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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.277 映画 黒沢清「勝手にしやがれ!!黄金計画」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 黒沢清の「勝手にしやがれ!!黄金計画」(1996/日)についてです。


黒沢清監督。日本の監督でも大好きな監督さんの一人。

地獄の警備員(1992年)、 CURE(1997年)、 ニンゲン合格(1999年)、 降霊1999年、関西テレビ) 大いなる幻影(1999年) カリスマ(1999年) 回路(2000年) アカルイミライ(2003年) ドッペルゲンガー(2003年)叫(2007年) 岸辺の旅(2015年) スパイの妻(2020年)

結構たくさん観ている。

今までVシネマの「勝手にしやがれ!!」シリーズは 、英雄計画(1996年)の1本しか観ていなかった。

今回テレビで放送されていたので、シリーズをあらためて見ることができました。

黒沢さんが世間に注目される「CURE」の前の作品。

低予算、ビデオ販売の中、好きなように撮っている。

確かに荒い部分はあるけど、逆に自主映画のように、映画の純粋な部分も残っていて、かつ実験精神も豊富だ。

この頃から黒沢節が出ている。長回し、唐突な暴力、移動撮影。

そんな魅力的な黒沢さんの世界が出ている「勝手にしやがれ!!」シリーズの第三弾。

いつものチンピラの二人、哀川翔さんと前田耕陽さんのおなじみのコンビ

今回ちょっと今までの1、2と違っているのは、ものすごく魅力的な女優が参戦。

藤谷美紀さん。

主人公の二人を食うほどの不思議ちゃんオーラと、ものすごく美しく可愛い全盛の藤谷さん。

藤谷さんのお陰ですごく魅力的な映画になりました。



物語は、手配師の女性から、ある老人を探してほしいと依頼されたチンピラコンビ雄次(哀川翔)と耕作(前田耕陽)は、老人ホームで難なく見つけ出したが、老人が突然逃げ出してその時に心臓麻痺で死んでしまう。

依頼主は激怒し、ギャラはなしになった。

老人ホームから遺品を引き取ってほしいと連絡があり、雄次は動かない古いオンボロのワーゲンを自分のものに。

家まで運び修理するがいっこうにエンジンがかからず苦労する。

その時に車を返してほしいと、老人の孫娘(藤谷美紀)がやってくる。

二人と意気投合するが、彼女は他人のものを売ってしまう癖があり、雄次は彼女を疎ましく思う。

数日後依頼者が孫娘を探してほしいと依頼してきた。

孫娘は老人から5000万円の隠し場所を書いた地図を預かっていて、老人が10年前の5000万円強奪事件の犯人の一人だとわかる。

そして依頼者もその犯人グループだとわかり、逆にその依頼者を嵌めようとする。

しかしその依頼者は警察に捕まり、警察、依頼者、主人公たちの三つ巴の宝探しが始まる。



もう藤谷美紀がどんどん二人や周りの人間をかき回す。

特に人のものを売り払う性格は最高。

二人が贔屓にしている喫茶店までも、お店のものを全部売られてしまうw

ここまでぶっ飛んでいるのに、藤谷美紀さんの天真爛漫な可愛さのお陰で憎めない。

ただかき回すだけでなく物語の中心にいて、5000万円の宝探しや争奪戦に物語は発展していき面白くなる。

男二人、女一人のトライアングル。これに恋まで絡んできたらもっと面白くなるが、そこはドロドロになるので、この作品は恋愛模様はない。

このあまり深い人間関係がない、まったりとしたオフビートの笑いがこの映画の魅力。

それでもラストの方が、乾いた暴力が垣間見れ、この後の黒沢さんの映画に繋がっていくと思う。

乾いた銃撃音と突然トラックに轢かれたり。

オフビートな笑いと乾いた暴力、魅力的な女優と、もう黒沢映画の基本が十分できている。このVシネマに。

あとは世の中が「CURE」で黒沢さんに気が付くまで。

そのあと次々と傑作を生み出し、世界的な映画監督になるのは必然だったのでしょう。

今日はここまで。



そうです。一連のオリジナルビデオではずいぶんと、思い切ったことをやらせてもらえました。ほとんど同じスタッフが集っていて、自分的にはつくっただけで100%満足、ちょっと不遜な言い方かもしれないけれども、結果どれだけビデオが売れるかとか商業的なことはちっとも考えてなかったですね。それぐらい一本一本、制約のない自由な現場でした
/黒沢清










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