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34-4 がんばれ!公認心理師試験☆受験生!

(特集:iNEXT新装開店セール)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大学)
宮川純(河合塾KALS)
臨床心理学系大学院修士課程2年生(Wさん、Xさん、Yさん、Zさん)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.34-4

<ご案内中の事例検討☆研修会>

今から役立つ「みんなの公認心理師試験対策」
−直前3ヶ月に何をすれば良いか−

【日程】2023年2月18日(土曜)9時〜11時
【講師】宮川純 河合塾KALS講師 「赤本」※)著者

※)「赤本 公認心理師国試対策2023」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371379

■第1部 公認心理師試験の傾向と対策
1)公認心理師試験の概要 下山晴彦
2)合格に向けて残り3ヶ月をどう過ごすか 宮川純

■第2部 みんなで考える公認心理師試験の傾向と対策
1)先輩合格者と宮川先生が教える直前対策と心構え 
2)現役受験生の質問と不安に宮川先生が応える

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](無料):https://select-type.com/ev/?ev=_vbiULa-YF0
[iNEXT有料会員以外・一般](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=D-DWLL7-Sco
[オンデマンド視聴のみ](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=zBrxYLef6A0

https://select-type.com/ev/?ev=zBrxYLef6A0
https://select-type.com/ev/?ev=zBrxYLef6A0
(宮川純先生)

事例検討で学ぶ『認知行動療法の行動技法』
―精神分析とCBTの接点を探る-
 
【日程】2023年2月5日(日)9時〜12時
【事例発表】神村栄一 新潟大学 教授

■事例1「強迫症:曝露法と反応妨害法」
■事例2「適応症:行動活性化と習慣改善法」

【検討メンバー】山崎孝明・田中志帆・小堀彩子・野中舞子・高山由貴

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](無料):https://select-type.com/ev/?ev=iJ5RaUSCGeI
[iNEXT有料会員以外・一般](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=8IHL9qcD_qI
[オンデマンド視聴のみ](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=nJ1tsv_vLx8 

【参加費】『臨床心理iNEXT』新装開店セールでiNEXT有料会員は無料、それ以外の参加者は1000円で参加できます。

1.がんばれ受験生!

1月10日の官報※)で公認心理師試験に関する発表があり、今年の試験日が5月14日となることが公表されました。これは、公認心理師試験の受験生にとっては、大変なことです。
※)https://www.jccpp.or.jp/topics.cgi
 
受験生である修士2年生は、タイトなカリキュラムをこなさなければなりません。授業だけでなく、内部実習や外部実習を行います。修士論文も書かなくてはいけません。就活もしなければいけません。それに加えて公認心理師試験の受験勉強も必要となります。
 
就活がうまくいき4月に就職したならば、新しい職場で仕事に慣れるまで必死で働かなければいけません。とても、受験勉強をしている余裕はないでしょう。ですから、2月と3月に就活と受験勉強を同時並行でしなくてはいけないのです。


2.受験生を“分断”から守ろう!

公認心理師試験は、ご存知のように筆記試験のみです。試験内容も、これまでの出題傾向を見る限り、内容に偏りがあり、現場での臨床実践とは直接結びつかない問題もあります。そのため、「受験生」と「現場の心理職」の分断が起きています。医療や行政のシステムに受験生を組み込むための指導目的の問題も散見されます。そこでは、「医療・行政主導の内容」と「心理職本来の教育内容」との分断が生じることもあります。
 
ほとんどの心理職は、試験が終われば、試験への関心を失います。試験内容がどれだけ偏っていても、それを指摘しません。多くの大学院教員も、試験問題には関心を持っていません。(というか、問題が特殊なものが多いので、受験を終えてしまえば問題を理解できなくなります。)職能団体も学会も、公認心理師試験の歪みを取り上げることはなく、困難を受験生に押し付けてしまっています。
 
そのため、多くの受験生は孤立してしまっています。そこで、臨床心理iNEXTは、受験生を応援する研修会『今から役立つ「みんなの公認心理師試験対策」−直前3ヶ月に何をすれば良いか−』を開催することとしました。


3.受験生を孤立させないようにしよう!

