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26-1.新年☆講習会予告編

(特集 春の花形研修会ご案内)
下山晴彦(東京大学/臨床心理iNEXT代表)
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.26


1.新年のご挨拶
 ──ピンチをチャンスに

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年末にはワクチン接種でコロナ禍を抜け出せると期待していました。しかし,オミクロン型ウィルスの世界的蔓延によって,改めて新型コロナウィルス感染症との共生を考えていかなければと思っているところです。

臨床心理iNEXTは,このような状況に直面し,マイナス面をみて意気消沈するのではなく,そこにプラスの側面を見出し,新たな可能性を発展させる工夫していきたいと考えています。いつか誰かが問題解決してくれるのを待つのではなく,今こそ問題改善に向けてチャンスの時であるとの気持ちで,皆様と一緒に心理職の未来を創っていきたいと思っております。

今年も心理職の専門性発展に向けてがんばりますので,どうぞ宜しくお願い致します。

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2.生まれ変わる動画講義ラインナップ
 ──体系化して学びやすいオンライン講座に

心理職の未来を創る第一弾として,iNEXTの動画講義のラインアップを増やすとともにご提供の仕方を全面的に変えていきます。昨年実施した講習会やシンポジウムのアーカイブ動画を専門知識や技能の学習教材としてアップしてきます。

これまでは,講義動画を各会員枠の中に羅列してあるだけでした。しかし,それでは,専門性を順に上げて学習していくのには不便でした。そこで,講義動画を専門領域ごとに体系化して示すことにしました。ですので,利用者の皆さんは,ご自身の学習課題に沿って基礎から応用に向けて段階的に動画で学習を進めることができるようになります。

このように専門性に基づいて体系化した講義動画を大学や大学院の授業で活用していただけるように法人向けの会員システムを充実させます。おそらく来年度も新型コロナウィルス対策として大学や大学院ではオンライン授業やハイブリット授業が行われることになると思います。そのような場合に,学生さんが臨床心理iNEXTの学習動画をオンデマンド形式で活用していただくことができるようにサービスを充実させる予定です。これについては,2月の臨床心理マガジンで詳しくご説明をさせていただきます。

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3.今年の企画方針と楽しみ方
 ──皆様と一緒に創る動画講義へ

今年の研修会は,心理職や心理職を目指す学生の皆様のご要望をお聞きし,それに基づいて研修会を企画し,実施していきたいと思っています。さらにそれを動画講義として,多くの皆様が活用できる学習システムを構築していく予定です。そのため皆様のご意見をお聴きするアンケートを積極的に行っていきます。

また,皆様と意見交換ができる参加型のセッションの場を用意したいと思っております。たとえば,若手だけのトークセッションとか,若手とベテランのトークセッションも積極的に企画していきたいと思っております。2月27日午後に実施するトークセッション「茂木健一郎さんと臨床心理学の未来を語る」(仮題)では,参加者を交えての質疑応答セッションを設ける予定です

また,「心理職の待遇改善やキャリアアップのために何ができるのか」,「公認心理師制度を改善するのはどうしたらよいか」,「心理職の“仲間割れ”をどのようにしていくのか」といったテーマでのシンポジウムやトークセッションも積極的に開催していきたいと思っています。

心理職の発展に向けて意見対立はあってもよいと思います。臨床心理iNEXは,その中から新たな可能性が生まれてくることを期待しています。ですので,臨床心理iNEXTは,心理職の発展に向けての議論が活発になる触媒(つなぎ)になることを,今年の目標とします。

ぜひ多くの方にご参加いただき,心理職の新たな発展に向けての動きを楽しんでいただければと願っています。以下に,その第1弾として今春予定の企画をご紹介します。

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4.メンタルヘルス最前線『健康経営デザイン』
 ──参加費値下げと無料モニター募集

■2022年1月21日~3月4日の毎週金曜日(休日を除く)
https://www.utokyo-ext.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/hms_a4_flyer.pdf

臨床心理マガジン25-2号(※リンク)でご紹介した時代の最先端を体験できる講習会です。日本の経済や会社経営,そして人材育成の最前線におけるメンタルヘルスの現状と課題を,隈研吾先生を始めとする各テーマの第一人者や企業の経営者が講義し,質疑応答をします。臨床心理iNEXT代表の不肖下山が企画と司会を担当しております。心理職の発展に向けて心理職ワールドを超えて,広く世の中の動きを知ることを学ぶことができます。

「参加したいのだが,参加費が高すぎる」とのご批判を受けました。それで参加費の大幅値下げを実施しました。6回参加いただける方は1回8千円で参加できるようにしました。それでも高額と思われる方も多いと思います。そこで,臨床心理iNEXTでは,内部スタッフのモニタリング担当者として無料で参加いただくメンバーを若干名募集します。

