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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.106 映画 山田洋次「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 山田洋次の「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(1976/日) についてです。

男はつらいよシリーズ第18作目。

自分が見た男はつらいよシリーズ25本目、全部で50本あるのでちょうど半分。

やっとこのシリーズの魅力がわかってきたような気がします。

映画が大好きなのに、先入観で見逃していて、2年前からある機会があってようやく見始めたんです。

まあ自分の年齢もあるでしょう。若い頃見ていても寅さんの味わいはわからなかったでしょう。

そんな最近ハマっている男はつらいよシリーズ。

ただ今作はかなり異色な作品です。

ここからネタバレなので未見の方はご注意を。



なんとマドンナが死んでしまうんです。

今まで寅さんがマドンナと別れる時は、大体振られるか、事情があって別れなくてはいけないか、でした。

亡くなって永遠の別れとは・・・。

寅さんが黒い腕章をつけて、お葬式にも出ています。

かなり異色の作品になりました。

ただこの重さが、すごく印象に残り、忘れられない作品になったと思います。



物語は、今日はさくらと博の息子満男の家庭訪問の日。緊張して先生を待っているところ寅さんが帰ってきました。

檀ふみ演じる若い女性の先生に寅さんは一目惚れして、家庭訪問をめちゃくちゃにしてしまう。

とらやの家族は全員怒り、寅さんは居場所がなくなりまた旅に出る。

長野県の旅の途中、馴染みの旅芸人一座に会い、気前よく旅館でどんちゃん騒ぎをするが、払うお金がなく無銭飲食で警察に捕まってしまう。

とらやに連絡があり、長野県までお金を払いにさくらが赴く。

散々お金や女性のことをさくらに説教されて、

「もしあの先生にきれいなお母さんがいて、その人をお兄ちゃんが好きになったら、誰も文句は言わないわ」

と言った途端、先生がお母さん(京マチ子)を連れて挨拶に来る。

たちまち寅さんはそのマドンナ(お母さん)に惚れてしまい、彼女の家に足繁く通うようになる。

彼女は寅やさくらが幼い頃に会ったことがあり、柴又の名門の出でお嬢様と言われるほど、最近長い病院生活を終えて退院したばかり。

世間知らずのマドンナは、真逆で優しくて面白い寅さんに次第に惹かれていく。

しかしある時さくらは先生からお母さんが余命わずかだと聞かされる・・・。



ここまでしんみりとした男はつらいよは今までなかった。

かなり異色作。

そしてマドンナが2人いるのも珍しい。

娘と母親。

先生で娘役の清純な檀ふみと病弱で世間知らずの母親で京マチ子。

京マチ子と言えば羅生門や雨月物語など世界的な有名な女優。

この年齢でも色気はぷんぷん。

そう生命力が溢れているんですよ。

その逆手をとってのキャスティングなのでしょうか。

今まで唯一の寅さんより年上のマドンナ。

印象的なシーンは多いですが、そのマドンナが寅さんに死ぬってどういうことと聞くと、

「丘の上に、みんながうじゃうじゃ立っていて、メンセキが決まっているから、はじっこで押された人が、あ〜っと海へ落ちていく、なんてね死んじゃうんです」と戯けて話をしている。

死を覚悟しているマドンナは、その場でずっと笑い続けていて、その言葉を聞いて納得したでしょうね。

最後の数ヶ月寅さんと楽しく過ごしたマドンナ。

山田洋次のすごいところは、寅さんやさくらが駆けつけても間に合わなかった、

マドンナが死ぬ瞬間を描かなかったこと。

マドンナの家の前でお手伝いのお婆さんが泣き潰れて、それを見た寅さんの表情はなんとも言えない。

葬式を終え、柴又駅でまた旅に出る寅さんと見送るさくら。

以前マドンナがとらやでみんなで食事をして、マドンナがお店を開いたらどんなお店がいいのだろうと笑って話していた。

寅は、マドンナは花屋が良いよ、彼女が店番をして、俺が重いものや仕入れなんかをするよ、そうしたら俺も渡世人をやめて、とらやで正月ゆっくり過ごすことができたんだな〜っと。

さくらは涙ぐみ、マドンナに聞かせてあげたかったと。

寅さんはしみじみとしながら、泣きそうな笑顔で電車で去っていく。

そして最後、女先生に会いに雪深い新潟まで来て、満面の笑みで再会する。

雪のシーンのラストは初めて。銀世界が眩しかった。



いや〜心に沁みる作品でした。昔若い頃だったら死は遠いもので、ふ〜んで終わっていたでしょうね。

寅さんの「いっぱいになったら端っこで押された人があ〜と落ちていく」と言う台詞が妙に心に残りました。




「人間は、なぜ死ぬんでしょうね」
マドンナが寅さんに聞く。
寅さんはふざけながら説明する。
/「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」より








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