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2020年の楽しかったもの、振り返り

2020年の12月から書き始めて、書き終わったのは2021年の2月です…。楽しいものとそれにまつわるあれやこれが多すぎました。漫画→映像→ゲーム→音楽の順。名前が出てるやつはぜーーんぶ好きです。おすすめです!

漫画


 2020年は面白い作品がいくつも堂々の完結を迎えた年でした!現在進行形で大フィーバーを巻き起こしている(ここを書いてたのは1月現在)『鬼滅の刃』を筆頭に、『ハイキュー!!』『BEASTARS』『水は海に向かって流れる』『金剛寺さんは面倒臭い』『大奥』と面白い漫画が面白いままゴールを走り抜けていった印象です。特に『鬼滅』の終わり方は他に類のないもので面白かったですし、『ハイキュー!!』も普通なら最終話のみで登場するような主要キャラの未来の姿を、数話を使って描くボーナスシリーズみたいな最終章を行っていたり、『金剛寺さん』もここから先は蛇足です!と宣言してから後日談シリーズを展開したりと画期的でした。

 上記のいずれの作品も最終回(章)ではキャラクターたちの人生や想いが続いていくこと、その姿勢の美しさ・真摯さを明確に打ち出して描いていた気がします。『大奥』も繋がりというところが仕掛けとしてあったのと、和宮様が江戸を思うところが熱い最終章で…。『チェンソーマン』『私の少年』も物語と感情に区切りをつけつつ、眼差しは未来へ、という形は同様のように思えます。

 ダークなものからラブコメディまで多様な作品が、ある種の爽やかさと人間への讃歌を伴って最終回を迎えているのが2020年はとても印象的でした。




 現在も連載中の既存作品では『呪術廻戦』が物凄く面白いと思います。渋谷事変はスケールが大きい戦いであるだけでなく、虎杖の覚悟を問うところに物語の重心が戻ってきたのがとても熱かったです。

 『2.5次元の誘惑』もコスプレという題材ならではのアイディアや演出がありつつ、夏コミ編で描いている感情と思想はパワフルに万人に刺さる「少年漫画」なので凄まじいです。熱すぎ…。


 2020年に新しく始まった作品では『竜と苺』と『メダリスト』が戦う少女たちを鮮烈に描いていて、前者は女流将棋棋士の成り上がりモノで、前作の『響』同様、苛烈に(相対的な)悪との対決を、後者はフィギュアスケートを題材にしがらみや才能への抗いを描いています。絵もテイストもそれぞれですがどちらも対決の盛り上げ方が巧み、かつ剥き出しの感情のぶつかり合いで読みごたえ抜群です。


(↑公式PVじゃないんだけど、凄く良かったので…)


 『シャングリラ・フロンティア』と『葬送のフリーレン』は、ゲームのファンタジーの枠組みを利用した、いわゆる「転生・無双モノ」の潮流から新しく生まれてきた、企画も中身も本格的に面白い新作としてどちらも存在感がありました。『SAO』『転スラ』『Re:ゼロ』『Dr.STONE』『異世界おじさん』でもう、異世界モノはやり尽くされてしまい、しっかり本格的に面白いもの・新しいものはもう出てこない気がしていましたが、裾野はまだまだ広いのかもしれません。



 少女漫画で、僕が特に好きだったのは『恋に無駄口』と『地図にない場所』です。全く異なる読み味の作品ですが、どちらも台詞・ナレーションの魅力が素晴らしく、楽しいイケメンパラダイスも、曖昧に揺れる人間への眼差しも、作家さんの現代的な感覚と切り口を言葉の力で読まされる体験として新鮮に楽しめました。


 2020年は「終わった」後の物語が異彩を放った年でもあったと思います。『GO!ハッピーマニア』は結婚の後の物語を描き、男と女の人生のままならなさに漫画的なハッタリやユーモアを交えていて、共感と刺激の配分が抜群でした。
 『BARDON』は前科者たちが人生をやり直す中で、覚悟や友情や後悔などが描かれます。
 まだコミックスは出ていませんが『星明かりグラフィクス』の作家さんの新作『生き残った6人によると』も世界がゾンビまみれになった後のお話で、ショッピングモールで籠城をするのだけれど、そこでテラスハウスのようなノリの(洒落臭い)ラブ&駆け引きが起きちゃう、という漫画です。僕は恋愛リアリティーショーが好きではないので、ちょっと意地悪な本作の企画性は好きなのですが(前作『星明かりグラフィクス』でも大学生のイキがり方への視点はキレキレだったし)、それだけでない主人公のドラマも楽しみです。





