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17-1.Stop the“仲間割れ”!

(特集 心理職の未来を創る)
下山晴彦(東京大学教授/臨床心理iNEXT代表)
+若手心理職
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.17

1.心理職の未来を創るために

4月となり新緑も芽吹き,新年度が始まった。臨床心理iNEXTは,発足2年目を迎えるにあたって「心理職の未来を創る」を新たなテーマとした。

心理職の未来を創るためには,夢を語ることとは大事である。しかし,今心理職が置かれている現実を直視することも必要である。改善すべき課題を見つけ,それに取り組んでいくことが未来創造の出発点となる。

公認心理師ができて,「心理職の未来は明るいのかもしれない」と,一瞬錯覚をした。ところが,現実は,残念な方向に進んで来ている。以前にも存在していた心理職の派閥争いが,公認心理師の誕生をきっかけとして職能団体や関連学会の対立という形で顕在化した。対立の中で誰にとっても心理職の未来が見えなくなっている。公認心理師の導入によって心理学ワールドで生じた“分断”については,臨床心理マガジン16-2号で特集したのでご参照ください。⇒https://note.com/inext/n/n590c528d46e9

したがって,心理職の未来を創るための最大の課題は,『Stop the“仲間割れ”!』である。ズバリ「心理職が仲間割れしている場合ではないでしょ!」ということである。

そこで,今年度の最初の臨床心理マガジンは17号では,「若手心理職Now!」と題して開催した若手心理職の「本音トーク」座談会の記録を掲載した。“心理職の仲間割れ”で最も被害を受けているのは,新たに心理職マーケットに参入して苦戦している若手である。心理職が仲間割れしていることで心理職全体の方向性が混乱している。心理職の現場に入ったばかりの若手こそが,混乱を肌感覚で最も強く感じている。若手心理職が感じている心理職の課題をぜひ共有していただきたい。そこから心理職の未来を創るヒントを探っていきましょう。

なお,2020年度は臨床心理iNEXTの広報マガジンは,ひと月に4号のペース(週刊)で発行してきた。2年目となる今年度は,皆様にお知らせすべき特集テーマが出てきたときに,随時発行することとした。ぜひ,お楽しみにしてください。

2.社会的ニーズに応える心理職となる

昨年の今頃は,コロナ禍という得体のしれない脅威に晒されて緊張が高まっていた。それから1年が過ぎ,コロナ禍の正体は見えてきた。しかし,ウィルスは変異を繰り返し,コロナ禍が沈静化する気配はない。自粛生活やリモートワークが続き,人々の不安が強くなっている。

今日の不安な時代において,心理職への社会的ニーズは増々高まっている。だからこそ,心理職は仲間割れしている場合ではないのである。自分たちの派閥の勢力を伸ばすことだけを考えるのはもう止めましょうよ。心理支援を必要とする利用者が「今何も求めているのか」に,もっともっと注意を向けていきましょう。

「心理職全体として社会的なニーズに応えるために,今自分たちは何をしなければならないのか?」という社会的な視点を持つことが,心理職の統一と未来をもたらす。したがって,臨床心理iNEXTは,「利用者は心理職に何を求めているのか」という観点から,心理職の専門性と社会的役割を理解し,創造していくことを今年度の基本テーマとした。

今年度の臨床心理iNEXTは,利用者や社会のニーズに応えられることを専門性の軸として心理職の未来を形作っていくための講習会やシンポジウムを積極的に企画し,実施していく。現場で働き,利用者のニーズを肌で感じ取っている心理職の皆様からのご意見やご要望に基づき,皆様が求めている企画を展開する。そして,志を同じくする皆様のつながる場を提供し,心理職の未来の発展に向けたコミュニティを創る。

現在,募集中の研修会は下記の通りである。前号でご紹介した際には,申込時のお支払いにJCBカードが使えない状態であったが,現在はJCBカードも使用できるようになった。多くの皆様の参加を期待している。5月の研修会の募集は次回号となる。