研修会では、公認心理師試験対策で評価の高い河合塾KALSの人気講師で、受験生のバイブルとなっている「赤本 公認心理師国試対策2023」※)の著者の宮川純先生をお迎えして、「試験までの3ヶ月をどのように過ごすのか」を伝授する応援セミナーを実施します。
※)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371379
 
■第1部 公認心理師試験の傾向と対策では、まず下山が「公認心理師の制度と試験の概要」に基づいて試験問題の成り立ちを解説し、それを通して「問題が難しい」理由を説明します。次に宮川先生が、これまでの公認心理師試験の傾向分析に基づいて「合格に向けて残り3ヶ月をどう過ごすか」を具体的に解説します。
 
次に■第2部 みんなで考える公認心理師試験の傾向と対策では、まず「1)先輩合格者と宮川先生が教える直前対策と心構え」において、2年連続で受験者100%合格のA大学院の合格者3名(男性1名、女性2名)が宮川先生と合格に向けての受験準備のポイントを語り合います。先輩が後輩に経験を伝え、合格に向けてエールを送るセッションです。
 
次の「2)現役受験生の質問と不安に宮川先生が応える」では、この5月に試験を受ける修士課程2年生(B大学院2名とC大学院2名)の4名の受験生(男性1名、女性3名)に、その時点での準備状況に基づいて試験勉強についての不安や疑問を宮川先生に質問として投げかけてもらいます。その質疑応答を通して5月の試験に向けての準備のポイントを明らかにしていきます。


4.現役受験生の不安の声を聴く

2月18日の研修会に先立って、1月半ばに、参加者の事前打ち合わせを実施しました。その場で、第2部の「2)現役受験生の質問と不安に宮川先生が応える」に受験生代表として参加していただく4名の院生に「今、困っていること」をお話しいただき、それに宮川先生が答えるプレセッションを行いました。

1月半ばというのは、多くの修士課程2年生は、修士論文を提出し、あるいは修士論文を執筆中の時期かと思います。実際に、C大学院では、修士論文の提出が1月末ということになっていました。そのため、C大学院の院生は、論文執筆をしながら、就活をし、公認心理師試験の受験勉強をするという、超ハードな時間を過ごしていました。
 
以下に、プレセッションにおける現役受験生と宮川先生の質疑応答の記録を掲載します。ぜひ、受験生がどのような状況で試験準備をしているのかを多くの皆様に知っていただきたく思っております。
 
なお、2月18日の研修会当日では、オンラインで参加している皆様からの質問もチャットで受け、宮川先生や合格者にお答えいただきます。まさに、みんなで情報共有をして公認心理師試験の準備をしていく研修会にしていきます。ぜひ、受験生だけではなく、受験生のサポートをしている教員、心理職、受験生の先輩の皆様にもご参加いただきたく思っております。


5.移行措置が終わったことで出題傾向に変化はあるか?

【下山】今日は、2月18日の研修会の事前打ち合わせにご参加をありがとうございます。研修会当日に向けて、参加者の現状を共有するということで、現役受験生の4名の皆さんから「今、困っていることや心配なこと」を出してもらい、それに宮川先生が答えるプレセッションをしたいと思います。まず、最初にB大学院のWさん(男性)お願いします。
 
【W】5月14日実施の第6回試験からは、移行措置のGルートがなくなり、受験生がほぼ大学院生のみになっていくと思います。現任者の受験がなくなるということで、出題傾向が変わるということはあるでしょうか
 
【宮川】1月10日の官報で、試験関連の情報が発表された中に、第6回試験のブループリント、つまり出題基準※)も発表されていました。第5回試験の時は、ブループリントの変更点が極めて少なかったんです。しかし、今回は、かなり大幅にブループリントの変更点がありました。そのため、第6回試験に向けて何らかの形で試験問題を変えてくる可能性があるかなと思っています。
※)https://www.jccpp.or.jp/download/pdf/blue_print_202301.pdf
 
でも、裏を返せば、そのブループリントと過去問以外の情報がないんです。やはり、現状できることとしては、今までの過去問をしっかりやること、そして新しくブループリントで示されたキーワードに関して調べておくということでしょう。
 
研修会当日には、その点に関する情報発信をしたいと思っています。その中には、多くの受験生には全く聞いたことがないキーワード、例えば、“リービングケア”という用語も出てきました。それが問題として出題されると対応できない可能性もあります。そのような新傾向があるかもしれない。その点についてはしっかり学んでおかなければいけないですね。


6.時間がない中で、どの参考書を使って、どのような勉強をしたら良いか?

