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難攻不落なお客様を口説け!

ある日、営業部長に赤坂の寿司屋に呼び出されました。当時の私はある程度売上を保っていたこともあり、若くて生意気だが何故か上司には好かれるという特異体質の持ち主でした。また面倒なことを言われそうだが、寿司なら悪くないという図々しい考えだけを抱えて席に着きました。

現在は個人事業主に近い働き方をしているので、こういった上司とカウンターで話すというのも何だか懐かしく感じます。

その相談というのが、ある大手の保険会社を顧客にと紹介したいのだが、近隣の2店舗の営業さんは先方に断られたという。少し遠いかも知れないが「お前が行け!」という内容でした。

今まで聞いたことのない状況です。実際、嫌われるような性格の営業さんではないと思ったし、年齢も含めて私より経験が多いはずのお二人が断られたというのはどれだけ気難しいお客様なのだろうか。

とは言えお寿司をご馳走になっている以上、行かないわけにはいきません。二人断られているのであれば、私が断られたとしても問題ないでしょうし、好奇心としてその理由は知りたかった。

難攻不落


私の目の前で座られていたお客様は確かに威圧感しかない風貌でした。身長は180センチを超えているぐらいで恰幅もかなりあります。メガネの奥には鋭い目があり、完全に私は品定めされている様子でした。


皆様もこういった経験はあるかも知れません。特に初対面のお客様や面接官がこんな風貌の方なら萎縮してしまいます。こういった状況下でこちらが相手側を怖いと思ってしまったら、きっと相手もそういった雰囲気を感じ取るでしょう。こういうときこそ外見で判断せずに自然体で接することが求められるはずです。


結果的にこのお客様を含めた会社さんには私が退社するときにお疲れ様会を開いてくれたほど良くしていただけました。


では何故、先のお二人は断られて私は採用されたのでしょうか。


これは賛否両論あることかも知れませんが、15分のルールを破ったというだけだったかも知れません。

「朝の会議が9時から開始される、それまでに資料が欲しい。」

恐らく先のお二人は我々営業の始業時間が9時ということで難しいという話を正直にされたのでしょう。けっしてそれは悪いことではないと思います。

「あ、いいですよ!」

私はアッサリ答えてしまいました。

8時45分に相手先の会議室に資料を持っていくだけです。

簡単なことです。

「但し、私はやれますけど、もし何かがあって担当が変わった場合は難しいかも知れないということは認識としてお持ちください。」

実は裏話も当然ありまして、私は当時一人暮らしをしていて会社まで徒歩で通い、この道中に相手先の会社さんがあったのです。これも運といえば運が良かったのでしょう。営業職というのは残業代が出るわけでもないので、私がちょっとして工夫をすれば会社に利益をもたらすことができて、先方にも喜ばれます。作業自体はそこまで難しいものではなかったので、私は帰宅のタイミングや出社のタイミングでこちらに寄って納品をし、仕事を回すことが出来ました。一緒に机の上に会議資料を並べたり、夜遅くまで原稿を待っていたこともありました。営業部長の紹介ということもありましたが、あの威圧感しかなかったお客様が私を信用してくれているのが嬉しかったのかも知れません。

確かにちょっとしたルール違反なのかも知れませんが、

良い営業=最高のご用聞き

この法則から考えれば私のプライベートの時間など大した価値がないと考えることが出来て、退社までの2年間ほど素晴らしい関係を築けたと思っています。

相談と報告はとても重要です。但しお客様を目の前にしたとき一瞬で判断することも必要です。自分で責任が取れる内容であるか、売上に直結するものか、他の人に迷惑を掛けないものか、

「あ、いいですよ!」

この一言に全てを込めたことで私の中で大きな柱のお客様になったわけです。部長の面子も保つことが出来ましたし、ここから私の売上は更に加速していくことになります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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