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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.185 読書 宮部みゆき「 黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 宮部みゆきさんの「 黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 」についてです。

宮部みゆきさんのホラー時代小説”三島屋シリーズ”の第6弾。

今まで主人公だった三島屋主人の姪おちかはめでたく嫁にいったので、怪談の聞き手がおちかから次男の富次郎へバトンタッチ。

富次郎は気さくで気が良く跡取りでないので「小旦那」と自称している。

おちかは壮絶な過去を持っていたが、富次郎は人が良いボンボンの次男、果たして
三島屋の百物語の聞き手が務まるでしょうか。

4つの話がありますが、3つの中編と1つの弩級の長編並みの大作という感じです。

聞き手も娘から男に変わったので、怪談を語る人を斡旋する老人が富次郎を試すためにすごいものをぶつけてきたのでしょう。

宮部みゆきさんも久々に気合を入れてきたように思えます。

それほどラストの第四話「黒武御神火御殿」は凄すぎました。

おちかが少し出てきて幸せそうだったので嬉しかったです。




物語は、第一話は「泣きぼくろ」
富次郎にとって初めての百物語、幼馴染の豆腐屋さんが今回の語り部。

長男夫婦、次男夫婦、妹の婚約者も一緒に住む大家族の豆腐屋。

泣きぼくろができた嫁たちは取り憑かれたように家族の男を淫美に誘う。

他の家族に見つかり殴られやっと正気に戻ると覚えていない。

そしてまた違う嫁にも泣きぼくろができて男を襲うようになった。

そして三人目の嫁もおかしくなり父ちゃんを襲うように。

そこで母親が飛び出し、黒子をむしり取って・・・。

第二話は、「姑の墓」
上品な商家のおかみさん。

彼女の故郷の話。先祖代々のお墓がある裏山は春になると山桜が咲き誇り絶景になる。

ただその家の女だけはそこへ花見に行っては行けない決まりがあった。

行くと嫁を憎む姑の恨みから、死んでしまうと。

その村へ嫁いできた新しい嫁。最初よそよそしかったが次第にその家の人間とも仲良くなる。その言い伝えを聞いて女だけが花見をできないなんてと憤慨する。花見でなければ大丈夫と掃除をするふりをして、桜の季節その山に登るが・・・。

第三話は、『同行二人』
語り部は飛脚。流行りの病で妻子を亡くしてしまった飛脚。ある日仕事の道中家事で騒動になっている場所を通り過ぎた。そこから自分についてくる男がいた。

足が自慢の飛脚なのにいっこうに振り切れない。

近づいてみるとのっぺらぼう。だが別に危害を加えるわけでもなくただただついてくる。

他の人には見えない。

仕事も途中まで行き、世話になっている人に相談すると、その火事になっている場所で死んだ人間が一緒にくっついてきたのだろうと。

妻子をなくしてそれをずっと心の中にしまっている飛脚に共感しているかもしれない。

飛脚はその火事の現場にのっぺらぼうを連れて戻る・・・。

第四話。『黒武御神火御殿』
質屋から三島屋に半纏(はんてん)が届く、背中の当て布に何か文字が書かれている。

おちかの旦那は本屋をやっていて、いろいろなことを知っているので相談に乗ってもらうと、何やら相当危ない話らしい。

そこへ大金を払い、その半纏の謎を話すために全身火傷の跡がある男がやってくる。

その男は札差(武士の俸禄米を換金する業者)の三男で、博打好きのひどい男だった。

ある日お金をせびりに乳母のところへ行く途中で神隠しにあい、見たことのない広大な屋敷にたどり着く。

そこへ、年齢も身分も違う六人が集められていた。

六人で協力しあって、屋敷を探索するが、どこへ行っても出口はない。

怪物や怪しい武者まで出る始末。

部屋に六人分の半纏があり、その字を見た侍は、それはバテレンのもの、江戸時代に厳しく禁じられていたキリスト教の文字だとわかる。

また誰かが書いた日記があり、それを読み解いていくとこの屋敷の主人はキリスト教を信仰したため島流しにあい、恨みつらみを抱えていたと。

一人、また一人、罪を告白すると殺されていく。

そう六人は皆何かしら罪を犯していた。

ある日大広間の襖に描かれている火山があり、本物の火山で熱や匂いが立ち込め、噴火が間近に追っていることがわかる。

残された人間は生き残るために、その火山が書かれた襖を強行突破しようと決心する・・・。



もう最後の第四話は凄すぎて、久々に宮部さん本気出しているなと思いました。

もちろん毎回面白く本気出していらっしゃると思いますが、彼女の作品を64冊も読むとやはりその中でも迫力の濃淡はあるんです。

もうストーリーテーラーとしては日本有数の作家で間違い無いですが、何冊に一度ものすごい時があるんです。「この世の春」「荒神」「ソロモンの偽証」「火車」「模倣犯」などがそうでした。

まるで何かが乗り移っている様に。

またこの三島屋シリーズでも、おちかの時代すごい話もありました。少し似た感じで呪われた家のような話もありましたね。ただそういう屋敷ものの中でも今作は別格です。

そんな本気印の宮部さんを堪能できて嬉しかったです。

このシリーズは百物語で、百話怪談をすると本物のお化けが出るという。

まだ31話で、ここまで本気出したら残り大丈夫でしょうかw

まあ宮部さんなので、もっともっとすごい話を読ませてくれるでしょう。

そして主人公が嫁入り前の娘から男になったので、色っぽい話も、またよりレベルが上がった怖い話も。

主人公の富次郎は次男坊でまだまだですが、こんなにすごい話を聞き、度胸もついたら、きっと良い男になるでしょうね。



読書もそうでしょうか。

いろいろな良い本をたくさん読んで、いろいろと心の中でその物語を考えると、
いつかは良い人間になれるでしょうか?

良い人間かどうかはわかりませんが、今まで読んできた本で自分はできていると思います。

今日はここまで。


そうしてまた心は堂々巡りを始める。
俺が悪かったのか。
お栄とおひさは死んだのに、俺だけ一人で生きているのはどうしてか。
なんでこんな理不尽がまかり通るのか。
この世に神も仏もなく、死んだら死に損で、生きている者は生き地獄だ。
/P.221『同行二人』「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 」より









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