◆アサーション・トレーニング:ベイシック・コース
【講師】平木典子先生

【日時】4月18日(日)13時~17時
【申込】
・iNEXT有料会員(無料)⇒https://select-type.com/ev/?ev=Uib2lKfajNs
・iNEXT有料会員以外(3,000円)⇒https://select-type.com/ev/?ev=DoH5ZDGb0PU
◆アサーション・トレーニング:アドバンス・コース
【講師】平木典子先生
【日時】4月25日(日)9時~13時
【申込】
・iNEXT有料会員(4000円)⇒https://select-type.com/ev/?ev=S0MEkukOR5I
・iNEXT有料会員以外(8000円)⇒https://select-type.com/ev/?ev=iNBkPw95bJ8


◆Wechsler式知能検査の活用法:発達障害臨床を中心に
【講師】糸井岳史先生/高岡佑壮先生

【日時】4月25日(日)14時~17時
・iNEXT有料会員(無料)⇒https://select-type.com/ev/?ev=mTkAjWrnELI
・iNEXT有料会員以外(3,000円)⇒https://select-type.com/ev/?ev=IBQC2883T7Y
◆心理職の日々の困り事を見直そう:倫理的視点を切り口に
第1部(13~15時):臨床の困り事を倫理的視点で見直す
【講師】金沢吉展/慶野遥香
第2部(15~16時):テーマごとに困り事を語り合う
【日時】4月11日(日)13時~16時
【申込】
・第1部のみ(無料)⇒https://bit.ly/38TA6Z3     
・第1+2部(無料)⇒https://bit.ly/2P4rDuS

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3.本音トーク座談会 『若手心理職Now!』

心理職の「雇用」と「研修」の現状を知るために,若手心理職のオンライン座談会を開催した。実施したのは,今年のひな祭り(3月3日)の夜であった。若手心理職を対象とした理由は,ベテランの心理職は,現状に慣れてしまっており,現状維持のほうに意識が向いていることが多いからである。むしろ若手心理職だからこそ,問題に直面して現状の課題に気づいていると考えた。

オンラインでの参加ということで,日本の様々な地域から,分野の異なる,下記の4名の若手心理職に集まった。

[A:女性]臨床心理系修士課程を経て「司法・犯罪」分野で常勤として働く。
[B:女性]臨床心理系修士課程を経て「福祉」分野で常勤として働く。
[C:男性]臨床心理系修士課程を経て「教育分野」で非常勤(公立学校スクールカウンセラー)として働く。
[D:女性]社会人として働いた後に,臨床心理系修士課程を経て「医療」分野の心療内科クリニックで非常勤として働く。

最初に自己紹介を兼ねて,現在の職場の「研修」の状況を話してもらった。その記録は,臨床心理マガジン16-3号に掲載されているので,ご参照ください。
https://note.com/inext/m/mb9a11dd1520d

医療分野や教育分野では非常勤が多く,そもそも雇用が非常に不安定あることが語られた。司法・犯罪分野や福祉分野では常勤として雇用は安定している面はあるが,心理職の専門性を前提とした仕事の体制にはなっていないことも明らかとなった。

いずれの職場の状況も,専門職としての発展とは程遠い状況であった。そこでは,心理職が独自な専門性に基づく教育体制が整っていないだけでなく,心理職として勤務した後も,その専門性を発揮して働く体制にはなっていなかった。

このようなことが起きる要因として,心理職自身を含めて心理職の専門性を明確に規定できていないことが大きな課題であることが見えてきた。そこで,座談会の後半では,心理職の発展に向けての課題をテーマに話し合ってもらった。

4.[課題1]5分野の汎用性は,本当に可能なのか

──これまでは,それぞれの職場で働きながら感じている自分自身の課題について話をしていただいた。次に,他のメンバーが働く分野や職場の話も聞いた上で,心理職全般についての意見を教えてほしい。特に「心理職としてこのような学びができたらよい」「心理職としてこうあってほしい」「心理職としてこのようなことができたらよいのに」といった,心理職のキャリアアップに向けての希望や,そのための課題はどのようなものかについて率直な意見を教えてほしい。

