33-4.分断を超える☆みんなの春季研修会
<ご案内中の事例検討☆研修会>
臨床心理iNEXT大変革の予告キャンペーンでiNEXT有料会員は無料、それ以外の参加者は1000円で参加できます。
1.生まれ変わる臨床心理iNEXT
臨床心理iNEXTは、今年のクリスマスに新たに生まれ変わります。「みんなの心理サービス、選ばれる心理職へ」を新たなモットーとして、サービスの内容を一新します。
今の日本では、心理支援サービスを必要としていても、どのようにアクセスして良いのか分からない人々が数多くいます。そこで、臨床心理iNEXTは、「より良い心理サービスをユーザーである利用者に届ける仕組みを創ること」を活動ビジョンとしました。
臨床心理iNEXTは、サービスギャップを超えて、利用者と心理職がつながり、心理サービスをみんなのものにすることを目指します。そのために今、最も必要なのは、心理職がまとまることです。
2.分断を超えて心理職のコミュニティとなる
公認心理師制度がスタートした後に、心理職の間でさまざまな分断が新たに起きてきました。もちろん国家資格となることで心理職の地位が上がるという利点はありました。しかし、同時に制度の中に組み込まれることで権力にコントロールされることも起きてきます。権力を求め、地位を巡っての争いも起きます。
それは、心理職にとっても、また利用者にとっても何も良いことはありません。国民の皆様から「選ばれる心理職」になるためには、分断を超えて心理職が協力して技能を高め、より良いサービスを提供していくことが、今こそ求められています。
そこで、臨床心理iNEXTは、「心理職が協力して技能を高めるコミュニティの場となること」をミッションとしました。分断を超えて、心理職が協働して技能を磨くためのコミュニティとなることが臨床心理iNEXTの新たな目標です。
3.新たな芽吹きとなる春の研修会
暦の上で春夏秋冬を分類するのが二十四節気です。それによると、2月4日頃の「立春」から4月20日頃の「穀雨」までが春となります。新たに生まれ変わる臨床心理iNEXTは、2023年の春季に、心理職が分断を超えて技能を磨き、より良い心理サービスを提供するための「みんなの春季研修会」を企画しました。
多くのベテラン心理職は、既に自分が所属する学会や職能団体で地位を固めているので、ご自身の所属団体の運営を担う責任ある立場になっています。その結果、分断や世代を超えての心理職全体の技能向上や仲間づくりに関心が向かなくなります。
そこで、自由気ままな(?)臨床心理iNEXTでは、春到来とともに新たな芽吹きが生じるように、分断や世代を超えて心理職全体が交流し、新たな協働が生じることを期待して春季研修会を企画しました。これらの企画が穀雨を得て、新たな発展につながることを期待するところです。
詳しくは、下記のイベント紹介をご覧ください。これらの企画の受付については、約一ヶ月前から、臨床心理マガジンや臨床心理iNEXTサイト(https://cpnext.pro)で告知します。ぜひ、ご覧ください。いずれも臨床心理iNEXT有料会員は無料、それ以外の方も1000円で参加できます。
4.分断を超える事例検討会「認知行動療法の行動技法をまなぶ」
日本の認知行動療法の発展をリードしておられる認知行動療法のエクスパート神村栄一先生に(模擬)事例を発表していただく事例検討会を開催します。山崎孝明先生1※)や野中舞子先生※2)など、さまざまな学派や世代の心理職がメンバーとして参加し、神村先生との質疑応答を通して「認知行動療法における行動技法をまなぶ」ことができる研修会とします。
※1)「精神分析の歩き方」(金剛出版)著者https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b582669.html
※2)「児童・思春期の強迫スペクトラム障害に関する臨床心理学的研究」(風間書房)著者
https://www.kazamashobo.co.jp/products/detail.php?product_id=2211
これは、ベテラン心理職が事例を発表し、学派を超えてさまざまな視点から若手や中堅心理職が質問をしていく異種格闘技系事例検討会です。ぜひ、多くの皆様のご参加を期待しております。
心理職の技能向上のための中核にあるのが事例検討会です。長老やベテランの心理職が中堅や若手を指導するという権力構造を壊して、ベテラン心理職が事例を提供し、そこに中堅や若手の心理職が質問するという事例検討会イノベーションを進めます。
5. 直前に役立つ「みんなの公認心理師試験対策」セミナー
公認心理師試験は、年々実施時期が早まり、第6回試験は来年2023年5月に行われます。そして、第7回からは、修士課程修了前の3月実施となります。これは、公認心理師試験の受験生にとっては、大変なことです。
タイトな大学院カリキュラムをこなさなければなりません。授業だけでなく、内部実習や外部実習を行います。修士論文も書かなくてはいけません。就活もしなければいけません。それに加えて公認心理師試験の受験勉強も必要となります。大学院教員も、院生指導のあり方を考え直さなければいけなくなるでしょう。
受験生は、修士論文を書き上げ、正月のお雑煮も食べる暇なく論文発表を終えたとしても、ゆっくりと過ごすことができないかもしれません。そこで、臨床心理iNEXTは、“まだ間に合う公認心理師試験対策セミナー”を開催することにしました。
公認心理師試験対策で評価の高い河合塾KALSの人気講師の宮川純先生※3)をお迎えして、試験までの3ヶ月をどのように過ごすのかを伝授する応援セミナーを開催します。
※3)「赤本 公認心理師国試対策 2023」(講談社)著者
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371379
セミナーでは、試験に合格して働く若手心理職が、受験生の先輩として参加し、宮川先生と試験対策について議論する「先輩と宮川先生が薦める直前試験対策」や、現役受験生が宮川先生に試験に関する疑問などを質問し、質疑応答を通して学びを深める「宮川先生が受験生の質問に答える」のコーナーを設けました。受験生だけでなく、受験生を指導する教員の皆様にもぜひご参加いただきたく思っています。
