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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.056 読書 宮部みゆき「刑事の子」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 宮部みゆきさんの「刑事の子」についてです。

宮部さんの初期の頃の作品。刑事の息子が主人公のミステリー。

宮部さんは今まで62冊読んでいてだいぶ読んでいますが、まだ初期の頃や短編やファンタジーが残っているので、それらを読んでいくのが楽しみです。

今作は「理由」「模倣犯」のようなエネルギー全開な感じがまだしません。

宮部さん作品の特徴である”悪”も読んでいて恐ろしくなるほど鬼畜ぶりはなく、まだ小さな悪(もちろん少年犯罪というテーマがあります)です。

主人公も少年なので全体的に明るく優しい感じがします。

でもさすが宮部さんなので本当に面白くスラスラと読ませます。

”想像力の欠如”した、少年犯罪というテーマも90年代なので分かりやすいですね。



物語は、13歳の少年の主人公は刑事の父親と東京の下町へ引っ越ししてきた。

親は離婚して、男世帯なので家政婦のお婆さんが生活の面倒を見てくれる。

友人もできて新しい生活に慣れた頃、町内で人殺しの噂が流れ、

実際にバラバラ殺人の死体の一部が見つかる。

主人公の家に事件の犯人を知らせる手紙が来た。

近所の芸術家が怪しいと。

”刑事の子”の少年も友人と共に独自に捜査をする。



まず刑事の子という設定が面白いです。

まるでどこかで聞いたアニメのような設定だけど、そこは宮部マジックこの少年が活躍するのには無理がなんです。

この主人公の少年は利発で大人びていてとっても良い子で、家政婦のお婆さんとも仲良くやり、刑事のお父さんにも、事件についてしっかりと話をしている。

なので刑事の子が捜査というわけでもなく、犯人と噂されている芸術家と会ったり、学校で流行っているチェーンメールについて調べたりするだけ。

本当の捜査はちゃんと刑事の父親がやっています。

アニメのように秘密道具のメガネやスケボーに乗ったりしませんw

テーマが少年犯罪だが、主人公が少年なのでややライトな印象になっている。
これが大人の刑事が捜査していく話だと重い話になるでしょうね。

そう、この物語は、家政婦のお婆さんと何気ない家庭的なの交流、芸術家のお爺さんから戦争の話を聞いたり、相手のことを思ってコミュニケーションが取れる主人公だからこそ、

「想像力のない」少年犯罪が浮き彫りになるでしょう。

今日はここまで。


「人間は死ねば腐るし、においもする。それまでの美しい、愛すべき顔はどこかにいってしまう。殺人が大罪であるのは、人をそんな姿に変えてしまう権利など、誰も持っていないからだ。そして、ごく普通の想像力のある人間なら、人が死ねばどんな姿になってしまうか、心で理解している。だから、よほどのことがないと人を手にかけることなどできないんだ。

ところが最近、その想像力のない人間が増えている。」

P.259「刑事の子」より







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