[A]公認心理師でも臨床心理士でも心理職は5分野の汎用性が特徴であるが,それが課題だと思う。修士課程2年間で全5分野を網羅して専門的に学ぶことができない。しかし,職場に入ると即戦力として働くことを求められるが,それは無理。では,大学院の最初から,自分が進む分野に別れて教育を受けるのがいいかというと,それも違うと思う。それでは,汎用性の良いところが失われてしまう気がする。

──心理職の専門教育をどうするかは,非常に重要な課題。5分野の汎用性をカバーできる専門性とは何かが問われる。それをどのように教育するかは,実は至難の業。5分野にまたがる汎用性をもつ心理職というのは,本当は“ありえないこと”。海外の心理職は,それぞれの分野ごとに専門心理職があり,大学院の教育課程も入り口から異なっている。保健医療分野は臨床心理学,教育分野は教育心理学や学校心理学,福祉分野はカウンセリング心理学,司法非行は法心理学,産業労働分野は産業心理学や組織心理学に分かれており,いずれも博士課程を修了して専門の心理職になる。

[A]自分が学んだ大学院では,実践技能の教育があまり充実しておらず,院生がそれぞれ自分で学ぶということが重視されていた。今,現場に出て感じるのは,大学院時代には心理職に共通する専門モデルを皆で共有した上で,どの分野に出ても役立つ基本的な知識や技能を学ぶことでできればよかったと思う。心理検査や精神障害や薬物療法の知識なども基本的ものとして,大学院時代にしっかりと学んでおきたかった。

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5.[課題2]5分野に共通する専門性とは何か?

──専門とは,それぞれの分野の専門性を極めることを意味する。だから,「汎用性を前提とする専門性」とは矛盾しており,ありえない。公認心理師は,“そのありえないこと”を,しかも2年間でやろうとしている。だから,結果として,何もかも中途半端になっている。もし5分野の汎用性とするならば,5分野に共通する知識や技能とは何かを徹底的に議論し,抽出して教えなければいけない。しかし,それができていない。むしろ,各教員が自分の属する学派の理論や技法を中心に教える傾向が強い。

[A]今日の座談会に出て他の分野の現状を聞いて,それぞれの分野でやっていることが全く違うことが分かった。それぞれが使う知識も技能も違う。それで思うのは,大学院時代に自分が将来の専門とする分野が決まったら,その分野を中心に学んでいくシステムとして,現場に出ていく準備ができればよいと思った。結局,今の公認心理師のカリキュラムは,広く浅く学ぶだけであり,社会に出て学ぶことのほうが多い。

──今の公認心理師のカリキュラムでは,分野別の教育システムを作るのは難しい。あまりに教えることが多く,しかも大学院修了後に5分野にわたる知識を問う公認心理師試験が控えている。そのため,5分野をカバーする知識を詰め込むことが求められる。

[A]結局,5分野の汎用性の心理職の専門性とは何かと思ってしまう。医師,看護師,弁護士といった資格はその専門性がはっきりしている。それに比べて心理職の専門性とは何かを聞かれても答えられない。しかも,自分の働く領域では,心理職が協力して専門性を高めていこうという雰囲気はない。各心理職がバラバラに仕事をしている感じで,手を抜こうと思えば抜けてしまう。

──結局,今の心理職の教育は,心理職の専門性を壊すことを自らやっている。汎用性ということで手を広すぎている。それにもかかわらず5分野に共通する基本技能を明確にする努力もしてない。ますます心理職の専門性がわからなくなっている。

6.[課題3]大学院で学ぶことの意味は何か?

[B]雇用形態がしっかりしていて経済的に安定しているということで私は,福祉分野の常勤心理職を選んだ。しかし,できたら他の分野,例えば医療とか教育の分野で経験もしてみたいなと思っていた。しかし,今日の座談会に出てみて経験がないと勤められないとか,仕事の内容が明確でないという実態を聞いて,他の分野で経験を積むのは実際には難しいのだとわかった。