 苛烈な女同士の愛と友情の『水野と茶山』、同性愛が犯罪の世界を描く『ポラリティ透明期』、両作は異なった方向ですが嘘がかなり大きく構えられていて、その中で暴れまわる本物の感情のパワーが印象的でした。同性愛とは違いますが『カラオケ行こ!』も熱くて面白かったです。可愛らしい男性達が楽しい。


 同性愛と同様に、漫画作品が扱う「新しい普通さ」の拡張も顕著だったように思います。『リエゾン』はADHDや発達障害への医療・診療を題材にしつつ、ヒロイン自身も発達障害の診断を受けるキャラクターですし、『指先と恋々』はヒロインが壟者ですし、2019年スタートですが『ワンダンス』は主人公が吃音症です。『おかえりアリス』では、「女になった訳じゃない、男を降りただけ」と宣言するヒロイン(?)も登場します。この方面では『光とともに』が金字塔ですし、『聲の形』では「耳が聞こえない」ということとそれを取り巻くいじめなどを真っ正面から描くことがひとつのブレイクスルーだったように思うのですが、近年は今まで描かれなかったような人々が、すんなり個性をキャラクターの特徴のひとつとして消化されて登場しているのが価値観・倫理観の更新の兆しを感じさせました。あと『ワンダンス』は『ねぎま』とか『絶望先生』の"見開きでクラスメイト全員の顔と名前が紹介されるやつ"をダンス部の女の子たちでやってて面白かったのですが、全員名前がカッコ良くてびびるので必見です。


 人文科学味の強い『ダーウィン事変』と『チ。ー地球の回転についてー』もわくわくです。人間の社会が揺るがされるドラマの続きが気になります。
 あとは、そこを漫画にする!?という驚きがあったのは、ノーベル文学賞受賞作をコミカライズした『戦争は女の顔をしていない』と漫画版『サピエンス全史』です。もともと骨太で迫力のある文章に絵が加わることで更に多くの人に物語が広まるなら人間の文明がより向上するだろうなぁ、って感じます。
剣道部って、その道場や部活の流派にもよるんでしょうけれど、胴着の袴の下に下着をつけていない人も多いらしいです。『先輩、パンツ履いてますか?』では、憧れの先輩が履いているのか、いないのか、気になって仕方ない天才剣士ヒロインが主人公です。そんなところに目をつけて漫画にしてるのも凄い…。



映像


 国内の映画では『鬼滅の刃 無限列車編』が凄すぎました。映像がリッチすぎます。もともと原作でも人気があって緊張感のあるエピソードに、動かし方・見せ方のアイディアも豊富で、そもそも超美麗だったテレビアニメ版よりもさらに数段面白かったです。激情系バトルなので劇場映えが凄い…。


 国外作品では『TENET』がクリストファー・ノーランの感情系SFここにあり!って感じで最高でした。あり得ない作り込みの演出・映像と「これがやりたいんや!」を貫くストーリー&設定。時間モノSFで全然新しいギミックってまだ作れるんだなとビックリしました。メイキングがパッケージには収録されているのでそちらも楽しみです。


 中国が生んだ最強のアニメーション『羅小黒戦記』もビックリしました。とにかく動きまくるし、デザインも可愛いし…ジャパニメーションと少年漫画を吸収して、肥沃なチャイニーズカルチャーと混ぜ合わせた結果、国外でとんでもないバケモンが生まれていた衝撃…。かかっているお金の規模的に、国内作品が今後太刀打ちできるのか、という焦りすら感じました。


