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17-3.今こそ出番だ!ブリーフセラピー!

(特集 心理職の未来を創る)
下山晴彦(東京大学教授/臨床心理iNEXT代表)
黒沢幸子(目白大学教授)
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.17

1.未来志向のブリーフセラピー

臨床心理マガジン17号の全体テーマは,「心理職の未来を創る」です。

そこで,今回は,未来志向の心理療法である「解決志向ブリーフセラピー」の研修会の御紹介です。解決志向ブリーフセラピーのリーダーである黒沢幸子先生を講師とする研修会を企画しました。ぜひ多くの皆様のご参加を期待しています。

心理療法においては,じっくり時間をかけて自己の心の奥深くの深層を理解し,問題を解決していくことは,とても重要です。特に他者に気を使い,世間を気にして自分の欲求を我慢して,本当の気持ちを心の奥底に仕舞い込む傾向の強い日本人にあっては,心の内面を見直す心理療法は必須です。

しかし,現代社会において人々は,日々忙しく生活しています。さらにはコロナ禍による自粛生活が長引き,ストレスが積み重なってきています。このようなストレス状況では,まずは現実生活で起きてきている問題に対処し,少しでも未来に希望が持てる心理支援が強く求められています。

解決志向ブリーフセラピーは,“より良い未来を創っていくためにはどのように問題を解決していくのがよいのか”という未来志向の発想に基づきます。そして,今ある資源を最大限に利用して,利用者と一緒に問題解決の方法を探っていきます。

今こそ「解決志向ブリーフセラピー」の出番なのです。

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2.「解決志向ブリーフセラピー」研修会へのお誘い

【技能研修会】
■解決志向ブリーフセラピーの基礎と技法
[日時]5月16日(日)13時~17時※
[講師]黒沢幸子(目白大学)
[司会]下山晴彦(東京大学)
[参加費]
・臨床心理iNEXT有料会員:無料
・臨床心理iNEXT有料会員以外:3,000円
[参加人数]先着250名まで
[申込み]
臨床心理iNEXT有料会員⇒https://select-type.com/ev/?ev=0XUgs2cpQ_o
臨床心理iNEXT有料会員以外:https://select-type.com/ev/?ev=ATOTlHdDiSI
[プログラム]
①その発想の前提(考え方・ものの見方)
②代表的な技法,
③面接展開の流れ等の基礎
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※臨床心理マガジン14-1号で5月30日開催と予告しましたが,変更となりました。ご了承ください。

もともとブリーフセラピーは,家族療法のシステム論やコミュニケーション理論との関連で発展してきました。また,現実の問題解決という点では認知行動療法と相性がよくなっています。さらに,ブリーフセラピーは,学校コミュニティの資源を活用しその協働を促進するという点でスクールカウンセリングでの使い勝手が非常によい方法です。

このようなブリーフセラピーは,コロナ禍で日常生活が限定され,ストレスが高まっている人々への支援において,とても役立つ方法です。家族療法,認知行動療法,スクールカウンセリングなどと組み合わせてご活用いただけます。
ぜひ多くの方の参加を期待しております。

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3.黒沢幸子先生からのメッセージ

黒沢幸子顔写真

解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy)は,クライエントに深い敬意を払い,クライエントの「解決」(望んでいる未来)と,問題が起こらずにやれているとき(例外)や,クライエントの内外のリソースや強みに焦点を当て,クライエントと協働して解決を構築していく理論と技法です。

「解決志向」は,対人関係や生活の良循環をつくり,シンプルで安全性の高い効果的効率的な未来志向の汎用モデルです。

今回は,①その発想の前提(考え方・ものの見方),②代表的な技法,③面接展開の流れ等の基礎を,事例を交えながら解説します。「解決志向」を学ぶことで新たな心理臨床の地平が拓かれることを願っています。

時間は,あえて区切れば,めやすとしては,①が1時間,②が2時間,③が1時間程度でしょうか。ただ,①が②の技法の開発に連動しており,②を説明する際に,適宜③の事例等を交えると思いますので,①②③はきちんと区切れず,重層的・螺旋的になるかと思います。

【黒沢先生の関連書籍】

◆『解決志向ブリーフセラピー』
https://www.honnomori.co.jp/isbn4-938874-27-X.htm
森俊夫・黒沢幸子(著),ほんの森出版

◆『解決志向のクラスづくり 完全マニュアル:チーム学校,みんなで目指す最高のクラス!』
https://www.honnomori.co.jp/isbn978-4-86614-104-6.htm
黒沢幸子・渡辺友香(著),ほんの森出版

4.解決志向ブリーフセラピーの魅力

解決志向ブリーフセラピーの魅力について,研修会講師の黒沢幸子先生にインタビューした臨床心理マガジン13-2号の記事から抜粋をして紹介します。

・私はブリーフセラピーの中でも解決志向です。解決志向は,問題にフォーカスしません。クライエントさんがどんな風になっていきたいかに焦点を当てます。今後に向けて望んでいることや求めている未来を,問題を一回飛び越えて,未来の方から見ていきます。

