35-3.マインドフルネスを習得する
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1.改めてマインドフルネスを本格的に習得する
マインドフルネスは、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれない状態で、ただ観ること」(日本マインドフルネス学会)と定義されます。
このマインドフルネスは、カバットジン,Jが仏教の瞑想法に基づいて「マインドフルネス ストレス低減法」※)を刊行した1990年には、まだストレス対処プログラムとして一部の人に知られているだけでした。最初は身体的痛みへの対処法として、そして次第にうつ病の治療法として活用されるようになりました。その後、マインドフルネスは、弁証法的行動療法やACT、スキーマ療法などの認知行動療法に取り入れられ、心理職の必須技法になってきています。近年では、慈悲や思いやりを深め、トラウマや反芻などの対処に役立つことが示され、心理職の活動を広げるための基本技能として、マインドフルネスの重要性が再確認されています。
※)https://www.kitaohji.com/book/b579758.html
そこで、臨床心理iNEXTでは、「マインドフルネスを習得する」ことを2023年度の重要テーマとして、基本から最新の実践技法までを段階的に学ぶことができるさまざまなレベルの研修会シリーズを企画しました。その第一回として冒頭に示した「改めてマインドフルネスの基本を学ぶ」講習会を開催します。
ぜひ、心理職だけでなく、学生さんや一般の方など、マインドフルネスを正しく学びたいと思っている多くの方にご参加いただければ幸いです。
2.iNEXTマインドフルネス研修会の全体スケジュール
臨床心理iNEXTでは、マインドフルネスを段階的に学び、習得できるように4種類のオンライン研修会シリーズを実施します。各回の研修会の参加者募集は、開催日の約1ヶ月前より、臨床心理iNEXTサイト及び臨床心理マガジンで広報をしますのでご確認ください。
これらの研修会は、基礎から臨床的応用に向けて段階的に学習を高めていけるように体系的に発展する構成となっています。全体の体系は下記のような構図(マップ)として示すことができます。
3.マインドフルネスを体系的に、そして体験的に学ぶ
マインドフルネスは、米国を中心に自己認識や集中力を高める方法としてビジネス界で活用されるようになったことを契機として、ヨガと同程度に多くの人々が実践するようになりました。多くの人が、治療法としてではなく、日々の生活の中で心身の健康のために実践するようになっています。
しかし、マインドフルネスがビジネス化され、大衆化されたことで、仏教本来の精神を逸脱した方向で発展しているとの批判もあります。提唱者のカバットジンが日本の禅から影響を受けていることを明言していることからもわかるように、日本人にとってマインドフルネスは、ある意味で馴染みやすい概念です。それだけに日本においては、仏教の精神からの逸脱には注意してマインドフルネスを習得していく必要があると言えます。
そこで、本研修会シリーズでは、マインドフルネスの起源である仏教瞑想に遡り、改めてマインドフルネスの基本を確認し、それを基盤として段階的に、しかも体系的にマインドフルネスを本格的に習得できるように構成しました。理論や方法の解説だけでなく、体験を重視した継続的な講習会シリーズも企画しました。
4.最新のマインドフルネスを学び、心理職として成長する
近年では、心理支援におけるマインドフルネスの有効性は幅広く認められるようになっています。当初は、その人自身の「今の瞬間」への気づきが重視されていましたが、次第に他者との関係への気づき、慈悲や思いやりといったことが重視されるようになりました。また、多くの症状や問題の維持要因となっているトラウマや反芻(考え込み:Rumination)などの改善にも有効であるとの結果も出ています。
さらには、心理支援などの専門職の自己理解や技能向上にも役立つことも示されています。したがって、マインドフルネスは、心理支援の技法としてだけでなく、心理職が自己理解を深め、専門職として発展していくためにも役立つものと言えます。
そこで、臨床活用という点では、トラウマや反芻の改善に向けたマインドフルネスの技法も含めて最新情報をお伝えする研修会を企画しました。技能向上という点では、事例検討に基づいて研修会を開催します。それを受けて、心理職としての成長を目的した継続的な事例検討会を実施することとしました。
研修会の講師は、マインドフルネス実践者であり、仏教に造詣が深く、本格的な入門書と実践書の著者である大谷彰先生と、代表的なマインドフルネス解説書の翻訳を担当し、「働く人のマインドフルネス講習会」を運営している中野美奈先生にお願いしました。両先生からの皆様へのメッセージを掲載します。
5.大谷彰先生からのメッセージ
仏教瞑想に端を発するマインドフルネスは近年脚光を浴び、医学や心理学はもとより、社会福祉や矯正領域、教育、看護学など幅広い分野で活用されています。今回、iNEXTの下山晴彦先生と中野美奈先生とのチームでマインドフルネスの基礎理論、臨床応用、および数々の技法について研修を行うことになりました。
講義と体験学習の二本立てアプローチで、最新知識の習得と実践のスキルアップを図ります。ぜひ是非ご参加ください!
