子どもを持つことは女性にとってキャリア上のハンデなのか
そもそも論として、「子どもを産み育てる」という、人類が存続するための根源的な行為を、キャリアという、人間の生の営みからしたら副次的とも言える一つの価値判断あるいは行為の過程と対比して捉えること自体、大きく間違えているとの思いもあるものの、それでも私を含め多くの女性は、一度はこの問いにぶつかったことがあるのではと思います。
生命が日常的に脅かされることはなく、物質的な豊かさも満たされている現代の日本において、「キャリア」が人々の幸せを構成する一つの大きな要素になっている面も、確かにあるかもしれない。
男性にとってはハンデではないの?
その上で、まず疑問に思うのは、なぜ子どもを持つということが「女性にとって」ハンデかどうかということが問題になるのか、ということ。なぜ、「男性にとって」ハンデかどうかは問われることすらないのか。
言うまでもなく、「出産・育児は女性の仕事」との前提があるからで、これは本当に恐ろしいことだなぁと思います。
確かに、生物学的に、現人類においては女性しか出産は出来ない。でも「育児」は、授乳を除けば全て男性でも担える。
産休・育休に関して言えば、産前・産後の母体を労るための休暇を除けば、育児休暇を母親が取らなければいけない必然性は無い(*)わけで、例えばトータル半年の産休・育休を取得するにしても、妻が3ヶ月の産休を取得し職場復帰、その後夫が3ヶ月の育休を取得、とすればブランクはそれぞれ3ヶ月で済みます。
(*)産前6週間(多胎の場合は14週間)の休暇は出産予定者の権利であって義務ではないので、本人が希望すれば出産前日まで働き、産後6週間の強制休業のみ取得するということさえ出来る
https://www.recruit.co.jp/sustainability/iction/ser/ikuboss/006.html
育児は20年に渡る長期プロジェクトであり、当然のことながらキャリアにおける影響は産休や育休の取得に留まらず、それ以降の働き方にも大なり小なり影響して来ます。
夫が働き、妻は家庭で家事・育児を担う、という役割分担が主流だった時代には、子どもを持つ男性に対して、例えば「長期出張が入るけど、対応できる?」などと確認する上司が存在しなかったのはまだ理解できますが、なぜ、夫も妻も働くことが主流になった現代においても、男性には類似の確認がほぼなされず、女性側が家事や育児を担う前提で話が進むのでしょうか。
男性=仕事、女性=家事・育児
ならば、双方の合意が得られている限り、まだワークしそうですが(案外そうでも無いんだよ、というのはこちらをご覧ください)、女性も働くようになって
男性=仕事、女性=家事・育児・仕事
では明らかに不釣り合いですよね(仕事の内容にもよるかもしれませんが)。
「休暇」ではなく「出向」
そしてもう一つ思うのは、「産前・産後『休暇』」「育児『休暇』」とは言うけれど、決して休んで遊んでいるわけではない、ということ。対価は発生しないけれど、立派な労働とも言える、知力も体力も使う価値あることに時間を割いているのであって、ただの休暇では無い(ただの休暇や遊びが悪で、価値が無い、というわけでは無い)。
言うなれば「株式会社家庭」への出向であって、寧ろ会社の中にいただけでは経験出来ない様々な経験を積んで、視野を広げ、人として、社会人としてレベルアップする機会とすら捉えることができると思います。
もちろん、現実はそんなに綺麗にいかない面も多くて、特に業務内容によっては、出産や育児の経験がどう生かされるのか直接的には説明し難いことも多いだろうし、実際のところ特に乳幼児の育児は単純反復作業(人を育てることに対しこの言葉が正しいのかは分からないけれど)が多くなりがち、という面もあると思います。その上、子どもの個人差や周りのサポート体制の厚さ次第でもありますが、思い通りにいくことはほんのひと握りで、忍耐の連続。精神修行を積んでいるような感覚に陥ることすらある。そんな状況の中では、いくら尊く、何より自分が望んでの出産・育児だと頭では理解していても、会社で順当にキャリアを積んでいる同僚と比較したら、産休や育休が「ブランク」に思えて焦ってしまう、それも偽らざる事実だと思います。
そして、一時的な休暇だけならまだしも、その後も長期に渡って働き方に影響が及ぶ「出産・育児」というのは、果たして懸命な選択なのか否か、仕事が好きであればあるほど、悩んでしまう面があるのは否めないと思います。例え「子どもを産み育てる」という行為が、人類における根源的で尊い行為だと理解していたとしても。
結局、精神論?
そうすると結局のところ、「ハンデとは捉えたくない」「ハンデにならないように、寧ろ好機になるように頑張る」という精神論になってしまうけれど、このマインドセットはとても大事。
育児自体から学ぼう、一つでも多くのことを吸収しようという姿勢はもちろん、仕事も育児も最大限に生産性を高めつつ、合間を縫って勉強をしようという熱意も、「絶対にハンデにはしない」という決意から生まれる。
今はまだ「男性も育児をして当然」という価値観が形成されている過程で、女性からすると不公平や不合理と感じることも多いかもしれないけれど、少しずつ変わってきているし、今後も変わり続けられるよう、前向きに建設的に動いていきたいなと思います。
(もちろん、男性からして不合理・不公平と思うことがもしあれば、それも解消されるべき。性別や年齢に関わらず、全ての人が、望んだ選択を、環境や慣習によって制限されることのない世の中にしていきたい!)
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