見出し画像

オンライン授業 トロント公立学校の場合

3月中旬に前期の学校が終わって以降、我が家ではホームスクーリング体制へ切り替える心の準備を始めまていました。春休み明けから学校が再開するイメージがつかなかった上、日本で5年間ホームスクーリング生活を経験しているので、それは私達にとって特段真新しいライフスタイルではないからです。とは言え、外出ができないという特殊な環境下でのホームスクーリング経験はなく、自由に外出できた時のそれとは大幅に勝手が違うことに気づくのにそう時間はかかりませんでした。

学校、地域、国によって現在の学校教育の状況は千差万別だと思いますので、まずはトロント市内の公立小中学校に在籍している娘達の状況を簡単にお伝えします。

・オンライン学習環境の現状調査
・オンライン授業開始までの繋ぎ期間
・担任ごとにまちまちな動き 8年E組の場合
・担任ごとにまちまちな動き 5/6年合同学級の場合
・コロナ休校期間の成績評価

オンライン学習環境の現状調査

3月29日、教育委員会から「Device and Internet Availability Form(ディバイスおよびインターネットの使用可能状況調査表)」が全保護者宛にE-mailで一斉送信されました。その調査結果を踏まえ、無料ワイヤレスプランのiPadを21,000人の生徒へ6月まで配布することが4月17日に決定しました。実際のiPad配布が終了すれば、これで理論上公立学校へ通うオンタリオ州在住の全生徒がオンライン環境で学習する足並みが揃います。

ではまだ足並みの揃っていないこの数週間は何をして過ごしているのか。今のところ完全に担任の裁量、善意、使命感次第となっています。学校側からはとりあえず教育系ビデオコンテンツや無料の学習ツールのリンクが大量に送られてきましたが、その中から我が子の学年、学びたい(学ばせたい)科目、更には特定の単元を探し当てるなど、受け取ったこちらにとっては途方もない作業。担任からの具体的なアドバイスもありません。

オンライン授業開始までの繋ぎ期間

そもそも北米の学校には全国や全州、全校統一の指導要綱は存在せず、先生の個人裁量でカリキュラムが組まれているので、娘達の学校の場合、生徒の手元には藁半紙のようなプリントばかり。彼女達は教科書も持っていません。春休み明けに登校するだろうとすべてロッカーに入れたままの生徒は、文字通り自宅には勉強道具が何もない状態。
前期は教職員ストライキにより成績表が頂けなかったので、保護者によっては子供が前期に学校で何を学習したのかも知りません。各科目の先生へ個人的に質問にでも行っていない限り、年間の学習計画もほとんどの保護者は把握しておらず、よって後期のこの時期に何を学べせればいいのかなど、知る由もありません。
そして行政側としも、指導内容が完全な担任裁量であるため、「〇年生の〇〇科目の後期〇週目はこのオンライン教材で補いましょう」という一斉指導やアドバイスもできないわけです。

これら頂戴したリンクは、明らかにコロナの深刻化に伴い急ごしらえで見繕ったもの。そのお気持ちはありがたいですが、どれも以前から巷にあった無料コンテンツ、百歩譲っても授業の補足、授業の代替となるように作られたものではありません。娘達に多少関係ありそうなリソースは覗いてみましたが、あいにくあまり利用価値の高いものではありませんでした。

担任ごとにまちまちな動き 8年E組の場合

こうした状況下、いち早く動き出したのは長女の担任マダムP。フランス語と社会科を教える、イタリア系の肝っ玉母さん先生です。中学生は普段から宿題提出などをオンライン上で行うことも多いため、保護者を挟まなくても担任と生徒達が直接コンタクトを取り合う、使い慣れたツールGoogle Classroomがあります。そこでミーティングのスケジュールを告知しGoogle Hangoutsで再会、クラス全員の安否を確認しておられました。

「二十四の瞳」ならぬ、「二十七の顔」(13−14歳児)がオンライン上で一堂に会すと、そこは完全なカオス。数秒に一人は「マダム、聞こえません」「マダム、スクリーンシェアの画面が見えません」とモグラ叩き状態。まともな会話にならなかったようです。
そこでマダムPは生徒達を数人のグループに分け、時間帯を割り振って全生徒とコミュニケーションを取るスタイルへ変更。何かを教えるというよりも、心身の健康維持を目的にフランス語で座談しているといった感じです。

宿題はある程度出されているようで、毎日フランス語で日記をつけると共に、フランス語のニュース記事を音読した録音音声や、それについての自分の見解をまとめたレポートなど、頻繁にオンライン提出しています。

数学科の先生もGoogle Classroomを活用し、「ピタゴラスの定理」を説明するプリントを共有したり練習問題を出したりと、積極的に動いておられます。100人以上の生徒を担当しておられるのに、提出から24時間以内には採点をしコメントまで付けて返してくれるスピード感。果たして何人の生徒が実際に課題提出をしているのか、怪しくなるところです。方や国語(英語)と理科の先生は休校以来完全に音信不通。生徒達への働きかけは今のところ一切ありません。

担任ごとにまちまちな動き 5/6年合同学級の場合

そして次女の担任からは先々週、保護者向けに休校以来初のE-mailが届きました。テクノロジーには疎い還暦間近の独身オネエ男性。子供の勉強の進捗云々よりもむしろ、お一人でおられる初老の先生の安否が気になり始めていたところだったので一安心です。
そして「家にあるまだ読んだことのない本を選び、まずは表紙だけを眺め、その印象を記しましょう。」という、ゆるくトリッキーな振りが来ました。次女には同性年上の姉がいるため、読んだことのない児童書が自宅にたくさんあります。ですが蔵書の少ないご家庭、あってもすでに一通り読んだことがある本のみという場合は、いきなりの難題です。図書館は1ヶ月前から閉館、10-11歳学級なので親の本に手を出せる年齢でもありません。

そして先週、「期待を大きく上回る提出物を出してくれた生徒もおれば、Google Classroomへまだ1回もログインすらしていない生徒も多くいます。」と連絡。そして「各ご家庭のやり方で勉強を進めておられると思いますので、私からの課題は必須ではありませんけど。」と添えられていました。

姉の部屋からジャケ買い的にチョイスしてしまった本が異様に面白くないとうな垂れていた次女、「先生も提出物をチェックするのが面倒臭いはず。私もこのつまらない本を読むのが面倒臭い。もう本は変えられないようなので、この課題はお互いのためにやらない。」と合理的判断を下していました。代わりに日本語の本を一緒に読もうと思います。

コロナ休校期間の成績評価

教育委員会からの通達によると「オンライン環境の家庭差等を鑑み、公平を期すため今年度の成績表は3月13日までのパフォーマンスで評価します。」とのこと。学年終了の6月中旬まで、オンラインで課題提出やクラスメートが顔を合わす機会などがあると思われますが、それらは一切成績には影響しないことが決定されました。
つまり、これから学校側によって提供されるものに強制力はなく、実質上の任意参加、任意提出です。自分にとって勉強になる課題であればしっかりやる、そうでないものはスルーする。ロックダウン下における娘達の学校との新しい付き合い方です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?