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掌編小説 短編小説

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記事一覧

遠き島より

 じいさんの家の床の間には椰子の実が転がっていた。それは十分に乾燥しずっしり密度感があっ…

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2年前
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物語

 十代の最後の日にミチは一つの物語を書き始めた。 その物語は高校生の頃から温めていた筋書…

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2年前
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羨ましいクリスマス

 サンタさんだって時には子どもたちが羨ましい時があるのです。  子どもたちがすやすやと眠…

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2年前
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幸せの光量

 世間からは相変わらず暗いニュースしか聞こえてこない。それでも私は富に恵まれている。運に…

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2年前
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カッタン

 だまって私を見据える母の目のどこにも目立った変化をとらえることは出来ないが姉が言うには…

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2年前
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じぶんのいろ

 買ったばかりの青いバスタオルをご主人が不用意に洗濯機に投げ入れたものですから、その色が…

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2年前
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約束

「お父さん!お母さん!」  勢いよくハルくんが朝の食卓に飛び込んできた。 「サンタさんからプレゼント!ほら見てごらん」  両手で頭の高さまで掲げた箱には白地に金と銀の雪の模様の包み紙。その上から赤と緑の太いリボン。  その場でその包み紙をしわくちゃにしながら開いてさらに金切り声で歓声を上げる。 「わあ!サンタさんにお願いしていたロボットだ!」  今度はロボットを抱きかかえて子ども部屋と食卓をスキップしながら行き来する。  嬉しい表情が溢れて止まらない。  ハルくんのお父さんと

雨音

 少女は雨が降るとキャノピーからぽつぽつと垂れる雨の滴をじっと見つめる。  その様子がよ…

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2年前
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勲章

 ばあさんはじいさんの手をとりながら、ありがとうあなた、と言った。  じいさんはばあさん…

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2年前
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「武吉さんと私とはどうしても結ばれることはならないのですか?」 「父が私たちのことを認め…

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2年前
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ヒサシブリちゃん

 私はOLだ。  求職中だが南大阪出身なのでオオサカレイディでOLだ。  そんなくだらないこと…

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2年前
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ハッピーハッピークリスマス

 娘は毎年この時期サンタクロースに手紙を書く。  パパにもママにも見られないようにサンタ…

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2年前
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Why

 H氏は妻を失い、そのあまりの悲しみに気が狂いそうになった。  これではいずれ人格が破綻…

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2年前
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シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム

 料理研究家としてまだまだ無名の私にとってこの度招待を受けたイベントはこれまでにない華々しい舞台であった。  全国でも名だたる名門小学校の創立百周年記念式典に記念講演の講師という大役を授かったのである。  休日を選んでの式典でホールは早くから満席である。    演題「世界のご馳走こんにちは」 ***  講演はいつも通り順調に進みクロージングに向かう。  すでにその頃には何人かのマスコミカメラマンたちに記事用の目線をサービスするほどの余裕ぶりであった。  女性MCが、 「あ