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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.163 映画 山田洋次「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 山田洋次の「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」(1978/日)についてです。

「男はつらいよ」シリーズ第21作目、自分が鑑賞した今シリーズ33作目。

今回はいつものシリーズとは少し毛色が違う。

SKD(松竹歌劇団)の花形スターがマドンナなので、映画の中随所に舞台のショーや劇場の楽屋が出てくる。まるでセミドキュメントのよう。

今はもうSKDは無くなってしまったが、男はつらいよを通してこの時代大人気だったSKDの舞台裏を知ることができて面白い。

そのマドンナを演じるのは木の実ナナさん。”ザ・ショーガール”という色気ムンムンの演劇のスター。そして元気でおっちょこちょいで気さくで忙しい!

もうこの役にピッタリ!今までのマドンナにないタイプ。

もう一人は武田鉄矢さん。田舎のモテない青年を演じているが、モテなさはピッタリ!

今回この最強にキャラが立つ2人が出てきて、話はスターが結婚するかしないかで引退を悩むとてもシンプルな内容だけど、なんだかわちゃわちゃしていて楽しい。



物語は、とらやに戻った寅さんはまた喧嘩して出ていく。

九州の田舎の温泉街で、女性に振られて悩む若者(武田鉄矢)を励ますと、先生と慕ってくれて長逗留してしまう。

家賃を払えなくなり、さくらに迎えにきてもらうが、もちろんさくらは怒っていて今度こそはと反省する。

ある日、とらやにさくらの幼馴染のSKDの踊り子(木の実ナナ)が突然やってきて
寅さんは夢中になり、浅草の劇場に通うようになる。

旅先で世話になった青年(武田鉄矢)が上京し、彼がレビューを見たいというのに乗っかって寅さんと武田鉄矢はSKDの楽屋へ。親交を深めていく。

そんな彼女は結婚しようか悩んでいた。この時代結婚すると仕事を辞めなければいけない。

さくらに恋の相談に来て、寅さんにも耳に入りガッカリするが、まだ仕事を辞めないと本人から聞き、また寅さんは元気になる。

雨が降って家まで送った寅さん、木の実ナナが部屋まで上げて、一緒にお酒を飲む。一晩中一緒にいてと言われるが、窓から外の雨を見ると、ずぶ濡れになって待っている結婚相手の姿を見て・・・。



話は結構ベタ。スターが結婚で引退するか悩む話。

そう「男はつらいよ」なのになんだか別の話のよう。

SKD(松竹歌劇団)の印象強すぎる。

まるで「スター誕生」などの、舞台が物語の話のよう。

そして寅さんがSKDに夢中になっている姿は、

今令和の時代の寅さんなら乃木坂の公演などに行ってペンライトを振っているかもしれません。



木の実ナナは元劇団四季で、さくら役の倍賞千恵子は元SKDというのが面白い。

「もしあんたがここに入っていたら、人生どうなったのかしらね」とか、映画の中でSKDの観劇に見に来ているさくらの構図はにやりとする。

映画の芝居じゃないところの倍賞千恵子さんの反応を見てみたい。

懐かしいわ、とか関係者に挨拶していたかも。

SKD時代の倍賞さんはそれは初々しくて美しかったです。



映画内演劇というか裏の楽屋の話って、とっても人間ドラマがあり古今東西傑作がある。

今作もシリーズでは異色だが、SKDを扱っているという近代史的な価値もあり、なかなかの良い作品だと思います。

寅さんの影が少し薄いですが。

ラスト寅さんは劇場の後の座席で、木の実ナナさんが歌っているところをそっと見ているんです。で、途中で退席する。

ここのところに男の生き様が現れていますね。

今日はここまで。




青年
女にふられた時は、じっと耐えて、
一言も口を聞かず、
黙って背中を見せて去るのが、
男というものじゃないか
/「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」より














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