【X】 私は、現時点で修論執筆に追われていて、宮川先生も書かれている最新の「赤本 2023」※1)をペラペラと読むぐらいの勉強しかできていません。他にも公認心理師に向けた参考書はたくさんあります。どの参考書をどのように選んで、どのように活用して良いのかわからないでいます。院生仲間で「どのような参考書が良いだろうね」と話したりしています。このような場合には、このような参考書が良いというものがありますか。
※1)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371379
 
【宮川】勉強の主体が過去問になる以上、過去問集を主軸にした勉強にならざるを得ないと思います。例えば、赤本を手に取ってくださったならば、それを2周3周とやるだけでなく、違う問題集で2周目の過去問をやるという方法があります。どのようにするかは、個人によって分かれるところかと思います。違う問題集を使えば、解説の方向が異なっていたりするので、多面的な理解は深まるでしょう。しかし、今年は余裕がないでしょうから、同じ問題集を繰り返しやった方が良いと思います。そして、キーワードをまとめてある参考書は、辞書代わりに使うのが良いでしょう。
 
【下山】赤本は、確かに総合的で良いと思います。ただ、受験生によっては、違う参考書が良いという人もいるかと思います。受験生と参考書の相性というものはあるのでしょうか。
 
【宮川】いわゆるペンギン本と言われるシリーズ※2)は、レイアウトがとても見やすくなっています。赤本の方が、全部ぎゅっと詰めて、情報の密度を高くしてあります。あと、辰巳法律研究所から出ている参考書※3)は、全部バラバラに第1回試験の追試験とか、第2回試験とか第3回試験とかで1冊ずつ出ています。解説がとにかく充実しています。選択肢も含めて詳しい解説を読みたい方には、役立つ参考書です。
※2)https://honto.jp/netstore/pd-book_31966298.html
※3)https://sinri001.stores.jp


7.覚える知識量が多すぎるので、どこまで覚えたら良いのか?

【Y】私も宮川先生が執筆されている赤本を使って勉強をやり始めています。でも、分厚くて、どのように読み進めていいかわからない。先に問題を解いているのですが、解説の内容が幅広くて、実際のところ、どこまでこう頭に入れればいいのかがわからない。量の多さに圧倒されています。残り時間が少ないので、どこまで把握して記憶すれば良いのか、手探りの状態で不安です。
 
【宮川】最新の「赤本 2023」は、全ての項目がABCの3セクション構成になっています。実は、2022以前のバージョンは、ABCDというように4セクションでしたが、それをコンパクトにして3セクションにしました。ただ、基本的に見るのは、AとCだけで良いです。Bは、辞書的な役割のセクションなので、「このキーワードはなんだっけ?」と思った時に見ると役立ちます。キーワードだけパラパラ眺めたりしていても、あまり意味がないです。A(概要講義)に関してざっと目を通したら、さっさとC(過去問)に移って、問題をガンガン解く中で、このキーワード何っていう内容があったら、辞書的にB(キーワード解説)を見るのが良いでしょう。
 
特に今年の受験生は、時間がないので、Bを学びながら、1個1個ノートを作るなど、自分なりに知識まとめをしている暇はおそらくないと思います。ですので、Aを読んだら、さっさとCに入って、キーワードは気になるものだけ見ていただければ結構です。ところで、研修会当日もお伝えしようと思いますが、ノート作りとかはされていたりします?
 