──汎用性に関して楽観的に考えるならば,いろいろな分野の経験ができることがメリットになる。しかし,実際は各分野で研修制度がしっかりしていないので,経験がないと勤められない。常勤の職を得るには,その分野での長期経験がないと雇用されない。雇用という観点からは汎用性は成り立たないのが現実。結局,汎用性と言っても,他の分野を経験しにくいだけでなく,5分野の知識を学んでもそれを活かすことは難しい。

[B]自分は,臨床心理士になりたくで臨床心理系大学院修士課程に進学した。しかし,私の職場は,大学院修了ではなくても入職できるため,場合によっては大学院卒ではなく,現場での臨床経験を積むことができる。そのような場合,経験があるということで大学院卒の新人よりも上の立場になったりする。さらに一般的には,心理学をやっていない人もカウンセラーを名乗ったりしている。そういう現実にふれると,大学院で学んだ意味とは何かを考える。

──2年間修士課程で学んだ意味は何もなかったのだろうか? 学部卒の人と違うものは何もないのだろうか?

[B]心理職としての倫理観,クライエントのための基本的考え方,具体的な心理療法の技法などを学ぶことができたのは意味があった。それと,分野別のフィールドで実習ができたのは大学院で学んだ強みだと思う。

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7.[課題4]大学院での学習が評価されないままでよいのか?

──今の職場では,修士課程修了ということは評価されないのですか?

[B]残念だけど,評価されない。学部卒で臨床現場に出て経験を積んでいる人と比較すると自分は現場経験がないので,大学院での経験は評価されない。

──そのようなことが起きるのは,大学院で学ぶ「心理職の専門性」は何かが確立していないからである。現場経験で習得するのは,心理職の専門性というよりも,その職場で必要な技法である。今の心理職の世界では,「各現場で必要な技法」=「心理職の専門性」になっている。しかし,「心理職の専門性」は,「心理職の本質とは何か」「心理職の独自性は何か」を基軸として体系的に構成された専門的な知識や技能から構成されるものである。そのような心理職の専門性や,それを大学院で学ぶ意義を共有されていないことが,そもそもの課題である。多くの心理職は,それぞれの学派の視点からしか心理職の専門性を考えていない。だから心理職の職能団体の分裂も起きる。さらに,周囲の医師も裁判官も行政官も教員もそれぞれの“心理職観”で,勝手に対応している。「心理職とは何か」が共通していないのが現実だから,混乱が起きて当たり前。

[B]今,公認心理師は名称独占でしかない。これが業務独占になれば,しっかりと心理学を学び,大学院で心理職の専門性を学ぶことが評価される体制を作れるのではないか。

──実際には,それは難しい。公認心理師法で「主治の医師があるときは,その指示を受けなければならない」と規定されており,公認心理師は独自な専門職として主体的な活動をすることが認められていない。業務独占をする以前に,主体的に専門的な活動をすること自体に制限がある。その点で,残念ですが,公認心理師は独立した専門職ではない。

8.[課題5]統一的な専門性モデルが欠如したままでよいのか?

[C]自分としては,大学院で自分がどの分野でどのような職種に就職がするか決まったならば,職場に入る前にその分野や職種に特化した教育をしてもらえたらと思う。

──今の大学院でそのような教育するのは,非常に難しいと思う。というのは,汎用性ということで5分野の知識や技能,そして実習をするために公認心理師カリキュラムはメチャクチャやらなければいけないことが多い。そのために教員も手一杯。本来ならば,分野別の博士課程で教えることを修士2年間で教えて,しかも修了後に5分野の知識の詰め込む事が必要な国家資格の試験が待っている。今しなければいけないことは,職能団体がその職種を実践するのに必要な技能のモデルやガイドラインを決めて提示し,その教育訓練プログラムを提供することである。15年ほど前に私が米国のスクールカウンセリングの学会に参加したときには,学会がスクールカウンセリングの統一モデルを提示し,そのための体系的な教育研修プログラムを実施していた。日本でも職能団体が分裂して場合ではない。分裂するのではなく,同じ心理職の発展を目指す団体として,心理職の統一的な専門性のモデルをまとめる作業をしてほしい。

[C]自分は修士課程を修了してすぐにスクールカウンセラーとして学校に入った。すると,教員や父兄などの一般の人は,臨床心理士や公認心理師といった専門資格をもっている専門家だとみて関わってくる。しかし,自分は,どのように対応したらよいかわからない。どのような技能を習得すればスクールカウンセラーとして一人前なのかということの判断ができたらよい。学ぶ目標もはっきりする。だから,早くスクールカウンセラーとしての統一モデルを出してほしい。

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9.[課題6]キャリアパスがみえないままでよいのか?