無料モニターとして参加の条件
①1月21日(金)~3月4日(金)の毎週金曜日(2月11日の休日を除く)の14時~15時30分で実施される6回のオンラインセッションのうち,少なくとも4回は参加可能である。
②参加したセッションの内容についてコメントを書いて提出することができる。

ご興味のある方は,「お名前,ご職業(学生の場合は大学名),年齢,本スクールに参加したい理由」を簡潔に記載の上,下記にメールでご連絡をください。希望者が多い場合には当方で選考させていただきます。
申込先⇒shimoyamalab@p.u-tokyo.ac.jp

モニターになっていただく方は,特に心理職でなくても結構です。産業メンタルヘルスに関心のある方であれば,どなたでも結構です。学生さんでも結構です。モニターとして適任の方(たとえば,企業の人事の方など)をご存知であれば,このモニター募集をご紹介していただければ幸いです。

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5.自分を取り戻すために『アダルト・チルドレンに学ぶ』
 ──メンタライジングも併せて学ぶ

■2022年2月5日(土)9時~12時
https://note.com/inext/n/n9b9cdfb48fe6

日本人は,心理的な葛藤や苦悩を抱えながらも相談に行かずに,自分を責めます。そして,アルコールなどに依存したり,対人トラブルを繰り返したりします。あるいは,うつ状態になり,精神科や心療内科のクリニックを訪れます。

心理職は,そのような状況に対しては,問題が深刻化する前に,自責の罠を抜け出して,自分自身の人生を取り戻すための支援をすることで重要となります。まさに,そのような心理支援サービスを展開するために,「アダルト・チルドレン」の考え方が役立ちます。心理職は,「アダルト・チルドレン」から学ぶことが多いのです。

そこで,本研修会は,日本におけるアダルト・チルドレンの提唱者であり,『アダルト・チルドレン:自己責任の罠を抜け出し,私の人生を取り戻す』(学芸未来社,2021年10月刊)を出版された信田さよ子先生をお迎えしてアダルト・チルドレンについての講演をいただきます。

それを受けて東畑開人先生「アダルト・チルドレンの文化・学術的意義」,下山「利用者にとって自己申告がもたらす意義」のタイトルで指定討論し,さらに上地雄一郎先生「メンタライジングの観点からみた臨床的意義」のタイトル教育講演をしていただきます。参加者は,アダルト・チルドレンだけでなく,メンタライジングの理論についても学ぶことができます。

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6.発達障害の「認知機能の特徴」を学ぶ
 ──発達障害のある人の「ものの見方・考え方」理解へ

■2022年2月27日(日)の9時~12時
⇒臨床心理マガジン次号で募集開始

近年の発達障害の支援では,適応に向けての行動の調整指導や環境の構造化が重視されています。また,発達障害のアセスメントという理由で,過剰に知能検査等の検査が実施されています。

しかし,それでよいのでしょうか。単なる発達障害というラベルを貼ったことで発達障害のある人を理解できたと勘違いしていないでしょうか。単に適応指導をすればよいのでしょうか。発達障害のある人の内面を理解し,気持ちに共感をしているでしょうか。そのような支援は,発達障害のある人の主体性や自己の育成につながっているのでしょうか。

このような疑問に答えるために,『「発達障害のある人の「ものの見方・考え方」──「コミュニケーション」「感情の理解」「勉強」「仕事」に役立つヒント』(ミネルヴァ書房,2021年11月刊)の著者の高岡佑壮先生をお招きしての講習会です。
https://www.minervashobo.co.jp/book/b592118.html

前半の認知編では,発達障害の特性が強い人の見えている世界を,認知の仕方(認知機能の特徴)から説明します。後半の問題編では,そのような世界の見え方だと,どのような臨床上の問題が起こりうるかを理解し,見立て(ケースフォーミュレーション)を立てる際の視座を養うことを目標とします。

本研修では,発達障害支援の際にしっかり見立てる技能の基礎を学ぶことをテーマとしています。本講習会に参加することで,発達障害に関する最新情報を踏まえて,発達障害“観”を見直し,発達障害のある方の体験世界に沿った支援ができる基礎を学ぶことができます。

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7.茂木健一郎さんと臨床心理学の未来を語る
 ──茂木さんと下山晴彦の本音トーク

