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オンタリオ州公立学校、ストライキ始めました。 その1


今月3週間(15日)だけでも通算7日間休校となったトロント市の公立小中学校用務員さん達によるストライキにより以前校内が一時的に荒れたことは記しましたが、ダグ・フォード州首相(オンタリオ進歩保守党 党首、カナダ版ドナルド・トランプとも言われている)政権下にあるオンタリオ州と教員組合の契約交渉は8月から平行線状態。11月から順法闘争(work-to-rule)、オンタリオ州全土の学校でストライキ(walkouts)も頻発しています。

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ストライキで通学日数が少ない

ストライキが長期化すると、生徒の学業に著しく影響が出るという理由でストを違憲とし、州政府は授業再開を組合に命じます。よって効果的、戦略的にストライキを行うことで授業再開命令を回避するため、組合側はローテーティング・ストライキ(rotating strike)という手法をとることが近年増えています。一斉に州内すべての学校でストを敢行するのではなく、学区ごと、市ごとでストライキの日にちをずらし、ローテーションしていく手法です。今月は2月3日から14日の期間でローテーションが組まれました。
学校行って、行って、休んで、行って、休んで、週末来て、また休んで、またまた休んで、久しぶりに行ってetc.と、気づけば4連休になっていたり。不規則な通学スケジュールが続きました。

こんなストのヘビー・ローテーションに加え、83,000校の小中学校の先生が属するETFO (オンタリオ初等教員連合)、OSSTF(オンタリオ高等学校教員連合: The Ontario Secondary School Teachers’ Federation)、AEFO (フランス語系オンタリオ教員連合: the Association des enseignantes et des enseignants franco-ontariens)、OECTA (オンタリオ英語系カトリック教員連合: The Ontario English Catholic Teachers’ Association)の複数の教員組合が合同で、2月21日には一斉ストライキも行うそう。また休校です。

授業以外の学校活動が麻痺

そして今年に入って続いているのが work-to-rule順法闘争です。これは最小限必要な労働だけをすることによりスローダウンを引き起こす抗議行動のこと。順法闘争によって、例えば授業時間外の課外活動(お昼休みや放課後のクラブ活動)は中止され、スポーツ競技会などの大会参加も取りやめ、遠足、社会科見学、タレントショーなどの行事開催も中止となります。さらに、成績表にコメントを書かない生徒達の州統一テスト受験機会を見送るなど、子供達の学びの進捗や成果を知ることもできない状況になります。

例に漏れず娘達の学校でもあらゆる課外活動がなくなり、サイエンスセンターへの遠足は中止、学校生活最後の卒業キャンプ旅行も、みんなでガウンを着て角帽を投げる北米の典型的な卒業式も、このままでは中止だろうと言われています。ただ淡々と6コマの授業を受けるためだけに学校へ行き、子供達は下校時刻と同時に速攻校舎から退去するようにと追い立てられ帰宅します。
ダンボール・ボート大会(水上版「鳥人間コンテスト」のようなもの)の学校代表に選ばれ張り切ってボート設計図を描いていた矢先に大会中止は言い渡され、水泳部は発足して1週間で廃部、確実にメダルが狙えるイベントだったトロント公立学校対抗競泳大会も開催未遂に。前期の終盤に入りやっと諸々の部活動が活発になり出した矢先にすべての課外活動は消滅、ストの合間にたまに行く学校は、味気ない場所になっています。

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担任と面談できない、成績表ももらえない

高校進学関係の相談で担任と連絡を取ろうにも、授業時間以外の労働が組合によって禁止されているため、生徒登校までの朝の10分間もしくは下校時刻後の10分間しか父兄との面会はできない父兄からのメールへの返信も規定就労時間内の隙間時間でしかできない状態。人情的な先生は、「夜に電話をくれれば話ができます」と、オフレコでスト破りをして下さるケースも稀にありますが、進学の大事な時期なのに保護者も先生との接触は非常に限られた時間内でしか図れません

そして今回、娘達の学区では前期の成績表がなくなりました。。。先生方は新学期の9月以来、小テストや提出物などに対しすべて評価点は付けてきておられるものの、最終的な成績としてそれらを点数化し、コメントを書き、生徒管理データベースに載せる作業、校長がそれに目を通してサインし、プリント出力、封筒に入れて各生徒に配布する、それらすべての労働工数が放棄の対象。結局成績表が各家庭に届くことはありませんでした。休校ばかりだわ成績表も来ないわ、もはやいつまでが前期だったのか、もう後期が始まっているのか、メリハリのない学校生活で暦がよく分からなくなっています。

ただ、レベル2以下(落第ギリギリ)の成績を取った生徒に対しては、担任から直々に個別面談の招待状が届くとのこと。「教員が面談に割ける時間が限られているので、学業に問題のない生徒のご家庭は担任との面談を極力遠慮し、面談が必要なご家庭を優先して欲しい」というお願い一斉メールが校長から保護者宛に発信されました。
勉強が苦手な生徒達は、「成績表がなくなってラッキー、順法闘争いいわぁ。」と大喜びだった様子。ですが喜びも束の間、そうした生徒の家庭に限って、先生からの招待状は届いてしまうもの。
「僕の母さんは予定があってその日学校へ行かれません」と、嘘か本当か必死で面談を阻止しようとする男子がクラスにいたそうですが、先生も食い下がった様子。結局面談日には彼の自宅と学校を繋ぎ、スカイプ面談をする段取りになってしまったそう。面談を前日に控え「母さんと先生のスカイプが繋がらないよう、明日は家中のWi-Fiケーブルを抜くんだ!」と、土壇場まで面談阻止に向けて尽力していたそうです。

ここまで学校生活に不自由が生じていることは、子供達と日々接している先生方が一番よく分かっておられるはず。子供達にこうした負荷をかけてまで教員組合は州政府に何を求めているのか、次に記します。

→オンタリオ州公立学校、ストライキ始めました その2

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