[D]教育の統一化を早く求めたい。英国でクリニカル・サイコロジストになるためには博士課程を出る必要があると聞いた。専門職になるためにはそのくらいやらなければいけないのだと思っている。今の2年間の教育ではスキルアップが難しいのではないか。その結果,現場に出てから,学ばなければいけないことになる。しかし,学習が各自に任されている現状ではスキルアップが困難と感じる。

──残念だけど,それが現実ですね。

[D]理念としては社会に貢献する心理職と謳っているが,制度が整っていない。それと関連して雇用の問題がある。医療分野では,非常勤かつ欠員補充がほとんどで,その多くはが任期付きであり,常勤職が少ない。あっても総合病院の心理職が多く,経験者が優先で採用されるため,若手心理職にとっては複数の非常勤で食いつなぐしかなく,キャリアパスが見えてこない。頑張っても展望が見えてくるというわけでもない状況を感じる。

──確かに心理職の専門性を社会に位置づける制度ができていないことは,非常に深刻な問題である。心理職は,これまで心理支援の技能を高めることに関心をもち,そのためにエネルギーを注いできた。その結果として,心理支援以外の課題に関心が向かわずに,どの心理支援の方法が望ましいのかという議論に閉じる傾向が強くなっていた。しかも心理支援の方法は,学派によって異なっている。そのため,心理療法の学派間での対立が維持されてしまうという弊害も生じていた。現在起きている職能団体の分裂や,関連学会の対立などもこれと関連している。その結果,心理職の活動を社会制度に位置づけることができないでいる。そして,それは心理職のキャリアパスが見えないことに繋がっている。

10.心理職の未来を創るための課題

心理職の雇用と研修と関連して心理職自身が心理職の専門性を明確に規定できていないことが,最も本質的課題である。心理支援の方法に関心が閉じる傾向があるために心理職全体としての統一的な専門性モデルを確立できていない。それに加えて公認心理師は,5分野の汎用性資格ということで,さらに基本や基盤となる専門性モデルが持てなくなっている。

心理職自身が統一的専門性モデルを提示できていないだけに,連携する他職や心理サービスを利用する利用者は,それぞれが想定する“心理職観”で関わってきて,混乱が生じている。この混乱は,汎用性という心理職の特徴から多領域に拡散をしている。その結果,それぞれの分野や職種で混乱が起きており,その影響をもっとも受けているのが若手心理職である。その点で今回の座談会に参加した若手心理職の感じている困惑は,このような混乱した心理職の社会体制の影響を受けたものでもある。

このように心理職の専門性モデルを共有できていないまま,公認心理師という国家資格が独り歩きを始めてしまっているのが現状である。今回の座談会から私(下山)自身が学んだことは,『心理職は,心理職の技能だけを議論するのではなく,心理職を越えた“社会”という,広い文脈で心理職の役割や機能を捉え直す必要がある』ということである。だからこそ「仲間割れをしている場合ではないでしょ!」が重要な課題となる。

社会的文脈の観点から心理職の統一的な専門性を定義し,その心理職の活動をどのように社会に位置づけていくのかというシステムオーガニゼーションの視点と技能を発展させる必要があるということである。

心理職は,医療職や法律職に比較するならば,新しい専門職である。だからこそ,既存の社会システムの中に,心理職がまとまって新たに心理職の活動を位置づけていく社会意識をもち,社会的活動を展開する必要がある。そのことを強く意識した座談会であった。

今回,若い方たちの思いに私たちも応えなくてはならないと思い,かなり刺激的なタイトルにした。皆さんはどう思われるでしょうか?

■デザイン by 原田 優(東京大学 特任研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第17号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.17


◇編集長・発行人:下山晴彦
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