 上述の2作に関連して、急に色っぽめのコンテンツの話をして申し訳ないんですけど、聞いてください。成人向け漫画やアダルトビデオ、短編のBL作品によく見られるストーリーの特徴なのですが、限られた尺で登場人物たちの絆や感情をマックスまで持っていかなきゃいけないので、短い描写で急に登場人物達が盛り上がり始める、というのがあります。「お約束のシチュエーションだから、もちろん盛り上がるに決まってるよね!お決まりの型だからキャラの心の動きは想像で補完よろしく頼むわ!」という…。これを仮に「ポルノ的飛躍」と呼びたいです。これは例えば、作品の売りが「クライマックスの感情(たとえば濡れ場だったり、巨大感情だったり、百合だったり)」なんだとしたら、別に悪いことではないです。ハイコンテクストなものになってしまうけれど、少ない手数で山場を盛り上げられるし、山場以外に興味がないお客さんには、その前後の描写の甘さはどうでもいいことなはずです。「ポルノ的跳躍」は目的如何では優れた描写手段だと思います。

 それを踏まえた上で、『TENET』と『羅小黒戦記』は感情の描き方に尺がそんなに使えないからか、この「ポルノ的跳躍」を感じる部分がありました。ニールとの友情も、フーシーの背負うものも、描写がほとんどないので、ちょっとオタク向けだなぁという感じでした。俺達はフーシーにたぎっているのではなく、フーシーの後ろに浮かぶ俺達の脳内の仙水忍にたぎっているのではないか…。キャラクターをしっかり描くには映画の尺ってやっぱり短いんだなと改めて思いました。それは措いておいても超面白かったんですけどね。


 韓国の『82年生まれ、キム・ジヨン』も凄い映画でした。どれだけ女性が伝統的に厳しい立ち位置にあるのかを描いているのですが、原作小説よりもコン・ユ(新感染のお父さん役の人。韓国の高橋一成)演じる夫が「理解ある夫」であった分、よりグロテスクなところがあって…。女性のための映画として売りに出されているのは仕方ないのですが、全員でこれからの生き方をどうしていくべきなのか、両性にとっての問題提起として広まるといいな、と思いました。解決策は示されていないので…。あと、公式サイトの寄稿コメントが豪華だしさまざまな意見があって面白いです。


『ROUTINE』
 これはインディーズ映画祭に出品されていた作品なのですが、本当に楽しかったので、ぜひトレーラーを見てほしいです。冒頭に主人公が彼女と同棲してた家から追い出されるシーンがあるのですが、そこまでだけでも演出のアイディア量とエンタメ感がとても気持ちいいです。お話も良い話ですし、画面作り・変化の作り方が音楽に合わせて丁寧に考えられているので小気味良くてストレスが無い。ワンアイディアで驚きも山場も走りきってて全編気持ちいいです。良いもの見たなぁってスマホの前で拍手しちゃいました。


 ここからは動画です。映画全然見てないですね…。言い訳ですけど、映画館に行くのが嫌だったから……。毒の空気が全部悪い。


オモコロチャンネルの
『バカが作ったウミガメのスープを高知能集団に解かせよう』は、声を出して笑いました。賢いイメージのあるモノ(専門的な知識や遊び)にバカを挑ませる企画はオモコロのお家芸だと思うのですが、これはタイトルも、設えも、化学反応も面白すぎました。カプリティオチャンネルもすごく好きだったのでコラボ自体が嬉しかったのもあり、何回か見ました。
 「ウンコの冷える王国」は架空の国ですか?という質問に、「いいえ」が返ってくるのに、後から本当は架空の国であり出題者が狂人であることが判明するところと、そのあと一撃で正解が出るところが大好きです。


『仕切りがあるだけでジャンケンは100倍面白くなる!』
 何一つジャンケンのゲームバランスを損なわず、運否天賦の勝負のドキドキだけ抽出して可視化してて天才の企画だと思いました。新作も出ましたね。


『Diggy Moが言ってないこと選手権』
 企画自体もそうですが、展開の「飛び方」が顕著な名作だと思います。言葉選びから突っ込みから、インターネットのユーモアが身体化されている…。


 2019年の動画なんですけど、Pew Die Pieの『SEKIRO実況』も声出るくらい笑いました。
ゲームの達人が日本の死に覚えゲキムズゲーに挑む実況プレイ。傲岸不遜なキャラクターで「こんなの余裕だろ」というスタンスでプレイして、めちゃくちゃミスして死にまくるのも面白いし、それでも頑なに敗北を認めず、ちゃんとどんどん上手くなっていくので見応えが凄いです。


