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【三題噺 お題】 緑茶 自宅 リサイクル【タイトル 茶柱】

 両親もこの家も随分と歳をとった。古くなった自宅を今後どうしてゆくか、家族で話し合っていた。
 皆で思いつくことを書き出していった。
  無理して立て直す。経費を抑えてリフォームする。 思い切って売りに出す。色々な意見が出てくる。
「売りに出しだってこんな田舎町の家なんて売れないわよ?」
「だろうなあ」
「田舎町を売り文句に、シェアハウスとかは?」と、妹が家のリサイクルをすればいいんじゃないのかという案を出した。
 そのとき、父が湯呑みの中の緑茶の茶柱が立っていることに気がついた。
「お!その話上手く行ったりしてな。(確か、茶柱が立っていることを人に話してはいけないんだったかな?)」父は茶柱の入ったお茶を無言で飲み込んだ。
「何よ?お!」ってあなた。
「ああ。これが言えないんだよ。人に移るから」
「意味がわからないわよ。何が移るのよ。」
「飲み込んだしもういいか。茶柱が立ったんだよ。茶柱が」
「ああ。幸運が移るって話ね」
「その話、本当に上手く行ったりしてな。やってみるか」
「ところで、シェアハウスって何だ?ハウスをシェアするのか?」
「そうよ。そのままなのよ。ハウスをシェアするの。簡単に言えば、家を共有するのよ。今、増えてきてるって雑誌に書いてあったわ」
「揉めるだろそれって」

 最新の雑誌の記事に、江戸時代が始まりだという古典的な茶柱の話…。なんだか妙な違和感があったが、この田舎町で誰もまだやっていないような、シェアハウスの話。そこにも、違和感を感じた。

「なんだか、面白そうだな。やってみるか。それ」
「父さん、二度目よその発言」父は白髪だらけの頭を掻きながら、照れ隠しをした。
 新しもの好きの父のゴーサインが出たようで、シェアハウスにするという話を進めることになりそうだった。

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