ストラジンスキーの『ファンタスティック・フォー』は、単行本『ファンタスティック・フォー バイ・J・マイケル・ストラジンスキー Vol. 1』にまとめられている(待てよ、わざわざタイトルに「J・マイケル・ストラジンスキー」を冠したお陰で、カール・ケセルのゲスト担当回が収録できなくなったのか……?)。

 ちなみに、「Vol. 1」と冠されてはいるものの、「Vol. 2」は存在しない(適当過ぎる)。

 こちらは『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#527-532(7-12/2005)を収録。

 過去の冒険で生じた賠償のために資金難にあえぐファンタスティック・フォー、その一方でシングが想定外の資産を持っていることが判明し、絵にかいたような成金生活を始める。他方、児童相談所がファンタスティック・フォーの拠点は児童の安全上問題があると警告……といった、「超科学一家に起きるいつもの日常」が繰り広げられる一方、ミスター・ファンタスティックは、かつてファンタスティック・フォーに超能力を与えた「事故」を再現し、超能力者の軍団を創設しようという政府の研究計画に参加させられてしまう。しかし、この研究の過程で、リードは彼らに超能力を与えた未知の宇宙線こそは、何者かが意図をもって発した“メッセージ”であることを突き止める……といった具合の、「ヒーローたちの地の足の着いた日常」と「ヒーローのオリジンを再定義」、そして明かされた真実から展開する大事件という、いかにもストラジンスキー的なテイストのお話。


 で、この続きは単行本『ファンタスティック・フォー:ザ・ライフ・ファンタスティック』に収録。

 収録内容は『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#533-535(1-4/2006)と、同時期に刊行された特別号『ファンタスティック・フォー:ウェディング・スペシャル』#1(1/2006)、『ファンタスティック・フォー・スペシャル』#1(2/2006)、『ファンタスティック・フォー:ア・デス・イン・ザ・ファミリー』#1(7/2006)。

 ……ちなみに、3本収録されている特別号のライターは、2本はカール・ケセルで、残りがドウェイン・マクダフィー。多分、そのお陰で、この単行本には「バイ・J・マイケル・ストラジンスキー」という文言が冠されてはいない(そもそも前巻にワザワザ「バイ・J・マイケル・ストラジンスキー」なんて付けずに、カール・ケセルの#525-526も入れてればよかったんじゃね?)。

 ちなみに、この巻に収録されている、ストラジンスキーによる『ファンタスティック・フォー』#533-535は、テロ組織ヒドラが秘匿していたガンマ爆弾の解体に失敗したブルース・バナー博士が、巨大なグレイハルクに変じてラスベガスを廃墟に変え、ファンタスティック・フォーに辛うじて制止される……という、中々に重い話で、あんまり「ザ・ライフ・ファンタスティック」的な話ではない(というか、単行本タイトルの「ザ・ライフ・ファンタスティック」は、『ファンタスティック・フォー:ウェディング・スペシャル』に掲載された話のサブタイトル)。

 ちなみにこのハルクのラスベガス壊滅事件の後、ミスター・ファンタスティックやアイアンマン、ドクター・ストレンジらの所属する秘密結社「イルミナティ」は、ハルクの存在を危険視し、バナー博士を騙して恒星間移動用ロケットに乗せ、太陽系外の平穏な惑星めがけて打ち出すが、事故によりロケットは弱肉強食の惑星サカーに墜落してしまう……といった具合に、この話から2006年の『インクレディブル・ハルク』誌の長編ストーリーライン「プラネット・ハルク」へ繋がっていくこととなる。

 上記は、「プラネット・ハルク」編の全話を収録した、400ページ強の分厚い単行本で、しかもKindle Unlimitedだと無料で読めるという大盤振る舞いな一冊。

 で、この『プラネット・ハルク』は、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第46、63号の2分冊で刊行予定。ただし『プラネット・ハルク』の続編にして完結編である、『ワールド・ウォー・ハルク』は刊行予定はない(何故だ)。

