インドハーブとヘナを求めて=インドの旅
2022年10月末 日本を出発しインドニューデリーに到着。
このシーズンは焼畑やお祝いの花火の影響で、ニューデリーはスモッグに覆われています。
着陸しターミナルに足を踏み出した瞬間、何とも言えない「排気ガス」や「スパイス」の匂いが混じった空気に包まれます。
その空気を吸った途端、インド旅のスイッチに切り替わります。
まずはニューデリーでお馴染みの顔を拝み翌日から、第一の目的地ケララ州へと旅立ちます。
毎回インドの国内線を利用するのですが、最近では遅延が少なく、殆どの便がオンタイムで出発します。
これもインドのIT化が大きく貢献しているようです。
第一の目的地ケララ州コーチンに到着
今回ケララ州を訪れた理由は、歴史あるアーユルヴェーダ大学を訪問する為です。
2023年に発売予定のインドハーブ製品の開発にあたり、大学の協力は非常に重要な要素となります。
様々な臨床データや文献によって、より専門性の高い製品作りが可能になります。
今回は大学が所有する植物園や生薬採集用の山林を見学し、製薬設備などもベンチマークすることが出来ました。
これから彼らと連携を図りながら、新製品の開発を行なっていくことになります。
私達の活動において、現地の人々との関係性を大切にしています。
昨今、インドにおいてもインターネットの普及によってリモートワークが増えています。
しかしそんな時代だからこそ、「リアルで対面し言葉を交わすこと」に大きな意味があります。
お互いの価値観を理解し、リスペクトがあってこそ良い製品作りに繋がっていきます。
それが日本から何日も掛けて現地を訪問する理由の一つです。
ヘナの産地を訪れる
アーユルヴェーダ大学を後にして、続いての目的地はヘナの産地ラジャスタン州です。
実に3年ぶりのヘナ産地入りです。
通い慣れた場所なのに、なぜか懐かしい気持ちになり、3年間という長い時を実感しました。
そして、例年日本で取引頂く美容師の方々をお連れするのですが、今回は当社の提携会社の社長と二人旅となり、久々に深いコミュニケーションを取ることが出来ました。
正直に言いますと、インド側の対応というのは常にマイペースでした。
しかし、パンデミックの影響により「世界的なヘナの流通量」は激減しています。
彼らはこの激しい経済の影響によって、大きくマインドチェンジされています。
もっと良い製品を作るにはどうすれば良いのか?
もっと顧客に満足を与えるには何が必要なのか?
今までに無いぐらい真剣に取り組むようになってきました。
滞在中には新たな製品開発のアイデアをシェアし、来年発売の新しいヘナ製品の開発へと繋がっていきました。
インドのヘナ産地はパンデミックの影響で、50%近い流通を失いました。
それによって何件ものヘナ製造工場が閉鎖に追いやられてしまいました。
失業者が増え経済状況も良くありません。
これまでヘナ産地の人々は私達の活動を支え続けてくれていました。
何か彼らの役に立てることは無いか?
提携先の社長と話し合い、新しいプロジェクトを発足することになりました。
こちらは、まとまり次第皆様に報告させて頂けるかと思います。
今から来年の収穫期が楽しみで仕方ありません。
野生シカカイの群生地を訪ねて
ヘナ産地の滞在を終えて、名残惜しい気持ちを抑えながら続いての目的地へ。
実は、インドを何度も旅をしているのですが、野生のシカカイには出会ったことがありませんでした。
いつもインドでハーブ類を観察する時には、「その地域の文化や風習、自然環境」を含め観察します。
その土地に育つ理由、活用されてきた理由があるからです。
その理解を深めることは、ハーブ類を扱う上でとても大切な要素なのです。
シカカイは主に「南インド」で収穫されています。
しかし、今回は北西インドのマハーラシュートラ州の山奥を旅し、当地独特のシカカイに出会ってきました。
南インドのシカカイが茶色のなのに対して、マハーラシュートラのシカカイは赤紫色をしています。
どちらが良いということは無いのですが、赤紫のシカカイはマイルドな洗浄力と保湿性を持っています。
一方で茶色のシカカイは洗浄力が高いという特徴があります。
それぞれに目的があり、用途を考えて使用することで良い結果を得られます。
マハーラシュートラの山奥は、「携帯の電波も届かない地域」です。
スマホが使えないということは、翻訳機が使えない、地図を確認できないという現代の旅において大問題に直面します。
若い頃にはスマホが無くてもバックパック一つで旅をしていたはずなのですが。。。
下手なヒンディー語とジェスチャーで地元の人々とコミュニケーションをとっていきます。
何人かの村人にシカカイについて訪ねていきますが、ジャングルに行けとしか回答が帰ってきません。
そんな中で捜索を続けていると一軒のチャイ屋さんを発見します。
そのチャイ屋さんがキーパーソンとなるのでした。
チャイ屋の息子が多少英語が話せるとのこと。
彼の帰りを待っている間に、チャイとオムレツをご馳走になっていると、息子がバイクに乗って帰ってきました。
早速シカカイについて聞いてみると、「うちの畑の裏にシカカイがあるぞ!」とのこと
早速案内してもらい、野生のシカカイと感動のご対面となりました。
11月とはいえインドの日中の気温は30度近くなり、汗をかいた甲斐がありました!
(この日はどうやら15kmぐらい歩いたようです)
シカカイを観察した後に、彼は自宅に招いてくれました。
中学生になる娘さんが、とてもキュートで積極的にコミュニケーションをとりにきてくれます。
どうやら村に一軒だけWi-Fiがある家があるそうで、そこからメールを送るからとアドレス交換をします。
メールの交換という言葉に妙な懐かしさを覚えました。
「私はインドの写真を送るから、あなたも日本の写真を送ってください」
そんなやりとりで、彼らと「さよなら」の時間となります。
「ここはお前の家でもあるから、いつでも帰ってこいよ」
インド人の心優しさに触れ、日本へ帰国の途につきました。
シカカイと生物多様性
シカカイの木は単独で成長することができません。
大きな木にツルを絡ませながら成長していきます。
一方でシカカイの花には沢山のミツバチが集まり、他の植物の受粉をサポートしています。
更に、シカカイの根には根粒菌があり土壌に窒素を供給する役目を担います。
その窒素が他の植物の成長を助けています。
このようにシカカイは森を維持する為に重要な役割を持っているのです。
そのシカカイの実を人間が活用し、また土へと還っていきます。
シカカイは豊かな森にしか存在しないのは、こういった理由があるからなのです。
開発が進むインドではシカカイが育つ環境が失われつつあります。
シカカイの生育環境を知ることで、自然の大切さや多様性の大切さを学ぶことが出来ました。
これも出会ってくれた村の方々のお陰です。
田舎のインド人JCから送られてきた写真
日本に帰国し、インドの女子中学生から送られてきた写真は、殆どが同じようなアングルでした。
毎日同じ景色を眺め、変わっていくのは空模様だけ。
日本では「井の中の蛙」という言葉がありますが、彼らは世界のことを知らなくても、地元の空模様をよく知っています。
毎日変わりゆく空模様に心を震わせる豊かな感性は、ネットの無い世界だからこそ生まれる感性なのではないか?
村の楽しみは夜になるとお寺に集まり、みんなで神様に歌を捧げること。
動画サービスなどが無くても、人は心豊かに生きていけることを証明してくれています。
彼女からのメールで、私のインド旅は無事完結したのでした。