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【書評】どうしても頑張れない人たち | 宮口幸治

--この記事は、こんな人におススメ----
・前作を読んだ
・こういった社会問題に興味がある
・将来、仕事として貢献したい
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こんにちは。

もっちー

あなたは「頑張れ」という言葉をどんなときに使いますか?

相手を応援したいとき、励ますとき、パワーを出して欲しいとき。
などなど、使う場面は様々。

そのほとんどが相手のことを想って発しています。

「ケーキの切れない非行少年たち」の続編であり、少年院や鑑別所をでたあとの彼(女)らについて書かれています。

職についてもすぐに辞めてしまったり、再犯してしまう。なぜ、そんなことになってしまうのか。

現場で彼(女)らと直に接してきた著者だから書ける内容だと思います。

【どうしても頑張れない人たち】から得られるもの

04得られるもの

得られるというより、自分の知らない世界を知ることができると言ったほうがいいのかも知れません。

私は少年院を出たあとの彼(女)らが、何を想い、どんなふうに生活しているのかを知りませんでした。

ここでは、本書を通して、私自身がとても勉強になったと思ったことを3つに絞り紹介していこうと想います。

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***頑張れは諸刃の剣***

冒頭でも書きましたが、何気なく使っている「頑張れ」という言葉。
人を応援する言葉であり本来は人を傷つけたりはしません。

しかし、使いどころによっては人を追い込み傷つけてしまう言葉にもなり得るのです。

頑張っている本人が周りから頑張れと言われたら「こんなに頑張っているのに、まだ頑張りが足りないのか」と思ってしまう人もいるとのこと。

そういった声かけが彼らに余計な負荷をかけて、やる気を奪っている可能性すらあります。

P.64より引用

著者は、このように書いており相手の状況を観察し、適切なタイミングで声をかける必要があるとしています。

特に本書で取り上げている少年少女たちは認知機能が弱く、相手の言い分をストレートに受け取る気質が強い。

同じ言葉でもプラスとマイナスの両面があることを知った上で使わないといけませんね。

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***支援者にも支援が必要***

社会復帰するために支援者がつくようですが、支援をする人にも支援が必要。

本書では支援者を伴走者と記していますが、本人と支援者は社会復帰を目指して二人三脚で走っているようなものです。

しかし、コースの途中には様々な障害物があり行手を阻みます。
原因は様々ですが複数ある問題を支援者一人で抱えきることはできません。

支援者が倒れてしまったり、伴走を止めてしまっては本人の社会復帰は難しくなる。

複数の支援者で支えていくという仕組みが必要であると感じました。

また伴走者で大切なのは、近づきすぎず、離れすぎずといった距離感です。

P.153より引用

とてもデリケートな課題だと思います。

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***どうやって自信をつけるか***

本書の冒頭に以下のような一文があります。

彼らは認知機能の弱さもあり、“頑張ってもできない”が子どもの頃から染みついていました。

P.18より引用

こうした感情が染みつくことで何が問題となるのか。

それは何事に対しても自信が持てないということ。
ちょっとした失敗でも自分を責め、諦めてしまう。

少年院などから出てきて、知らない環境に1人で放り込まれれば、心を許せる友達もできず、相談もできない。

そして、こうした状況にいる彼(女)らに自信をつけることがいかに難しいかを著者は以下のように表現しています。

もし無人島でたった一人で生活していたとしたら、どうやって自己評価を向上させ、自信をつけていくのでしょうか?

P.138より引用

他人任せにするのではなく、社会全体で仕組みづくりをしていく必要があると感じました。


本書の概要

03概要

「ケーキの切れない非行少年たち」の続編。

前作では医療少年院や少年鑑別所で、著者が勤務していた経験をもとに書かれていました。
今回は、その後がメイン。

少年少女たちは、どのうようにして社会と関わり復帰していくのか。

本人達にしてみれば頑張っているが、それが周りに伝わらずに不適切な方向に向かってしまったり、ちょっとしたことが引き金となり再犯で、刑務所に戻ってしまったりと、簡単にはいかないようです。

特に著者が重要視しているのは“認知機能の弱さ”。
本書の中では以下のように書いており、問題の重大さを指摘しています。

見る、聞く、想像するといった力が弱いため、いくら頑張っても入ってくる情報に歪みが生じてしまい、結果が不適切な方向に向いてしまうのうです。

P.53より引用

そこで、重要となってくるのが支援者。

しかし、支援者の責任は重く、とても重要な役割であるため負荷もかかるとのこと。

そのために支援者に対する支援も必要。

一度、罪を犯してしまった人への支援の仕組みは整いつつあるのかも知れませんが足りていないのも事実です。

自分達1人1人が当事者意識をもって、生活していくことが大事だということを教えられました。


著者について

01著者について

著者についても触れおきましょう。
「ケーキの切れない非行少年たち」でおなじみの宮口幸治さんです。

京都大学工学部を卒業後に建設コンサルタント会社に就職。
そのご退職し児童精神科医へ。

精神科病院や医療少年院などに勤務後、立命館大学産業社会学部教授となります。

コグトレを開発し、認知機能の弱い子ども達の教育にも力を入れておられるそうです。


まとめ ~支援は難しい~

05まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。

ふだん、何気なく使っている言葉が相手を傷つけるかもしれないと思うと支援、応援って難しい。

支援者にこそ支援が必要であったり、地域や社会全体で支える仕組みの構築など課題はたくさんあると感じました。

仕組みが出来ていれば、1つに負荷が集中することなく必要なときに必要な支援やサービスが受けられるのでは? と感じていますがなかなか難しいのが現実。

すぐに何かできない自分に対して、歯がゆさを感じてしまいました。

ここで、ポイントのおさらいです。
・頑張れは諸刃の剣
・支援者にも支援が必要
・どうやって自信をつけるか

それでは、失礼します。


おまけ:本の情報

タイトル:どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2
著者:宮口幸治
ISBN:978-4-10-610903-4
発行日:2021年4月20日
発行所:株式会社新潮社

目次
はじめに
第1章:「頑張ったら支援する」の恐ろしさ
第2章:「頑張らなくていい」は本当か?
第3章:頑張ってもできない人たち
第4章:やる気を奪う言葉と間違った方法
第5章:それでも認められたい
第6章:支援者は何をどうすればいいのか
第7章:支援する人を支援せよ
第8章:“笑顔”と“ホスピタリティ”
おわりに

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