趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか？ vol.227 読書 澤村伊智「ぜんしゅの跫」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 澤村伊智さんの「ぜんしゅの跫」についてです。

澤村伊智さんの比嘉姉妹シリーズ第五弾、5編からなる短編集。

「ぼぎわんが、来る」怪物系の長編、「ずうのめ人形」呪いの小説、人形系の長編、「などらきの首」短編集、「ししりばの家」呪われた家系の長編、の続き。

もう完全にホラー作家の澤村伊智さんにハマっております。斬新で面白くて怖い！

などらきも短編集だったので二回目の短編。
短編のうまい作家は信頼できます。

今回も比嘉姉妹だけでなく、今まで出てきたキャラクターが再度出てきて深掘りができこのシリーズが好きな人間しては嬉しい。

特に主人公の比嘉姉妹、姉は最強霊能力者、妹は姉より少し弱い霊能力者、その間に亡くなった次女の”美晴”がいる。

彼女は「ずうのめ」で昔学校である事件で亡くなった描写があり、「などらき」ではそれより昔高校時代の話、今回は彼女が死んでからの話なので、今後もちょくちょく出てきてほしい。

あと死んだ弟二人と両親の話も出てくるのか。

もう映画でも小説でも、”前日弾”ってもう定番ですね。

そうシリーズの短編は長編ではできない話が楽しめるので良いですね。

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物語は、第一話「鏡」そろそろ子供が生まれる予定の田原秀樹、取引先の息子夫婦の結婚式に参加します。式の始まる前ロビーで不思議な鏡を見る。式が始まり夫婦が登場すると男性はハンサム女性は太っていて醜い女性、しかしその女性は会場の笑いをとって盛り上げる。そしてキャンドルサービスで田原秀樹の席へ近づいていくと・・・。

第二話「わたしの町のレイコさん」高校生の少女はオカルト雑誌の編集者である叔母にレイコさんの怪談話を聞かせる。ある男の子が変質者に襲われて、男の大事な部分を切り取られ、大人になった少年はおかしくなり親を殺して家を飛び出した。
叔母はトイレの花子さんの怪談やその類似の事件について解説を聞かせる。実はその怪談の元になった実際の事件があり、高校生の少女は恋人の男の子と調査を開始すると・・・。

第三話「鬼のうみたりければ」オカルトライターの野崎の元へ１０年以上連絡をとっていなかった元同僚の女性がやってきます。彼女の体験した奇妙な話を聞く。
彼女の旦那は会社を首になり、義母の介護も彼女が抱えて苦しい生活が続く。そんな時に幼い頃神隠し、行方不明になった旦那の兄が何十年ぶりに帰ってくる。
久しぶりで楽しい共同生活を始めるが、たびたびその兄はまた行方不明になって数週間後にまた帰ってくる。その神隠しの理由を旦那に聞くと・・・。

第四話「赤い学生服の女子」古市俊介はある事故に遭い、病院に入院していた。
その入院している同部屋の患者が亡くなった。生前赤い学生服の女の子に会いにいくと言っていた。この病院にその女の子の噂が流れてきて古市は同部屋の患者と調べにいくと一緒に目撃したその患者さんが次の日亡くなっていた。古市はその女の子に見覚えがあった。その女の子の正体は・・・。

第五話「ぜんしゅの跫」オカルトライターの野崎と霊能者の比嘉真琴の結婚式が行われる。結婚式のお祝いに普段滅多に会わない真琴の姉の琴子（日本最強の霊能者）がやってくる。
ちょっとしたきっかけで真琴を怪我させてしまい、その償いに真琴の仕事（飲み屋のバイトと霊能者としての仕事）を引き受ける。
その仕事の中に”足音の怪”という事件があった。
被害者たちは姿が見えないが足音だけを聞いている。
野崎と琴子が二人で夜事件があった付近を夜回りしているとそこで見た怪物は・・・。

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短編集で、鏡にまつわる怪談、都市伝説、神隠し、病院の怪談、怪獣もの。
ホラー小説の定番を、霊能力者比嘉姉妹とその周りのキャラクターで物語られていく。

キャラクターの深掘り、定番なのに斬新な切り口語り口、全てがテイストが違い、面白いエンターテインメントさ。

この人は飽きさせないことを熟知しています。

同じパターンがなく、けどちゃんと定番の型に入っているので安心。

そしてホラーの基本ですが、化け物や幽霊が怖いだけでなく、やはり人間が一番怖いです。

特にいや〜な男を描かせたれ天下一品。

同じ男としてドキッとする表現も多々あります。

比嘉姉妹が主人公として活躍しますが、またいろいろな女性たちが被害にあっていくのもこのシリーズの特徴です。嫌な男もいっぱいに。

そして比嘉姉妹、最強の霊能力者のお姉ちゃん琴子とお姉ちゃんより弱い霊能力者の真琴、お互いにコミュ障で、離れていたけど今回でちょっと近づくようになってファンとしては嬉しいです。ラストはちょっとコメディの様w

久々に当たりのシリーズで、新作が待ち遠しいです。

比嘉姉妹シリーズの新作「ばくうどの悪夢」が2022/11/2に発売される予定なので楽しみです。

今日はここまで。




鏡に映る妻の顔は、反転しているせいで不自然に見える。
人間の顔が左右対称でないことの証拠だ。
妻の目鼻、口、骨格。それらのわずかな歪みを、鏡は残酷に浮かび上がらせている。
P.8 「ぜんしゅの跫」より