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掌編小説 短編小説

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#短編小説

遠き島より

 じいさんの家の床の間には椰子の実が転がっていた。それは十分に乾燥しずっしり密度感があっ…

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2年前
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物語

 十代の最後の日にミチは一つの物語を書き始めた。 その物語は高校生の頃から温めていた筋書…

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2年前
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幸せの光量

 世間からは相変わらず暗いニュースしか聞こえてこない。それでも私は富に恵まれている。運に…

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2年前
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ヒサシブリちゃん

 私はOLだ。  求職中だが南大阪出身なのでオオサカレイディでOLだ。  そんなくだらないこと…

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2年前
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Why

 H氏は妻を失い、そのあまりの悲しみに気が狂いそうになった。  これではいずれ人格が破綻…

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2年前
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シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム

 料理研究家としてまだまだ無名の私にとってこの度招待を受けたイベントはこれまでにない華々…

P-610
2年前
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一本!

 今日は告白をする日だ。  別にそんな専用カレンダーがあるわけではないのだが、自分が逃げないように週初めから決めていた。  私はリップクリームを塗りながら、その唇を勝負に臨む時の形に結んだ。  私は女子剣道の名門高校で主将を務めている。  武道部の主将ともなれば、鋼のような精神を持ち、何があっても堂々としている、と思われている。  武具を着けていない時にも頼られて同僚や後輩たちから恋の相談がかなり舞い込んでくるが、自分からはしたことがない。  しかし私だってお年頃。相談した

どどん!

 一緒に宮太鼓叩こうよって、これまで二回裕太くんから誘われた。  最初の時はまだ小学生の…

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2年前
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ガムランボール 【短編小説】

都心にありながら新しさを競う周辺の景色には全く関知しないかのような古びた店構え。そしてど…

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3年前
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雲の上のふじこさん 【短編小説】

僕はモノ書きになりたいと思っている。 それなりの気概を持っているつもりだが、時々はもう一…

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3年前
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お空の神様 【短編小説/何故あめは降るのか】

ヒロシはよいしょよいしょとじょうろを持ち上げながら、じいさんが一生懸命手入れしている花壇…

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4年前
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空は泣くのか 【短編小説/#何故あめは降るのか】

涼子は雨の景色が好きだった。 とくにこの部屋から見えるなんということのない坂道と古い低層…

P-610
4年前
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魔法使いはいらない

 五年生になった時から担任の先生がキラいでキラいで、いっつも顔怒ってるから誰怒っとるんや…

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4年前
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ぶっさいくな恋 【短編小説】

ケンタ、なにをそんなシケた顔をしとるんや。 わしらみたいなよれよれでもお天道様のほう向いてしゃんと生きとるんやから、子どもはもっと顔上げて元気な顔を見せなあかん。 え、告白して振られたってか。 なんや、そんなことかいな。ふつうやないか。 アドバイスをくれ、てか。 よれよれの年寄りがぴちぴちの中学生に恋の御指南か。えらい時代になりよったなあ。大丈夫か日本は。 ちょっとええかっこ言うようやけど、わしようもてたんやで。 ところがや、 恋や愛やの問題はもてたら解決いうことやないねん