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「体験的に死ぬ」参加者インタビュー 〜わからないからこそ、近くへ〜

私とあなたは違う。あの人とこの人も違う。

でも、違うからこそ、お互いのわかり合えなさをわかり合うために、人は寄り添うのではないでしょうか。


体験的な死を通して、人とどう向き合うかを見つめ直した方のお話です。





体験的に死ぬ_カバー画像_inclueロゴ入り

2019年11月25日、inclueはイベント「体験的に死ぬ」を開催し、10代から40代まで、学生や社会人など10人の参加者にお越しいただきました。



本記事では、そんな「体験的に死ぬ」の参加者に行ったインタビューをご紹介します。第3弾は、西脇光咲さんです。(インタビュアー:きのぴー)

自己紹介






–––まず、「体験的に死ぬ」に参加した理由やきっかけをお聞かせください。

西脇さん:私は家族や周りで亡くなっている人がいて、同世代の他の人よりは死を身近に経験してきました。「死ぬこと」がどんな経験なのか、誰からも聞けないし、でも気になってて、そんな時に「体験的に死ぬ」を見つけて、「私にぴったりだ!」と思い、参加しました。

マルタの街並み

西脇さんの思い出の場所、地中海に浮かぶ国マルタの風景。



–––最初にこのイベントを知った時の印象はどうでしたか?

西脇さん:イベントの画像に「死」の文字があって、ふにゃーっとしてる感じがしました。死ぬことって謎だと思ってたので、「誰も知らない死」みたいなミステリーな印象を抱きました。




–––「体験的に死ぬ」では、死を疑似体験するワークショップの中で、人や物、考え方、思い出の場所といった「自分の大切なもの」を書いた20枚のカードを使います。

20枚のカード_モザイク

自分の死が近づいていく度に、カードを何枚か捨て、最後の1枚がなくなると「死」を迎えます。

そんなワークの感想についてもお伺いしました。



–––はじめに、20枚のカードの内、終盤はなにが残りましたか?

西脇さんお母さんと妹のカードが残りました。私はお父さんを亡くして、ずっとお母さんに育ててもらってきたから、思い出も尊敬も他の子より強いんじゃないかと思っています。ただ、妹もずっと仲が良くて、信頼できる存在です。



––家族のことは、昔からずっと大事に思っているんですか?

西脇さんはい。家族はいないと生きていけないですし、最近は価値観が合うというよりも感謝の気持ちが増してきています。

それに、今はお母さんしかいないから、親がいなくなることへの危機感は強いです。お父さんは私が生まれてから2週間で亡くなったので、一緒に過ごした記憶はなくて、写真でしか見たことがないんです。



––そうだったんですね。西脇さんにとって、お父さんはどのような存在なんですか?

西脇さん印象的なエピソードが1つあって。小さい頃に、私とお母さん二人だけが写っている写真を見て、私が誰もいないところに指差して「パパ」と言ったらしいんです。それでお母さんが「いつも見守ってくれてるね」と話してくれたそうです。

スペインの空

西脇さんの思い出の場所、スペインの空。

そこから、いつも見守ってくれてる守護霊のような存在だと感じるようになりました。「そばにいない分、いつでもどこかにいてくれるのかな」と思って、緊張している時とか、なにか怖いものがある時でも守ってくれている気がします。

私はお父さんがいた時の記憶がないから、父親がいないことにはいい意味で諦めがついていて、私にとってはポジティブな存在です。


西脇さんそれで、ワークを受けるときに「亡くなったお父さんの気持ちに近づけたらな」と思っていたんですけど、お父さんから見た私やお母さんと、私にとっての家族は違うなと感じました。

お父さんからすると、お母さんと当時お腹にいた私は、「自分が獲得した守るべきもの」だったと思うんです。元から生まれ持った家族よりは、愛情のベクトルも違って、私たちに対する愛情の方がより強いんじゃないかと。

個人的には、子にとって親を残して去るときと親が子を残して去るときの悔しみや悲しみは全く違っていて、実際に親の立場になってみないとわからないところが大きいなと思います。

もし私が今死ぬとしたら、母には申し訳ないと思いますが、「死ぬのは自分だし、母をこの世に残すことはそこまで重くないかも・・・」と思っちゃいます。でもお父さんが死ぬってなったら、父親として残していくものが大きいし、そこが自分ごとに落としきれなかったです。



–––では、次に他のカードを捨てた過程をお聞かせください。

西脇さん「場所」に関するカードからなくなっていきました。旅行先で見た光景が多かったです。その次は「モノ」のカードで、ギターや周りの人からもらったお手紙などがありました。

そこからは、友達、自分の価値観、家族、お世話になった先生などを捨てていきました。

サクラダファミリアの中。日本にはない宗教観。ないた。夕暮れがステンドグラスから入ってくる

西脇さんの思い出の場所、サクラダファミリアの内部。



–––それらのカードを捨てる時にどんなことを考えていましたか?

西脇さん人のカードを捨てるところで葛藤しました。2人の人ですごく迷ったんですけど、最終的には一緒にいると自分がありのままでいられる人を後に捨てました。「その方が楽かな」って感じがして。

終盤は、家族も価値観も切るのが想像ができなくて、大切にしたい価値観の「ポジティブ思考」は終盤まで残りました。



–––最後に、ワーク全体を通して気づいたことや感じたことがあれば、教えてください。

西脇さん自分が経験していないことを100%理解するのは難しいし、不可能だと思っています。でも、今日100%近くまで死という経験を理解する努力をしてみると、色々見えなかったものが見えてきて、わかり合おうとすることの大切さを感じました。

どこかで、「死って100%は自分ごとにできないから、本当に体験しないと同じ人の気持ちはわからない」と思っていましたが、わからないからこそ近づく努力はできるし、「わからない」の大切さを実感しました。

誰かが悲しんでる時、相手の気持ちがわからなくても、「わかんないからいいや」じゃなくて、ちょっとでも同じ気持ちになる努力をしたいです。






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最後までご覧いただき、ありがとうございました。

興味を持っていただいた方は、第2弾もぜひご覧ください。


- - - - - お知らせ(2020.09.26追記) - - - - -

inclueでは毎月「体験的に死ぬ」をオンラインで開催しています。

次回の日程は、10月4日(日)19:00〜21:15 です。

下記URLよりお申し込みいただけます。ご興味ありましたら、こちらからご覧ください。


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