■2月27日(日)の14時~16時
⇒臨床心理マガジン26-4号で募集開始予定

脳科学者の茂木健一郎さんは,皆様もご存知のように多方面に関心をお持ちです。最近では,心理職である信田さよ子さんや教育研究者の山崎総一郎さんとの鼎談を含む『明日,学校へ行きたくない』(角川書店,2021年2月刊)を出されたりしています。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000397/

茂木健一郎さんと臨床心理iNEXT代表の下山は,お互いが20代のときに知り合っています。大学の学生相談所主催のエンカウンターグループに参加し,その後に茂木さんが箱庭を制作するのに下山が立ち会ったりしています。その時,茂木さんは,まだ法学部の学生でした。そして,その後に理学部の大学院に進学し,脳科学者の道に進むことになりました。

それから20年ほど過ぎた3年前に,北原祐理さん(現在の下山研究室の特任助教)が茂木さんの講演会に参加したのをきっかけとして茂木さんと下山は再会することになりました。茂木さんは,脳科学という観点からだけでなく,学生時代にエンカウンターグループに参加したり,箱庭を作成したりしていることからもわかるように臨床心理学の最新動向にはとても関心を持っておられます。

そこで,日本の臨床心理学の現在ということをテーマとして,青春時代を一緒に過ごした(といっても,下山のほうが5歳ほど年上ですが)仲間として,また臨床心理学の将来に関心をもつ研究者同士として,オンラインのトークイベントをすることになりました。

〈ゲスト〉茂木健一郎,〈ホスト〉下山晴彦,〈アシスタント〉北原祐理というメンバーでの企画です。北原さんには,若手心理職代表として参加していただきます。前半は,3人で臨床心理学やメンタルヘルスの現状について自由にディスカッションしたいと思っています。後半では,参加者の皆様からの質問も受け付けて,茂木さんも交えての参加型セッションにする予定です。

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8.スクールカウンセラーのための関係行政論
 ──教育分野で活躍できる心理職になるために

■2022年4月24日(日曜)9時~12時30分(予定)
⇒3月発行の臨床心理マガジン27号で募集開始予定

『深掘り!関係行政論 教育分野──公認心理師必携』(北大路書房,2021年12月刊)の著者 高坂康雅先生による実践的な関係行政論講義です。スクールカンセリング活動を支える法律と制度を理解できます。
https://www.kitaohji.com/book/b594771.html

日本のスクールカンセリングは,面接室内で生徒や保護者の気持ちに共感する相談モデルを中心に発展してきました。そのため,学校を始めとする教育分野の制度を基盤として学校組織全体に向けて活動を構築し,展開することが,スクールカウンセラーの課題となっています。

そこで,スクールカウンセラーが,今後教員や教育委員会,さらには保護者との安定した連携を構築するためのポイントを深掘り解説します。すでにスクールカウンセラーとして仕事をされている心理職,スクールカウンセラーを目指して公認心理師の勉強をしている人,さらには公認心理師試験の受験勉強をしている人には,即効力のある講習会です。

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9.心理職統合に向けて臨床心理学史を学ぶ
 ──心理職“仲間割れ”の源流を探る

■2022年5月頃を予定
⇒4月発行の臨床心理マガジン28号で募集予定

臨床心理学の歴史は面白い! 19世紀の後半,社会が近代化する中で“心”を扱う学問として心理学が,そして“心”の問題を解決する活動として心理療法が誕生しました。その後,20世紀においてさまざまな学派が生まれ,争い,そして統合して臨床心理学が成立していくダイナミックな歴史物語があります。そこに心理職の“仲間割れ”の源流があるとともに“統合”のヒントがあります。

そこで,『臨床心理学史』(東京大学出版会,2021年11月刊)の著者であるサトウタツヤ先生をお迎えして臨床心理学発展の歴史物語を学びます。同書は,各学派の創始者の写真が豊富に入っており,読み進めることで自然と臨床心理学の専門知識を習得できます。心理学や臨床心理学の辞典機能を備えた読む歴史物語です。心理職の“仲間割れ”の原点を知ることができるだけでなく,公認心理師試験の受験勉強にも役立ちます。
http://www.utp.or.jp/book/b372470.html

近代化の中で,臨床心理学という新しい,心を扱う学問の科学的位置づけをどのようにするのかの相克こそが,臨床心理学の混乱と発展の根底にあります。したがって,臨床心理学史を学ぶことで,日本の臨床心理学の現在地を確認できます。

日本では心理職の“仲間割れ”が起きていますが,その意味をより大きな観点から見直すことができます。仲間割れは単に感情的な対立だけでなく,学問的な意見相違が背景にはあることを理解して,歴史的なマクロな観点から心理職の統合の方向性を探ります。

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■デザイン by 原田 優(東京大学 特任研究員)

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