The Soda WaveのMMD
 海外の方だと思うのですがMikuMikuDanceで質感と重量感、存在感をここまで出せるのは凄まじいと思います。エクセルで描いた緻密な絵みたいな感じ…。2020年はプロジェクトセカイのリリースもあって、VOCALOIDの新曲の発表数が近年では最多だったらしいです。


『SNS医療のカタチ』
 現役医師が公開勉強会を行っている動画チャンネルです。コロナにフォーカスを当てた、肺や感染症というトピックだけでなく、患者さんとの臨床のコミュニケーションについて語ったり、自律神経とストレスについて紹介したり、専門領域のあらゆることを噛み砕いて分かりやすく討論・意見交換しています。医療の受診者の側にいるだけでは見えてこない医療者の姿が垣間見られるだけでも面白いのですが、その上で専門的な最新の知見もたくさん紹介されるのでEテレと同じくらいタメになります。


ライバロリのポケモン対戦目隠し動画
 ライバロリというと、ポケモン対戦実況の代表みたいな人なのですが、その知識と記憶をフルに発揮して、画面を見ずに素人と対戦するという企画です。対戦自体の戦略を考えるだけでなく、相手のポケモンやゲームのインターフェースすらも全く見えないので、相手が何を出してきたのか、自分がどのボタンを押して何の技を出しているのか、そしてその結果はどうなったのか、全て音だけを頼りに判断してプレイすることになるのですが、それでも互角の戦いを繰り広げていて熱いです。


釈迦と見るスポーツカバディ編
 元プロゲーマーの釈迦が、全くルールを知らないカバディの試合を見ながら、ルールについて考察する動画です。モニターへの観察力と仮説出ての力をこんなところで遺憾なく発揮していることに笑ってしまいました。一度積み上げた仮定が崩されながらも少しずつカバディの謎が解明されていく展開も凄いです。
このシリーズの「プロの白熱した試合を見る釈迦」「防衛大の棒倒しを見る釈迦」も面白いです。


カプリティオチャンネルのタイムリープクイズ
 クイズ王集団・カプリティオチャンネルの特殊クイズの中でも僕が好きだったのはこちらです。クイズとその裏にある構造の謎解き、2度美味しい企画です。たぶんカットされて映ってないんですけど、ガチで挑んで何周かループして答えに辿り着いてるはずです。


RAGE×Legion Doujou Cup
 テレ朝とエイベックスの主宰なので、参加者が超豪華なApexの大会です。
 MCはジャングルポケット、解説はスカーズのレジェッタ、参加者はAKB48、加藤純一、ゆふな、葛葉、勇気ちひろ、96猫、恭一郎、蛇足、そらる、天月、渋谷ハル、倉持由香、ふ~ど、たいじ、すもも、スタダ、浅井企画、グレープカンパニー、ホリプロ、よしもとゲーミング…最新のツールを使ったニコニコ動画の同窓会みたいな趣があってそれも良いのですが、試合の展開もMCによる各ジャンルへの目配せもとても楽しい大会でした。


スーパークレイジー君の政見放送
 とにかく名前が良いですよね。全然投票する訳にいかないレベルではあるんですけど、この人なりの正義とか優しさみたいなものが忍ばれて、嫌いになれませんでした。こういう心根と思いきりと、その上で知識や信用がある若い人たちがもっと出てくると選挙も面白いのにな、という印象です。今は格闘技のイベントに出場したり、市議会選出たり、色々しているみたいです。ただ治安の悪い方面との繋がりが、良くもあり、悪くもあり…政治が目端を利かせられない領域の知見があって、かつその領域にいる悪い人達に利用されない、というのができれば良いんだけど…。


