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「シナリオの基礎技術」を読んでみた①

多数の脚本家を輩出しているシナリオスクールがある。それが表参道にあるシナリオ・センターである。

20代のころモテたくてお洒落な表参道の美容室で髪を切っていた。料金は8000円。今では3000円の美容室に通っているので昔が懐かしい。

「ありがとうございました〜」美容師さんの声を背に、白い螺旋階段を降りていく。しっかりとセットされた髪を何度もガラスで確認をする自分ははた目から見ると気持ち悪かっただろう。

外に出ると映画ポスターが複数貼っている建物があった。そのポスターを見るとはしにシナリオ・センター卒業生の〇〇と名前が書いてあった。

そのポスターを見てここがシナリオ・センターであることに私は初めて気がついた。冬の風が冷たいので首をひっこめ、ポケットに手を入れて部屋の中をこっそり覗いた。

中は明るい光に包まれており、数人の人が優しい顔で談笑していた。中は暖かそうだ。

私は新しい仕事を始めたばかりで、シナリオを書く余裕がなかったのでその場をそっと離れた。

それから10年以上年月が過ぎ、仕事も落ちついた私は小説を書くことにチャレンジしていた。

何か創作のためになる本はないかと本棚を探っていると二段目の左奥に「シナリオの基礎技術」が並んでいた。

「シナリオの基礎技術」はシナリオ・センターの教材になっている本である。あの日私は散髪後に本屋へ行って購入をしていたのであった。

購入した当時は結局全部を読むことはできず3分の1程度読むと放りだしていた。

今日は妻と子供が帰省しており、部屋は静かだ。私はリビングにあるグレーのソファに座り、ゆっくりと10年ぶりに「シナリオの基礎技術」のページをめくった。

続く


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