 ついでに言えば、『プラネット・ハルク』は、2017年にヴィレッジブックスから、『プラネット・ハルク:天の巻』、『プラネット・ハルク:地の巻』の全2巻で邦訳版が発売済みである(ヴィレッジブックスは元々2013年に完結編である『ワールド・ウォー・ハルク』を単独で刊行していたのだが、2017年公開の映画『マイティ・ソー:バトルロイヤル』が、『プラネット・ハルク』から多少のネタを拾っていたことから、あらためて刊行に踏み切った、という経緯がある)。


 話を戻すが、『ザ・ライフ・ファンタスティック』に続くストラジンスキーの『ファンタスティック・フォー』の物語は、『ファンタスティック・フォー』の単行本には続かない。

 その、これ以降の『ファンタスティック・フォー』の物語は、2006~2007年にかけてマーベル・コミックス社が社をあげて展開した大型イベント「シビル・ウォー」とタイインしており、『シビル・ウォー』の単行本として刊行されることになったためである。

 まずは、『シビル・ウォー』の前日譚を集めた単行本、『ロード・トゥ・シビル・ウォー』。こちらには、『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#536-537(5-6/2006)と、特別号の『ニューアベンジャーズ:イルミナティ』#1(5/2006)、それに『アメイジング・スパイダーマン』#529-531(4-6/2006)を収録。ちなみにストラジンスキーは、『アメイジング・スパイダーマン』のライターでもあり、実質この本は8割方ストラジンスキーの作品で構成されている。

 この単行本に収録されている『ファンタスティック・フォー』の話は、ネバダ州の砂漠にマイティ・ソーの愛用していた魔法のハンマー「ムジョルニア」が墜落し、ハンマーを手に入れようとするドクター・ドゥームの企みを、ファンタスティック・フォーが阻止しようとする、というもの。

 ていうか、この間も触れたが、この話は実質、この後ストラジンスキーが手掛ける『ソー(vol.3)』誌のプレリュードともいえる内容である。

 この『ロード・トゥ・シビル・ウォー』は、ヴィレッジブックスから翻訳版も刊行されているので、興味のある方、ストラジンスキーの『ファンタスティック・フォー』と『アメイジング・スパイダーマン』が日本語で読みたい方は、購入するのも良いだろう。


 ほんでもって、これに続く話も、『シビル・ウォー』の単行本に収録されている。

 それがこの『シビル・ウォー:ファンタスティック・フォー』。収録内容は『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#538-543(8/2006-5/2007)の全6話。『シビル・ウォー』において、「超人登録法」の推進派であるアイアンマン(トニー・スターク)に協力することとなったミスター・ファンタスティックだが、その結果、妻のインビジブルウーマンとの関係が険悪となる。その一方で、ヒューマントーチは超人の能力の暴走を危ぶんだ暴徒にリンチをされて入院、傷心のシングはチームを離れ、放浪の旅に出る……といった具合の、「シビル・ウォー」事件によってファンタスティック・フォーという家族の関係に大きな変化が生じていく様を描いた物語。

 こちらもまあ、ヴィレッジブックスから翻訳版が出ているので、興味のある方は古書店などで探してみると良いだろう。

 ちなみにストラジンスキーは、「シビル・ウォー」とのタイイン途中の、『ファンタスティック・フォー(vol.1)』#541(2/2007)をもって同誌のライターを降り、#542(3/2007)からはドウェイン・マクダフィーが後を継ぐこととなった。

 で、ストラジンスキーはこの半年後に創刊された『ソー(vol.3)』#1(9/2007)のライターとなり、雷神ソーの新たな再生の物語を紡いでいくこととなる。

 そんな訳で、1年半に及んだストラジンスキーの連載は、最初のエピソード(まあ多分、ストラジンスキーが一番書きたかった話)を除けば、だいたい「プラネット・ハルク」と「シビル・ウォー」という、この時期のマーベルのイベントとのタイインに終始していた感じではあるが、逆に、今後「マーベル グラフィックノベル・コレクション」の方で、『シビル・ウォー』や『プラネット・ハルク』が刊行された際には、この時期のストラジンスキーの『ファンタスティック・フォー』を参照してみるのも面白いだろう、と言ったところで、今回のエントリを終える。

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