【Y】ノート作りはせずに、Cの問題を先に私は解くようにしています。間違えた問題に関連するキーワードだけまとめるようにはしています。
 
【宮川】それも必要最小限すれば良いですね。ノート作りは、時間がかかるので無理をしないことです。本への書き込みやマーカーを引いて確認するとかで時間を節約することが重要です。あと、手書きのノートよりも、デジタルのwordとかexcelとかで情報を整理しておくのも良いでしょう。そうすれば、後から気になった時に検索を使って1発で探すことができます。とにかくスピーディにやっていくことが大切です。


8.事例問題にどのように対応したら良いか?

【Z】私の場合、事例の問題について、どのように勉強していいのかがわかりません。事例に特化した対策とかがあれば、教えていただけたら嬉しいです。
 
【宮川】事例問題では、どのように解答を間違えてしまうのかという、自分の誤りの傾向とかに気づいていますか?
 
【Z】精神疾患の知識が、きちっと頭に入っていないことで間違っているのかなと思っています。
 
【宮川】もちろん事例文の読解力が大事ということはあります。しかし、結局ペーパー試験なので、その前提となる知識がないと、正しい答えに辿り着けないのです。精神疾患や薬に関する知識、法律に関する知識などがないと、国語力だけでは解けない。だから、事例問題が解けないのは、一般的な知識レベルがまだ十分ではない可能性が高いです。
 
もし知識レベルが十分ついてきているのにも関わらず、事例問題で間違えてしまうとするならば、事例文に書かれていないことまで想像して答えてしまっている可能性もあります。公認心理師試験は国家試験なので、全部の関連情報が事例文に書かれています。ですから、行間を読むとか、書かれてないところを類推して答えさせるということは、基本的にありません。
 
当てはまる精神疾患を答えさせる問題は、基本的にDSM-5の診断基準を見ながら、エピソードを順番に入れているのではないかと思うぐらいそのまま出題されていることもあります。裏を返せば、それだけDSM-5の基準通りに事例が作られているから、他の疾患とは言わせない作りになっています。
 
だからと言ってDSM-5を全て覚えなさいというわけではなく、単純に各精神疾患の代表的な症状をしっかり把握していれば解けます。つまり、基本的知識をしっかり把握しておき、書いてないことで判断しないことです。
 
もう一つ注意することがあります。それは、緊急事態になった場合の事例対応に関しては、通常の場合とは頭のスイッチを切り替えて解答を考えることです。つまり、自殺のリスクが高いといった危機介入場面については、しっかりとアセスメントをしてとか、受容や共感をベースとした介入とは異なる対応を考えていかなければいけない。そこでは、危機事態なのかどうかを、まず判断する必要が出てきます。


9.試験勉強は、その後の臨床活動にどのように役立つのか?

【下山】実際の臨床現場では、DSMで記載されているような典型的症状をきちっと揃えた事例はむしろ少ないと言えますね。事例は、一つ一つ異なっている。例えば、統合失調症は軽症化が進み、典型例が少なくなっているのが現状です。だから、臨床現場の経験や発想に基づいて事例問題に答えようとすると間違ってしまう。皮肉なことに臨床経験を積めば積むほど、答えがわからなくなるということはありますね。
 
【宮川】逆に言えば、試験ではその典型を把握しておくことが基本となります。これから専門職として旅立っていく人が、まずは足場固めとして、基本知識を試験勉強の中でしっかりと押さえておくことは意味があると、個人的には思っています。それを押さえた上で、次に臨床現場に出たならば、基本だけで全て対応できるわけでないことを学んでいく。そのような段階的な発展という展開になるのが良いと思います。
 
【下山】それは、試験勉強での学習が、その後の臨床での実践でどのように役立つのかというテーマです。公認心理師試験の勉強をする意義ということですね。これについては、2月18日の研修会の2部の「1)先輩合格者と宮川先生が教える直前対策と心構え」において、既に現場で働いている試験合格者の若手心理職の皆さんの意見を聞いてみたいですね。
 
【宮川】本日は、ありがとうございました。ぜひ研修会でも、たくさんのご意見やご質問を頂けたらと思います。受験生のみなさま、受験生を支援する大学教員のみなさま、ぜひお待ちしております。


■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)


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臨床心理マガジン iNEXT 第34号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.34


◇編集長・発行人:下山晴彦

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