6.中野美奈先生からのメッセージ
このたび、マインドフルネスの研修会を臨床心理iNEXTの下山晴彦先生と大谷彰先生とご一緒させていただくことになりました。私が担当する全6回のオンライン・プログラムは、マインドフルネスをこれまであまり体験したことのない一般の方々を対象としています。
マインドフルな仕事への向き合い方、自分の感情の扱い方、他者との付き合い方など、日常の身近なテーマにも焦点を当てています。どうぞよろしくお願いいたします。
7.「マインドフルネス」講習会−改めて基本を学ぶ-
冒頭でご案内と参加者募集を提示したマインドフルネスの入門的位置付けとなる研修会です。これは、「改めて基本に立ち返り、マインドフルネスの基礎を体系的、体験的に学ぶ」ことを目的として、シリーズの最初の研修会として4月15日(土)午前9時〜12時で開催します。
参加者は、この研修会でマインドフルネスの基本を学び、その後の発展的学習の基盤を確実にすることができます。講師は、マインドフルネスを専門とする大谷先生と中野先生が担当し、下山が司会をします。両先生が関わった下記書籍を参考書として、理論と体験からマインドフルネスの基本を習得します。
前半では、まず「マインドフルネスとは何か」(①を中心に※1)、「マインドフルネスの基礎と背景」(②を中心に※2)のテーマで理論を学びます。後半では、理論的学びを土台として、「マインドフルネス実践の心構え」、「呼吸法を習得する」、「マインドフルネスを体験する」のテーマで体験的学習をして、マインドフルネスの習得を進めます。
※1)① 『マインドフルネスのすべてー「今この瞬間」への気づき』(丸善出版) 中野訳
⇨https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b295083.html
※2)② 『マインドフルネス入門講義』(金剛出版) 大谷彰著
⇨https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b514768.html
8.[一般向け]マインドフルネス「体験会」シリーズ
【目標】働く人が、生活を豊かにするためにマインドフルネスを体得する。
[講師]中野美奈
[日程]5〜7月(1回1時間30分:午前9〜10時30分 2週に1回)
5月21日、6月4日、18日、7月2日、16日、30日(いずれも日曜)
※)4月半ばより、臨床心理iNEXTサイト 及び臨床心理マガジンにて参加者の募集を開始する予定。
[参考書]『マインドフルネスのすべて−「今この瞬間」への気づき−』(丸善出版)中野訳
9.[支援職向け]臨床活用:最新マインドフルネス講習会
【目標】マインドフルネスの最新動向を踏まえて臨床活用の方法を学ぶ
[講師]大谷彰+下山晴彦
[日程]5月27日(土曜)の9時〜12時(日本時間)
[参考書]『マインドフルネス入門講義』 (金剛出版) 大谷著
『マインドフルネス実践講義』※)(金剛出版) 大谷著
※)https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b515555.html
[プログラム]
10. [支援職向け]技能向上:マインドフルネス事例検討会
【目標】反芻(rumination)に対応するマインドフルネスの臨床活用の実際を学ぶ
[講師]大谷彰+中野美奈+下山晴彦
[日程]6月10日(土曜)午前9時〜12時
[参考書]『マインドフルネス入門講義』 (金剛出版) 大谷著
『マインドフルネス実践講義』 (金剛出版) 大谷著
[プログラム]
11. マインドフルネス事例検討会「コミュニティ」について
臨床心理iNEXTでは、キャリアデザインや技能向上に向けて、心理職が安心して情報を共有し、議論をしていく「コミュニティ」形成を2023年度の重要目標としています。そこで、今回のマインドフルネスの研修会に参加した皆様を中心に、マインドフルネスに関心を持つ心理職の皆様にご参加いただく事例検討会「コミュニティ」を継続的に開催し、参加者を募集します。
今回の研修会講師の大谷彰先生や中野美奈先生にもご参加いただき、下山がファシリテーターを務めるオンライン定員型事例検討会を継続的に開催します。メンバー募集については、6月頃に臨床心理iNEXTサイトや臨床心理マガジンで告知致します。マインドフルネスに関わる心理技能の向上を目指す心理職コミュニティとして多くの方のご参加を期待しております。
■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)
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