Hilty&Boschのお願いマッスル
 公式コラボです。世界レベルに凄いダンサーがどんどんアニソンで踊るようになっていく…!ダンスという表現が音楽と不可分であるため、キャッチーさや動画の再生数という定量的な評価のためには、仕方なくこうなる、というのは面白くもあり、ちょっと寂しくもあり…。本人たちは楽しんでるんだと思うんですが、やっぱり凄い躍りの技術とか凄い演奏の技術は、広く一般の人からするとどうでもよくて、ファンの多いコンテンツに一枚噛むというのがネットにおいては結果が出るってことだと思います。動画が伸びるかどうかは技術の価値ではないんですけど、マネタイズできないプロフェッションってやっぱり厳しいです。それは産業構造の話であって、この動画やダンス自体はめちゃめちゃ凄まじいので一見の価値ありです。


ゲームさんぽのどうぶつの森
 専門家にゲームの表現について深掘りしてもらうゲームさんぽシリーズの「どうぶつの森」編です。そもそも「あつまれ!どうぶつの森」は博物館の作り込みに定評があるゲームなので、それを扱うネット記事はばんばかバズってたのですが、照明技術について深く掘り下げているのはこのゲームさんぽだけかと思います。そのほかゲームさんぽのシリーズですと、歌舞伎町の重鎮に竜が如くのキャバクラの経営をプレイさせるやつが凄く面白いです。


HIKAKINの一億円コロナ募金
 僕は実写YouTuber(これってレトロニムですね)の動画ってファンが楽しいだけで客観的にそんなに面白くはないし、0→1のクリエイターでは無いと思っているんですけれど、この瞬間HIKAKINが本物のヒーローになったと思いました。お金とインフルエンスのある人間が強い善意を示すのはかっこいいです。


辻あゆみのベルナデッタ実況
 ファイアーエムブレム風花雪月のベルナデッタ役の声優が、ベルナデッタだけでステージをクリアする実況プレイ動画です。声優が自分のキャラクターを使って、自分のYouTubeチャンネルでゲーム実況をやってるのは(案件ではない)、けっこう黒よりのグレーだと思うんですけど、アイディアとしては自分だけしかできなくてお客さんに売れるものがある企画なので凄いです。でも本当に大丈夫なのでしょうか…。


『Passed The BRUSH』
 笑顔になれます。ネットミームのお洒落動画あるあるを逆手にとってこんな面白いのが作れるの凄いなと思いました。曲とか登場人物の雰囲気もそれっぽいですし。丁寧に作られていて意外に手間暇がかかってそうです。


えりかとさとるの夢冒険 隠しメッセージ
 昔のゲームに、当時のプログラマが仕込んだヤバイ隠しメッセージが見つかったことから始まる、壮大な謎解きの物語です。開発チームのメンバーへの罵詈雑言、下品な告発、そんなとんでもない隠しメッセージたちがどのように発見され考察されていったのか…十数年に渡るミステリーを追うドキュメンタリーとしても傑作ですし、コンプライアンスのおおらかな時代だな…という味わいもあります。


Dr.Capital&Stevie
 「まいど!Dr.キャピタルです。音楽博士やさかいドクターやねん!」から毎回始まります。シュッとした白人男性が関西弁全開で喋ってるだけでちょっと面白いんですが、邦楽のトレンド曲を音楽理論的に解析&解説し、何が新しいのか、どう凄いのか、などを紹介していて楽しいです。令和のマーティ・フリードマン…。


マキシマム ザ ホルモンの
『ホルモンの新曲「俺ならこう歌う選手権!!」』
 マキシマム ザ ホルモンの公式YouTubeチャンネルが贈るスペシャル動画です。豪華なゲストアーティストが、ホルモンの新曲の歌詞と主旋律だけを渡されて、オリジナルで歌うという選手権。勝ち負けはつけない、なぜなら「友達やん!」というノリも楽しかったです。プロのアーティストの技術や引き出しも凄すぎ…。



ゲーム


 ゲームは2020年、凄く調子が良かったと思います。オンラインゲーム万歳、という感じで、離れていても買えるし、人と遊べるし、話題にできるし。追加ダウンロードコンテンツという商法が、売れてる作品はずっと売れ続けていくという状態を作っていて、任天堂!もうやめてあげて!サードパーティーは太刀打ちできないよ!って気分になりました。特に国内作品は朗らかで面白いやつが多くて良かったです。