公認心理師試験は資格を得るためには必要です。しかし、筆記試験のみであり、内容も偏りがあるため、現場での臨床実践とは直接結びつきません。そのため、受験生と現場の心理職の分断が起きています。
ほとんどの心理職は、試験が終われば、試験への関心を失います。試験内容がどれだけ偏っていても、誰もそれを指摘しません。多くの大学院教員も、試験問題には関心を持っていません。(というか、問題が特殊なものが多いので、受験を終えてしまえば問題を理解できなくなります。)
職能団体も学会も、公認心理師試験の歪みを取り上げることはなく、困難を受験生に押し付けてしまっています。そこで、臨床心理iNEXTは、受験OBOGの心理職が受験生を応援する研修会を企画しました。
6. 心理職の主体性を取り戻すシンポジウム
刊行が遅れていた「現代の臨床心理学」シリーズ(東京大学出版会)の全5巻※4)が2023年1月に全巻出版の運びとなりました。それを受けて刊行記念シンポジウムを東京大学出版会と共催することとなりました。
※4)https://note.com/inext/n/n096c5b6e9f03
公認心理師制度は、本当に心理職の専門性発展のために役立っているのでしょうか。心理職は、主体的に自らの発展に関わっていけているのでしょうか。与えられた公認心理師制度を既定路線として、その枠内での活動しか考えられなくなっていないでしょうか。
心理職が公認心理師制度を批判的に見ることができなくなっているとしたら、それは、心理職の専門性を中心に考えられなくなっているからです。つまり、多くの心理職は、公認心理師制度に過剰適応してしまっているのかもしれないのです。そこで、心理職の主体性を取り戻すために「日本において臨床心理学体系は、本当に必要なのか?」という自虐ネタをテーマとしたシンポジウムを実施することにしました。
「日本公認心理師協会」※5)会長の信田さよ子先生、「公認心理師の会」※6)理事長の丹野義彦先生にご登壇いただき、臨床心理学の存在意義を問う議論を展開したいと思っています。また、次代を担う中堅心理職の三田村仰先生と東畑開人先生にもご参加いただき、職能団体や世代の分断を超えて心理職の未来を創造するシンポジウムにしたいと考えております。
※5)https://www.jacpp.or.jp
※6)https://cpp-network.com
7. 日本の子どもを救う「安心ゲットプログラム」講習会
皆様は、日本の多くの子どもに不安対処の心理教育を実施すると、逆に不安が高まる傾向があるのをご存知でしょうか。私たちチームは、2011年の東日本大震災でトラウマ被害を受けた子どもの心理支援の経験を踏まえ、子どもの不安対処の心理教育プログラムを開発し、実践してきました。しかし、効果研究では、実施後に不安が高まるという結果が出ました。
当初は、我々のプログラムや実施方法に問題があると考えました。しかし、聞き取り調査をする過程で、日本の子どもは不安を抑圧する傾向があるため、不安をテーマとする心理教育をすると、逆に不安を意識して不安が強まるということがわかりました。教員や父兄も、「寝た子を起こさないように」と、子どもが不安に直面するのを避けることを求めました。
そこで、日本の文化に沿って、不安に直面するのではなく、安心を得るための「安心ゲットプログラム」を開発したところ、事前と事後で効果が見られるとの研究結果を得ることができました。(効果研究については、現在投稿準備中です。)
臨床心理iNEXTでは、この「安心ゲットプログラム」のデジタル版を制作し、スクールカウンセラー等の心理職がオンラインで簡単に心理教育プログラムを実施できるシステムを用意しました。そして、若い心理職の皆様が最新の心理教育プログラムを実施するための研修会を企画しました。
プログラムのオンライン化は、ベテラン心理職と中堅心理職のチームである我々が開発した心理教育プログラムを若い世代の心理職に引き継ぎ、幅広く活用するための環境づくりでもあります。
8. 心理職の分断を超えて
心理職の分断は、さまざまなレベルで起きています。心理療法の学派間の分断が最も伝統的なものであり、根深いものです。これは、学会や職能団体の分断の温床となっています。大学の教員心理職と現場の実践心理職の分断もあります。しかし、それだけではありません。年代的な分断もあります。
臨床心理士の時代をリードし、公認心理師法の成立に尽力した長老(70~80歳代)を第1世代とするならば、第2世代は公認心理師の時代をリードしつつある現役のベテラン心理職(50~60歳代)となるでしょう。さらに現場で中心となって頑張っているのが中堅心理職(30〜40歳代)であり、不安の中で必死に仕事を覚えようと努力しているのが若手心理職(20歳代)です。
心理職の分断においてマイナスの影響を最も深刻に受けているのが中堅世代と若手世代です。ベテラン心理職の多くは、自身の職業生活は安定しているといえるでしょう。しかし、中堅や若手は、これから心理職としての発展を目指す不安定な立場にいます。分断によって、自身が目指す心理職のモデルが見えなくなり、仲間作りも難しくなっています。非常勤の掛け持ちで収入も不安定な若手や中堅の心理職は、ますます心理的安全性が持てなくなっています。
公認心理師制度では、心理職の職業分野は、早々に5分野に分かれます。職能団体は、その5分野を前提とした上位資格を作りつつあります。そのため、分野単位の分断も進むことになります。心理職として土台作りをしている若手や中堅心理職は、分断の混乱の中でますます不安定な立場に置かれてしまいます。
だからこそ、臨床心理iNEXTは、心理職がみんなで協力して発展できるための場となるコミュニティ作りを新たなミッションとしました。
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■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)
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