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観光は観光客のためではない!? インバウンド観光の戦略的重要性

当記事では、2020年8月12日に行われたオンラインセッション「インバウンド観光の戦略的重要性を再認識する」の様子をお届けする。

当セッションではインバウンド業界の目的を考えるところから始まり、日本政府が2030年までの目標として掲げる観光業の経済効果を達成するための戦略について話された。

日本人はインバウンド誘致をする本当の目的を見失ってしまっている。そして、インバウンド業界は軽視されてしまう実状があると原氏は話す。しかし、発展途上であるインバウンド業界は今後、国富を増大させるエッセンスになり得る。

インバウンド業界のあり方や今後の戦略について教示されたこのセッションはインバウンド業界に携わる人、必見の内容である。

観光は観光客のためではない!

原さん2

企業の目的は当期利益を最大化することである。中央政府や地方政府の目的は住民の生活水準の維持や向上である。

では、観光の真の目的とは何だろうか。観光客に満足してもらうことか、それとも観光地の魅力を知ってもらうことか。そうではなく、地域住民の生活水準の向上や国の発展が観光の真の目的だと原氏は話す。観光客に満足してもらうということはあくまで手段であり、外貨を獲得することこそ、観光をやる本当の意味である。

この目的をはき違えずに、事業を行っていくことが重要になってくる。しかし、真の目的を見失ったまま、観光業に携わっている人は多い。ここで今一度観光業の目的を見直したい。

インバウンドは国富増大のチャンス

国富増大

インバウンド客による観光消費はすなわち外貨の獲得である。つまり、自動車や電子部品などの輸出産業と同じだということができる。

国内観光客は日本国内の富の移転であり、日本の経済を豊かにしているわけではない。一方で、インバウンド客の観光消費は外貨となり、国富を増大させる要素である。国内観光客とインバウンド客は経済効果が決定的に異なるのだ。

現在は人口増加が著しいアジア諸国からの観光客が多いが、日本観光の浸透率が低い欧米諸国からの観光客を増やすことで、観光業の高成長を見込むことは大いに可能である。

アフターコロナは欧米からの誘致が鍵となる

観光消費額

2019年時点で3,188万人のインバウンド観光客が訪れ、1人当たりの観光消費額は約15万円であり、4.8兆円の経済効果があった。日本政府は2030年に15兆円の経済効果を観光産業から得ることを目標に掲げた。政府の目標であるこの15兆円というのは日本の自動車輸出産業に匹敵する経済効果である。

現在のインバウンドの経済効果は4.8兆円であり、目標の15兆円への到達は厳しいと感じる人も多いだろう。しかし、2019年のラグビーワールドカップでは24万人の観戦客が海外から訪れ、平均滞在日数は約17日、1人当たりの消費額は68万円に上った。

このことから、アフターコロナでは欧米諸国からのインバウンド客の誘致が必要だと原氏は話す。それは、遠い国に観光に行くほど1人当たりの観光消費額が高くなるからだ。遠方からの観光客を誘致することで、目標の経済効果を達成しやすくなる。

15兆円の経済効果を目指して、やるべき準備と心構え

今後、インバウンド業界では英語を使い、業務処理ができる人材が求められる。英語で知識を習得し、情報を収集するほうが効果的であるからだ。また、外国人に日本の魅力を発信する際は、その国の出身者が伝えたほうがいい。なぜなら、出身者でないと文化の違いによって価値観が共有されない場合があるからだ。

このような点に注意して、インバウンド業界を盛り上げ、国富の増大に努めていかなければならない。インバウンド業界は地方創生との親和性が高いため、過疎化が進んでいる地方を助けることも可能だという言葉でこのセッションは幕を閉じた。

原 忠之 氏
セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部テニュア付准教授。米国観光ホスピタリティ経営分野でテニュア(研究者終身身分保障)を持つ日本人唯一の米国博士観光学者。日本興業銀行、外務省を経て、米国コーネル大学ホテル経営学部博士号取得。他3修士号を米英大学で取得。フロリダ在住。
執筆・編集:明治大学 渡邉夏美

6/19 インバウンドサミット2021 開催決定!

MATCHAでは、当セッションでも語られた、日本における「インバウンド観光の戦略的重要性」を高めることを目的に、2021年6月19日(土)に、インバウンドサミットを開催いたします(参加無料・オンライン)。

小西美術工藝社 デービッド・アトキンソン氏、アソビュー 山野 智久氏、JNTO 吉田 晶子氏、L&Gグローバルビジネス 龍崎 翔子氏など、総勢80名以上の観光キーマンが登壇予定です。ぜひご参加ください。


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