『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』
 将棋ゲームのなかでもかなり売れたと聞いてます。藤井二冠の快進撃を追い風にするとともに、藤井二冠のなんともいえない可愛らしさをこんなパッケージとして売り出すのは慧眼としか思えません。オープニングムービーは必見です。


『あつまれどうぶつの森』
 島の形を自分で作り替えられるシステムが今作から導入されて、本当に全てをこだわって村全体を作り込むことができるようになったのは凄いと思いました。しかもそれはエンドコンテンツ的に借金返済後に解禁になるというバランス感…。あとポケモンのときも思ったのですが、携帯型ハードからSwitchに移行したことでマシンパワーが超上がったので、全てがリッチだったのも体験としての価値が高まっていて良かったです。企業コラボもいまだに続いていて凄い。


『天穂のサクナ姫』
 異様な作り込みの稲作体験も面白いんですけど、和風ファンタジーの世界観と特有のシビアな死生観も、古き良き、という感じで素敵でした。アクションの動きがハキハキしてて楽しいのとけっこう敵が固くてちゃんと集中しないと勝てないのも、大作感に一役買ってたと思います。光の表現も地味に凄いと思います。


『幻想異聞録♯FEアンコール』
 リメイクです。初めて遊びました。ペルソナシリーズもファイアーエムブレムシリーズも、中二カッコいい感じと、油断するとすぐ死ぬところが似かよっていて、悪魔合体したらこうなるというコラボ作品。アイドル版のペルソナです。メガテンの質感にアレンジされたFEのキャラがとても斬新でした。ストーリーも熱い。


『ブリガンダインルーナジア戦記』
 慣れるまで超難しいシミュレーションゲームでした。キャラのビジュアルもカッコいいしサブストーリーの作り込まれ方が恐ろしいくらい細かくて、全部を遊びきるのはかなり大変です。これ中学生の時に出会ってたら恐ろしいことになってたと思います。
国の数も多く、世界観がスーパーオタク向けなので、前作からの根強いファンが布教活動をしていることも印象的でした。本当に敵のメインユニットたちが強い。


『マルコと銀河竜』
 ビジュアルが凄い新しくて面白いです。美少女系アドベンチャーゲームなのですが、キャラクターにカートゥーンデフォルメのデザインが用意されていて、作中のアニメもがんがんカートゥーンで動くんです。世界観も楽しいし、曲も良いし、センスが抜群。体験版のプレイ動画とかを見ていただけると分かりますが本編のノリはめちゃめちゃオタクです。


 2020年のゲームじゃないんですが、初めて遊んだのは、ベネズエラのゲーム会社が作った、サイバーパンクバーテンダーアドベンチャーの『VA11Hall-A』
概念と定義を動かすアクションパズル『BABA is YOU』
胸囲で脅威と戦うローグライクRPG『オメガラビリンスライフ』
カルマと向き合う悪夢脱出アクションパズルアドベンチャー『キャサリンフルボディ』
法廷バトルアドベンチャー完結作『逆転裁判6』
そしてTRPG風マーダーミステリ
『ランドルフ・ローレンスの追憶』
全てがめちゃめちゃ面白かったです。


音楽


 僕は各種サブスクのサービスに入っていなくて、イヤホンで音楽を聞く習慣も無いので、全然流行や新鋭アーティストの情報が入ってくるのが遅いんですけど、YouTubeでおすすめを漂流するのは好きです。
 2020年はポストVOCALOIDの人達がヒットソングを作って表舞台に出てきていた印象です。ただ、その売れ筋の人達は、ちょっと技巧的に弱いというか、分かりやすいものが多い気がしました。多分、彼らの同世代にはもっと根暗で音楽のニッチなところに潜っててまだ発掘されていない才能がいて、これからどんどん出てくるんじゃないかと思います。
 J-POPって、サビ至高主義で定型尺・定型進行のキャッチーさ絶対路線なのでつまんない人からするとつまんないんだと思いますが、ただサザンやaikoや東京事変や米津玄師やKing Gnuのような、J-POPの外の音楽のかっこいい部分を使って新しくJ-POPを作る人達がちゃんと売れてるという点で、かなり健全でシビアな競争があって熱いので僕は好きです。
 で、2008~2015くらいのボカロって、米津玄師のように外側の音楽を使ってキャッチーなものを作ろう、動画を伸ばそう、ということが行われていた場所なので、いろんなジャンルのエッセンスがボカロ曲に溶け込んでます。その広い音楽カルチャーを抽出して作ったボカロを通ってきてる若い人たちは、いま、抽出の抽出を作ってるから、キャッチーだけど味が薄い、みたいなのは当然かなという気もします。でも才能がある人はここからもがんがん勉強するだろうし、まだ出てきてないだけで、もっとヤバイカルチャーを吸収してそのうちヒットチャートに現れるやつもいると思います。音楽、売れてないらしいけど、リピート再生するからYouTubeの収益化と相性が良いし、若いバズりアーティストが出てきてるのは業界全体として嬉しいんじゃないかなと思いました。


