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新型コロナウィルス肺炎 in トロント

新型コロナウィルス肺炎感染症問題。中国から遠く離れたここトロントでも耳目を集めています。中国系生徒が多い娘達の学校では、春節帰省から戻った子をクラスメートがちょっと敬遠していたり、その担任が空気孔が左右に突起した医療用マスクをしていたり、中国へ帰省したものの出国規制でカナダに戻ってこられなくなったままの子がいたりと、子供達にとっても身近な出来事です。

そしてトロントのヨーク地域では現在、「中国帰りの生徒は登校禁止にしてくれ」署名活動がオンライン上で行われているようです。イタリアの音楽院におけるアジア人生徒達への差別的対応、ニューヨークの地下鉄駅構内で男性に殴られるマスク姿のアジア系女性の映像などと並び、この件は日本でも報道されていました。

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この署名活動、Li(李)さんという、苗字から察するに中国系と思われる方によって立ち上げられ、現在1万人ほどが署名しているようです。大まかに言うと主張は以下の4点。

1. 教育委員会は生徒の家族から最近の中国渡航歴の聞き出し(武漢に限定せず中国であれば都市不問)をするとともに、対象者の追跡調査を続けるべきである。また、クラスにおいて誰が最近中国へ帰省したのか、クラスメートには知る権利があり、その上で登校するか否かを各家庭で判断させるべき

2. 誰が、誰の家族が最近中国へ渡航したか、教育委員会は全保護者に対して情報開示し、最低でも17日間以上自主隔離することを当該生徒に要求すべきである。

3. 全生徒はレスピレーター(マスク)を含む安全装具を身につけることを許可されるべきである。

4. 学校及び担任教員達は校内におけるコロナウィルスの新たな蔓延を阻止すべく、安全衛生ガイドラインを厳守するよう生徒達に指導すべきである。

教育委員会側は、オンタリオ州におけるコロナウィルス情報は日々特設サイト上に公開されており、このサイトが示す現在の状況下においてこの要望は受け入れるに値しない、人種差別やヘイト誘発が懸念されるものだとしています。因みにオンタリオ州(広さは日本国土の3倍)の感染者は現在3人と報告されています。

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なぜこの署名活動を中国系と思われる方が発起したのか、帰省していないご子息が謂れ無い華人差別を受けることをヘッジしたかったのか、もし同胞内でセーフとアウトを区分けしたいという動機付けだったとしたら、ちょっと残念な気もします。
中国本土滞在歴がなくても感染しておられる方が増えている今、あいにく徹底的な線引きは難しいように思います。その状況下にあってこうした部分的な線引きを署名活動で訴えることが、この発起人を含むアジア人全体への風当たりを強めたり差別意識を正当化する呼び水のようになってしまったら、皮肉としか言えません。

子供の健康を守りたいという親心は重々理解できるものの、現実的には最低でも1週間以上は学校を休まないとオンタリオ州から中国へは帰省できない上、中国系の方々は親族御一行様で移動する傾向にある様子、子供を残して親だけ帰省というのはレアだと思われます。
春節前後は通常通り授業のあるカナダにおいて、その時期に週単位で欠席していた生徒が誰なのか、家では誰が何語を話していて、どこの国の出身なのか、クラスメート同士は当然のように把握しています。その状況にあって全校保護者向けに晒し者のように生徒名を開示する公開処刑手法が最も得策なのか、疑問に感じます。

そもそも、寒さ厳しい冬場にはメキシコや中米などに学校を休んでバカンスへ行ったり、学校の暦度外視で航空券が底値を突いた時期に母国へ帰省したりするご家庭も多いお国柄。事前に学校へ理由を伝えておけば、何週間欠席したところでお咎めを受けることも、それが進級や進学に影響することも、義務教育下の公立学校ではありません。
そんな緩い学校環境なので、すでに海外渡航規制がかかっている中国本土からの帰省帰り家庭ご子息パージを学校主導でピンポイントに行うよう働きかけるよりも、自分や子供の身を衛生的だと納得できる場所に自己責任で置く判断を下す方が、手取り早いようにも思えます。国単位で水際対策を行い、逐一国内感染の最新状況が更新されている中、その国内のどこをもって安全な場所と見なすかは、各人の許容範囲次第のように思います。

加えて、マスク着用を禁止している学校などそもそもありません。安全装具が付けたいのなら、署名で訴えるまでもなくご自由に着用してはいかがでしょうか。それによって地下鉄構内で見知らぬ人に殴られるかもしれないリスクは、教育委員会がマスク着用を許可していようがいまいが、あまり変わらないように思います。

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衛生面に関しては、休み時間ずっとトイレの床に座り込んでスマホを見ている、ホコリやゴミの舞う廊下にお弁当を直接置いて食べる、土足の足を乗せたデスクの上に突っ伏して寝る、凍死しているネズミをボール代わりに蹴り合う、手洗いはもとより、毎日の入浴習慣もない、そんな感覚です。日本育ちの娘達とは免疫力の桁が違うのだろうという整理でいますが、今回の出来事をきっかけに、生徒達に安全衛生ガイドラインを周知させるのは悪くないかもしれません。

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海の向こうではアジア人排斥運動のような流れになり始めているのではないかと、北国で生きる私の身を安じて連絡を下さる日本の友達、ありがとうございます。その温かさに触れ、ゴミ捨てに出ただけで凍った鼻毛も一気に解凍です。おらが村トロントには幸い、そのような不穏な動きはまだ起きていません。

先週は節分用の豆を買おうと、普段より人通りの少ない中華街へ向かったりもしましたが、生卵を投げつけられることも、知らない人に飛び蹴りされることもなく、美味しく朝粥を食べて帰宅しました。

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マスク着用は一般的でないカナダですが、その代わり目出し帽やフェイスマスクは一般的。外出時は寒くて目から下をあまり露出しないので、マスク着用によって悪目立ちする隙を与えていません。ウィルスも生きられないのではないかと思う寒さですが、風邪をひかないよう、凍った路面で転ばないよう、足元に気をつけ手洗いをする、四肢に配慮したごく普通の越冬生活を送っています。

実はオンタリオ州の公立小中学校、中国帰省していようがしてなかろうが、今月は通学できない日が続いています。それに関しては次回。

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