ミシェル・ウエルベック誘拐事件が観られるらしい

4月29日から、東京は渋谷のシアター・イメージフォーラムを皮切りに全国で随時、映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル2016」が開催される。

映画、アニメ、ショートフィルムなど、数多の映像作品が紹介され、国内有数の映像アート展で今年で30回目を迎えるとのこと。ラインナップをざっと見ると、『時空の連続体』『寺山修司を掘り起こせ!』『音楽が俺をハードコアにした ポップカルチャー私史』『近さは遠さ 遠さは近さ 戦略としてのカメラ』……といったタイトルが並び、映像を観ずとも作品名だけで、噛んでも噛み切れるかという、平易なものではないことが想像できる。

また昨年、映画『あん』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選ばれ、フランス文化勲章シュバリエ賞を日本人女性監督として初めて受賞した河瀬直美、映画『ゲゲゲの女房』のアニメーションパートを担当した和田淳、オノ・ヨーコなども出展作家に名を連ね、同フェスを知らない人にとっても入り口は多い。

そして、何より特筆したいのは、フランスの奇才作家ミシェル・ウエルベックが出演している『ミシェル・ウエルベック誘拐事件(原題:The Kidnapping of Michel Houellebecq)』(2014年)が上映されることだ。

昨年1月7日刊行の、2022年にフランスで穏健イスラム政権が誕生するという内容を綴った『服従』で話題をかっさらったウエルベック。同書は風刺雑誌を発行している「シャルリー・エブド」社が武装した複数人に襲撃され12人の死者を出した、「シャルリー・エブド事件」の当日に発売されたわけだが、この日の表紙がウエルベックの似顔絵だったこともメディアを賑わせた。また、同年11月にパリ同時多発テロが起き、「ついにウエルベックは未来を書けるようになったのか」と妙な感覚に陥った人は少なくないはずである。

さて、件の『ミシェル・ウエルベック誘拐事件』は、2011年に『地図と領土』を上梓し、失踪していたウエルベックの空白の時間を「実は誘拐されていた」という仮説のもと御本人出演で作ったワル乗りが過ぎるフィクション映画とのこと。ある日、3人の男たちに誘拐されたウエルベックは、なぜかその男たちの家族と距離が近づき、やりとりが生まれていく……らしい。既に同作を見た海外のレビュアーの文章を読んでいると、ドキュメンタリータッチで描かれているようだ。ようは、モキュメンタリーということか?

簡単なあらすじに目を通しただけで、ヒロイズムもカタルシスもなく、ただ淡々と、しかし異常な環境で物語が進行していき、風刺もたっぷりなのだろと予想……と思ったら、どうやら激ユルの爆笑映画だという。み、観たい!!


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