Cody Leeの『我愛你』
どんな映像?かっこいい。

4s4kiの『35.5』
どんな映像?かっこいい。

チリヌルヲワカの『証明』
かっこいい。

cosMo@暴走Pの『デッドマンズバラッド』
かっこいい。

ALIの『LOST IN PARADISE feat. AKLO』
かっこいい。

@x0o0x_の『 』
自分の名前も曲名も表記せずに都市伝説をモチーフにしたオリジナル曲をアップしていて、何百万回も再生されていて、ちっちゃいカルトになっていたやつです。かっこいい。

CrystalZの『Sai NO Kawara』
かっこいい。

『ウ"ィ"エ"』
かっこいいハードコアなんですけど何もかもが謎に包まれていて怖い。この人は怖いEDMをいっぱいアップロードしています。

『ボカロPが9人集まってダンスロボットダンスアレンジメドレーしてみた』
ダンスロボットダンスがそもそも味の濃い曲なので、けっこうレギュレーションの厳しい遊びだと思うんですけど、売れてるボカロPは自分の作風のどこがキャッチーなのか分かっているみたいで、それがはっきり見てとれて面白かったです。

かいりきベアの『ダーリンダンス』
かっこいい。

Kanariaの『KING』
かっこいい。1800万って凄いですね。

米津玄師の『感電』
かっこいい。一億って凄いですね。

PEOPLE1の『アイワナビーフリー』
かっこいい。

アイドルマスターミリオンライブの『Do the IDOL!!~断崖絶壁チュパカブラ~』
逆に本当のアイドルが作りそうな曲だから凄い…。

Peaky P-keyの『電乱★カウントダウン』
懐かしい感じなんですけど、かっこいいです。

夢見りあむの『OTAHENアンセム』
本当のアイドルが作りそうだし、お願いシンデレラのアンサーとしての作られ方も楽しいです。

chelmicoの『Easy Breezy』
かっこいい。

konoreの『飢餓と宝玉』
かっこいい。

眉村ちあきの『おばあちゃんがサイドスロー』
かっこいい。ネットミーム的。こないだアイドルの家の(きったない)写真が載ってる企画写真集を買ったんですけど、そこにこの眉村さんが載ってて驚きました。シンガーソングライターなんだけれど、ネットスター寄りでもあるんですね。



2020年の人の心

 2020年もとっても楽しい年でした。
 でも、そうじゃなかった人達もたくさんいたみたいです。
 大学生の頃に1年間留学に行ってた時にも感じたのですが、自分は一人の時間が全く苦ではなくて、書店かインターネットがあればずーっと楽しく暮らせるタイプなので、今回のコロナ禍によって「本来ならもっと楽しい1年だったのに機会を奪われてしまった、損失だ!」という感情はありません。逆に、家から出ちゃダメ、人に会っちゃダメ、というルールによって、友達の家にアマゾンで買ったものをいきなり送り付けたり、オンラインでできる遊びを考えたりするようになったし、適度な縛りによって暮らしというゲームが楽しくなっている感覚がありました。
 自分はこの状況における総合的な耐久力が凄く強かったみたいで、幸福に2020年を暮らし抜けましたし、これは幸運なことでした。

 これは、自分は心が強かったぜ!ということを言いたい訳ではなく、今回は水タイプの災難が襲いかかってきたんだけれど、自分は電気・草タイプだったので、ダメージはほとんど無かったのだ、という話です。