・例えば,喧嘩をしていても,「なぜ意見が合わないのだ」,「どちらが正しいのだ」となって,相手の問題を見つけて,それを潰そうとすると喧嘩が深まっていきます。相手と別れたいとか,時間をかけてその問題を解決していくというならば,それでもよいでしょう。しかし,本当は別れたくないということではあるならば,仲良くしたいという方に着目してやっていくことは,日常生活でもやっています。ある意味で解決志向ブリーフセラピーは,コモンセンスセラピーではないかという方もいます。

・問題解決をしようとすればするほど,その悪循環にはまるということです。それをどう切るかという考え方が重要となります。解決志向ブリーフセラピーでは,問題のないところに解決の種があると考えます。

・解決志向ブリーフセラピーは,もともと家族療法の問題のループをどうするかという考え方から入っていきました。その中で,たまたま「例外の発見」というのがありました。つまり問題ではない時に注目するのです。例えば,暴力で困っている時に,暴力が無くてマシな時があるのかに注目します。その時はどうしてマシだったのか,それはどこから来ているのかをみていきます。


【黒沢先生の関連書籍】

『やさしい思春期臨床──子と親を活かすレッスン』
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b514815.html
黒沢幸子(著) 金剛出版

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5.スクールカウンセリングの技を磨くために

解決志向ブリーフセラピーを活用してスクールカウンセリングの技を磨くコツについて,黒沢幸子先生にインタビューした臨床心理マガジン13-3号の記事から抜粋をして紹介します。

そうですね。家族療法やブリーフセラピーでもジョイニングが8割という言い方をします。うまく組織のお仲間に入れていただいて,うまく宿れたら,そこで初めて有用な活動がやっていけるということです。ジョイニングできれば8割まではうまくいくので,残りの2割はジョイニング後にやればよいということだと思います。

──まずはジョイニングして,次に様子を見ながらニーズに即してシステムを構築していくということですね。

ええ。あとは“pace and lead”という考え方もあります。催眠から来ている技法です。相手のペースに合わせるペーシングができているときに,こちらが一歩リードすると,相手はついてきてくれるという技法です。ミルトン・エリクソンがやっている技法で,本当にいい形でシンクロできていればこちらの動き,いわば波に乗ってきてくれるということです。その考え方も発想の中にはあります。

──スクールカウンセラーとして働くうえでは,個人療法の発想を抜けて,ジョイニングで学校コミュニティに入り,さらにペーシングしながら,少しずつ新しいシステムを構築し,コミュニティを変えていくという“技”があるのですね。

解決志向ブリーフセラピーでは,“one behind lead”という考え方もあります。これは,一歩下がってリードするという意味ですから,矛盾した言葉ですよね。普通,リードは先に立ってするのですが,この場合は後ろからするというわけです。“one behind lead”は,セラピストのスタンスと言われています。

“one behind lead”を技法として使いこなすためには,先を見通せていないといけません。「クライエントの望む姿が手に入る方向に行くのがよい。でも,この人がそのことがわかるようになるために,どのように一歩後ろから,質問するのがよいか」を考えることができためには,先を見通せていないといけないわけです。クライエントさんが「こういうことなのですね」と自分で気づくところに,どのようにもっていくかですね。

【黒沢先生の関連書籍】

『明解!スクールカウンセリングー:読んですっきり理解編』
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b184001.html
黒沢幸子・森俊夫・元永拓郎(著),金子書房

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6.研修会の追加情報

現在,申込受付をしている研修会についてのお知らせです。
申込多数のため,募集人数を増やしました。今からでも参加できます。

1)Wechsler式知能検査+発達障害理解

心理職にとって必須技能となっているWechsler式知能検査の技能研修会です。しかも,
発達障害を深く理解するために知能検査をどのように使いこなすのかを第一人者の糸井先生がわかりやすく,体系的に解説します。さらに,事例検討も実施するので,具体的な使い方を知ることができます。

◆Wechsler式知能検査の活用法
──発達障害臨床を中心に──

【講師】糸井岳史/高岡佑壮
【日時】4月25日(日)14時~17時
[申込み]
・iNEXT有料会員(無料)⇒https://select-type.com/ev/?ev=mTkAjWrnELI
・iNEXT有料会員以外(3,000円)⇒https://select-type.com/ev/?ev=IBQC2883T7Y


2)公認心理師試験への取り組み方指南

現在募集中の「5月晴れ研修会」の第一弾のセミナーです。受験合格テクニックだけでなく,公認心理師とは何かの本質を議論します。公認心理師試験に関心がある学生さん,公認心理師養成カリキュラムに関わっている教員や心理職の皆様のご参加を期待しています。

■第4回公認心理師試験合格に向けて
──難問・奇問・珍問に負けないために──

[講師]宮川純/髙坂雅康/下山晴彦
[日時]5月2日(日)13時~16時
[参加費]無料(臨床心理iNEXT会員優先)
[申込み]⇒https://select-type.com/ev/?ev=pnv21P2MEcw

■デザインby 原田 優(東京大学 特任研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第17号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.17


◇編集長・発行人:下山晴彦
◇編集サポート:株式会社 遠見書房


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