見出し画像

趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.137 読書 ドン ウィンズロウ「業火の市」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 ドン ウィンズロウの「業火の市」についてです。

大好きなドン ウィンズロウの新しいシリーズの一作目。

「犬の力」「ザ・カルテル」「ザ・ボーダー」とこんなに過激でこんなに面白い話があるなんてと夢中になりました。

単発ものも「報復」や「失踪」や「壊れた世界の者たちよ」も全部面白い。

スティーブン・キング、ジェフリー・ディーヴァ、ダン・ブラウン、トマス・ハリス、ピエール・ルメートルと共に絶対”面白い”信頼すべき作家さんの一人です。

そんな彼の新作です。期待を膨らませながら読み始めました。

イタリア系マフィアとアイルランド系マフィアの戦いを描く。

マフィア同士の割と普通の話で、バイオレンスも控えめ、

一人の美女をきっかけに、愚かな息子が手を出してしまい、ファミリー同士の殺し合いに。

なんだか聞いたことあるような筋、ギリシャ神話をマフィアの世界に置き換えて描いているそうです。

主人公も元ファミリーのボスの息子だが、そのボスは落ちぶれてしまったので、かろうじてファミリーにいるような存在。

流石にドン ウィンズロウなので、普通の話でも十分面白く読ませる。

まあ今作は序章として、2作目、3作目を期待します。



物語は、アメリカの東北部の一番面積の小さなロードアイランド州。

そこの都市プロヴィデンス、アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアが一応共存して街を支配していた。

物語は海から絶世の美女が砂浜へ上がってきたことから始まる。

主人公がいるアイルランド系マフィアの仲間たちは家族とパーティーをしていたが、その絶世の美女に目が釘付け。

彼女はイタリア系のマフィアの女だった。

アイルランド系マフィアのファミリーの次男がその彼女に熱視線を向ける。

主人公はアイルランド系マフィアの一員で、実の父親がマフィアの元ボスだが今は没落してしまった。

主人公の奥さんが今のマフィアのボスの娘なのでかろうじてファミリーの末席に。

その海から上がってきた美女が現れるまでは、今まで共栄共存をしてきたアイルランド系マフィアとイタリア系のマフィア。

アイルランド系マフィアの次男がイタリア系のマフィアの幹部の女を奪ったため、
メンツを潰され、血で血を洗う抗争へ発展していく。

やられてはやり返し、どんどん仲間たちが死んでいく。

途中主人公の幼馴染が殺されたり、黒人グループを入れたり、次第に主人公もファミリーの中心になっていく。

この終わりなき戦いに、終止符は打てるでしょうか・・・・。



一番印象的なのは物語の最初、絶世の美女が海から上がってくるところの描写。

それも最初の一行から始まる。

ダニー・ライアンが見ていると、海の中からひとりの女が浮かび上がる。
わだつみの夢から抜け出した幻の美女のように。
けれども、この女は現実だ。トラブルの火種になりかねない。
こんな美しい女はたいてい厄介事を惹き起こす。

強烈な出だしだ。

まさにこれから始まる壮絶な争いの火種を、海からの女神になぞらえて描写。

もうドン ウィンズロウ上手すぎます。

あとは本当にマフィアものの話を基本に忠実に、ギリシャ神話になぞらえながら、どんどん歯車が狂い始め、復習と裏切りがある。

主人公は、すごい強いわけでもなく、頭がキレるのではなく、

周りがどんどん変わっていき、否が応でもなくマフィアをまとめなくてはいけなくなる。

運命に翻弄されていく、やむなく前面に押し出されてしまう。

ただ唯一、自分より人のために動けるのが主人公の特徴か。

家族を大事にし、私利私欲に負けず、直感を信じる。

愚直な元王の息子。

混沌とした現代に、ドン ウィンズロウの描きたかったことはこれ(古典)だろうか。

人間は結局昔と変わらない。と。

第二作、第三作、とこのサーガはどうなるのか、楽しみです。

今日はここまで。




「心配するな、失敗するわけがない」
”失敗するわけがない”。思いがけないことは基本、起こるものだ。
必ずと言ってもいいほど。
ダニーはそう思う。いつもそうだった。
この取引は最初からまちがっている。
まちがって始まったことはまちがって終わる。
単純な話だ。
/P.472 「業火の市」より







この記事が参加している募集

読書感想文

写真を見ていただきありがとうございます。よろしければサポートしていただけたら嬉しいです。本業のカメラマンの仕事とは違ったiPhoneで撮影した日常のスナップ写真をUPしております。「みんなのフォトギャラリー」で全て無料で使えます!いただいたサポートは活動資金にさせていただきます。