 ずっと自分とこのコロナ禍が辛かった人達の違いは何かを考えていて、「耐久力」のことばかり考えた1年でもありました。長いし前置きなのですが聞いてください…。

 先述の総合的な耐久力は大きく分けると3つの要素からなると思います。お金の心配がいらない、コロナによって被るお商売のダメージが少ない、という経済的な耐久力。先行きが見えない暗い情報やストレスに接したときにダメージを受けない、溜めない精神的な耐久力。そして健康であり続ける身体的な耐久力です。

 自分と同じく、若い人たちは身体的な耐久力は心配ないので、体調の悪化によって不幸せになるということはあまりないかと思います。
 顕著に差が出るのが、経済的な耐久力と精神的な耐久力です。
 飲食業や対人サービス業に従事するような人達は閉店や休業でお仕事が立ち行かなくなったり、そうでなくともシフトが減って勤労の機会を損失したりするでしょうし、そのほかの仕事でもリモートワークによって残業が発生しなくなるなど、お金に困ることは考えられます。置かれている状況で人それぞれ経済的な耐久力は異なります。
 また、もともとのメンタルヘルスももちろんのこと、普段どのような活動や趣味がその人の心を支えているのかということによって、このコロナ禍における精神的な耐久力も異なってくるかと思います。お酒を大勢で飲むことが趣味の人と、ゲームをオンラインで遊ぶのが趣味の人では、今回ふりかかったコロナというトラブルへの相性の問題として、オンラインゲームが趣味の人のほうが耐久力が強いわけです。

 また、生活の周辺に経済的な耐久力の少ない人達、精神的な耐久力の少ない人達が多いと自らの耐久力もひっぱられます。気分から信号無視まで、皆が苦しいから、皆がやっているから、と周囲に合わせて感じたり判断したりすることは往々にしてあり、精神的な耐久力は環境にもかなり左右されます。同じく明るくないニュースや情報をどのように収集、判断しているのか、というところでも精神的な耐久力は大きく変わってくると思います。


 それを踏まえて本題なのですが、
 2020年を終えてみて、これからの世の中は今まで以上にこの耐久力によるチーム分け、分断が進んでいくだろうなという気がしました。
 現状に耐えることができない、でも苦しさや複雑さ、難しいことを考え続けることもできないから、安直な陰謀や怪しい商売、自分を認めてくれて努力の必要のない優しい嘘に引っ掛かるのでしょうし、分からないからといって調べたり考えたりしないから選挙に行かなかったり、盗みや人権侵害に知らず知らず荷担することになったりするし、人権意識の向上や社会の構造にまつわる言説は、現在の在り方に耐えられるかどうか、また、現状を変えるためのアクションに参画できるかどうか、という個々人の耐久力によってそれぞれのスタンスが分かれていくでしょうし、そもそも学歴社会って、いわれた通りのことを覚えられるまで続けられるかどうか、そこにどれだけお金と時間を使えるか、という耐久力による選別ですし、、、
 これまで以上に、それぞれの視野や共感・理解可能な範囲がこの耐久力の違いによって分かれていくことになると思います。
 「家にいてください、病気が広まります」というシチュエーションひとつとっても、一人一人どこまでは我慢ができて、どこからは我慢ができなかったのか、大きく異なりますし、耐えられない時は耐えられません。

 だから、自分はどんなシチュエーションに対してどのくらいの耐久力があるのか、他の人たちはどんなことに耐えられて、どんなことには耐えられないのか。

 今まではなんとなく同じ稼ぎ、同じ学力、同年代で、同じ性別なら同じような耐久力だったのかもしれないけれど、今は一億総中流・無差別均等と呼べるほど世の中は均質ではなくなってしまっているわけで……。自己と他者の様々な場合・事象に対する耐久力を、今後、他者といっしょに何かを成し遂げる・話し合う際の思考のスタート地点としてより大事にしていきたいな、と思いました。
 この人達はこのシチュエーションにおいて自分よりも頑強なのだ、この人達はこのシチュエーションにおいて自分よりも脆弱なのだ、という思考のワンステップは、何か理解・許容の難しいような他者との距離を、ひとつ縮めてくれるように思います。

幸せで、より良い2021年にするぞ~。

終わり。

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